戦後間もなく制定された現行の刑事訴訟法は、当初予想されていなかった、近年の科学的手法を用いた犯罪捜査に、どのように対応していけばよいのでしょうか。
犯罪捜査においては、刑事手続きが法定されていて、その手続きが適正でなければならないとされています。また、この適正手続を担保するために「強制処分法定主義」や「令状主義」といった、必ず守らなければならない原則があります。捜査機関は、必要な取り調べ(捜査活動全般)をすることができますが、個人の意思に反し、個人の重要な利益(身体の自由やプライバシーなど)を侵害する「強制処分」については、刑事訴訟法に根拠がなければできない、とし、強制処分を行うには、裁判官の発する令状がなければならないとされています。では、近年用いられるようになってきた、写真撮影やビデオ撮影、開封せずに中身を確認できるエックス線検査などの科学的手法を用いた捜査活動についてはどうでしょうか。例えばGPSを使った捜査について、最高裁判所が、プライバシーを侵害しているという判断を下したケースがありました。当人の承諾や令状のないGPS捜査について、強制処分にあたると判断したのです。そして、GPS捜査が今後も広く用いられ得る有力な捜査手法であるならば、その特質に着目して憲法、刑事訴訟法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい、としました。このように、科学的手法を用いた犯罪捜査を行うには、それを認めた法律の根拠規定を設けるべきなのです。こうして我々の人権は不当に侵害されず、守られるのです。

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松田 正照准教授法学部 法律学科

  • 専門:刑事訴訟法
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