国際社会には、国会や裁判所といった、国を統治するための強制力が与えられた機関がなく、国連の安全保障理事会の決定や権限についても、履行は国家の自由であり、採択される決議も勧告的な効力しかありません。現在、国際社会では、戦争を含めた武力行使は禁止されていて、国家は平和的紛争解決の義務がありますが、交渉や仲介だけでは解決しない場合があります。そこで、裁判によって国家間紛争を解決することを任務として、第二次世界大戦後に「国際司法裁判所」が設立されました。ただし、すべての国際紛争の裁判が可能なわけではありません。裁くことができるのは対国家のみで、個人や組織を裁くことはできません。さらには当事国の同意が必要なため、なかなか解決には至らないのです。国際司法裁判は一審制で上訴がなく、判例数も少ないため、裁判付託を各国が躊躇する理由にもなっています。また、せっかく出された判決は、当事国のみ拘束力があり、強制執行することもできません。このように、国際司法裁判所には制度的な限界があるのです。とはいえ、長年くすぶっていた領土問題が解決するなど、付託件数は少しずつ増加してきています。これは、国際紛争の平和的解決に貢献していると言えるでしょう。国際法は、長い間、人々が数々の戦争の反省を受けて作り上げてきたものです。国際社会で起きているさまざまな紛争の解決における、裁判所のあり方を探求していく視点を持ち、機能と限界、特性をしっかりと理解しながらこれからも学んでいきましょう。

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石塚 智佐准教授法学部 企業法学科

  • 専門:国際法
  • 掲載内容は、取材当時のものです