「免疫」とは、私たちが健康でいられるために必要な仕組みです。免疫は、自己と非自己(敵)を識別し、非自己を排除する生体維持機構で、ウイルス、病原細菌、花粉といった自分以外のものが体に入ったとき、免疫反応を起こします。免疫の力が生活習慣やストレス、高齢化などで弱くなると、風邪にかかりやすくなったり、皮膚炎、口内炎が治りにくくなったりします。ところが、がんは自己の細胞でありながら、免疫反応を起こします。例えば大腸がん細胞に、血液から免疫細胞の一種であるリンパ球を採取し活性化させて加えると、リンパ球ががん細胞を攻撃して死滅させてしまいます。リンパ球はがん細胞に接着して、攻撃対象かどうかを認識し、敵とみなしたら攻撃をはじめ、死滅させるのです。
最近では、免疫細胞から産生される抗体の作用を利用した、がんと戦うバイオ医薬品である「抗体医薬品」の開発も進んでいます。中でも最新の免疫チェックポイント阻害剤は、がんが表面にリンパ球の活動を停止させる物質を出して自分を守ろうとするため、その物質に結合し、リンパ球に攻撃対象であることを認識させる、という抗体医薬品です。肺がんや皮膚がんなど、いままで治らなかったがんの薬に応用されています。5〜10年後にはもっと新しい薬理作用を示すバイオ医薬品が開発されていくでしょう。このように、免疫学への理解を深め、健康維持、病気の予防・診断・治療に役立てるということを考えていくことが重要なのです。

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加藤 和則教授理工学部 生体医工学科 分子細胞メディカルサイエンス研究室

  • 専門:免疫学、腫瘍学、細胞工学、検査医工学、創薬科学
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