発がん物質には、胸膜中皮腫の原因となるアスベストや、皮膚がんを起こすヒ素、白血病になるベンゼンなどのほかに、現在では使用が禁止されている人工甘味料のチクロやサッカリンなどがあります。食品添加物、医薬品、農薬、工業化学物質を新たに導入する場合は、発がん性を調べることが義務付けられ、短期の発がん物質スクリーニング法が必要になりました。研究が進むと、発がん物質と変異原物質には共通項が多く、変異原物質が見つかれば、発がん物質の予知になるのではないか、と考えられました。変異原性を調べる方法のひとつである、“小核試験”は、細胞中に通常の核以外の小さな核ができていることで、染色体異常を検出する、という試験に用いられます。電磁場による発がんについては、高圧送電下住民に、小児白血病が多いこと、電磁場を扱う作業者に、脳腫瘍や白血病が多いという報告から、電磁場ががんを起こすのではないかと言われてきました。日常生活にあるMRI、リニアモーターカー、パソコン、携帯電話、電気製品などといった電磁場と、化学物質の複合曝露についての小核試験では、強い磁場を当てるとともに化学物質(変異原物質)を投与すると、電磁場単独曝露では変異原性の変化は見られず、化学物質との複合曝露によって増加傾向や抑制作用が観察されました。これらのメカニズムはよくわかっていないものもあり、今後も研究が求められます。

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宮越 雄一教授健康スポーツ科学部 栄養科学科

  • 専門:変異原性、産業医学、衛生学、公衆衛生学
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