私たちは誰しもが、豊かでありたいと願っていますが、そもそも「豊かさ」とは何でしょうか。戦後、「先進国」「途上国」といった認識が生まれたころ、経済学の視点で貧困のメカニズムが解明され、低収入が貯蓄減、生産減を引き起こし、また低収入につながるといった貧困の悪循環などが説かれました。そこに、社会学の視点から、原因は世界システムにあるとする理論が出てきました。途上国から輸入した原材料を先進国が加工し、付加価値を付けて高く売るため、貧しい国はより貧しく、豊かな国はより豊かになるというのです。しかし、結局ものさしは経済であることには変わりません。では、経済で「豊かさ」を測ることができるのでしょうか。例えば、経済的な豊かさのための取り組みが環境汚染を引き起こしています。また、自殺率やうつ病の数は先進国の方が多いのが現実です。豊かさのための開発は、誰のため、何のためのものなのでしょう。本来の目的は、個々の選択、決定、実現といった、人間の本質的自由の拡大にあるべきなのではないでしょうか。これからの時代における開発とは、次の世代にもつなげていく、“持続可能な開発”であることが必要なのです。かつて経済成長という枠の中で考えられてきた時代から、開発の意味がどれだけ拡大し、豊かさの意味がどれだけ多様化しているのかを感じてほしいと思います。みなさんにとって「豊かさ」とは何かを、改めて考えてみましょう。

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米原 あき准教授社会学部 社会学科

  • 専門:比較教育政策学、国際協力論、人間開発論、政策評価
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