誰もが、本を読んで心を揺さぶられた経験があるだろう。文学作品はもちろん、アニメもマンガも大好きと語る髙橋直美教授は、さまざまな作品に触れ、感動することが「人間力」を高めることにつながると説く。さらに、その作品が描かれた時代や背景を知ることで、作家の生きざまを知り、自身の生き方をも考えるきっかけを生み出すことができるのだ。

文学とは「生き方を考える」こと

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みなさんは今年に入って、何冊の本を読みましたか? 絵本でも、ライトノベルでも、マンガでも構いません。もし、まだ1冊も手に取っていないとしたら、それはとてももったいないことです。

私の専門は日本近代文学。特に宮沢賢治です。彼がどのような時代に生き、何を求め、何を考えて数々の作品を生み出してきたのかを研究しています。

文学とは、書かれたものの背景にあるさまざまな要素をひも解き、「人はいかに生きるべきか」を、作品と作家の人生を通して考える学問だと言えるでしょう。他者の生きざまを知ることで自分自身を見つめ、生き方の幅を広げたり深めたりすることができると私は考えています。

今、社会ではさかんに「人間力」が問われていますが、「人間力」は人間が生きる上で必要不可欠な要素です。読書はみなさんの「社会人としての基礎力」「自分が生きる力や自分も人も活かす力」を高める糧となってくれることでしょう。

今日的な難題に直面する中で

生活支援学科は、支援を必要とする人々をサポートするプロフェッショナルを育てる学科です。生活支援学専攻は社会福祉分野、子ども支援学専攻は保育を中心とした福祉に関する分野の高度な専門知識や最新技術を学び、現場での実践力を身につけていきます。

私は子ども支援学専攻の学生を受け持っていますが、みんな子どもが大好きで、将来は子どもに関係する職業に就きたいと明確な目標や目的意識を持っている学生が多いように思います。

しかし保育の現場は、子どもが好きという気持ちだけで乗り越えられるものではありません。保育の現場には、さまざまな課題が横たわっています。日々流れてくる児童虐待や育児放棄などの悲しいニュース。また、友だちと自由かつ安全に遊べる場所も少なくなり、携帯ゲームで一人遊びをすることが当たり前であるような子どもを取り巻く環境。そうした今日的な難題に直面する中で、自分自身の心が疲れてしまうこともあるでしょう。

そんな時に心のよりどころとなるのは、「自分自身の豊かさ」です。それはもちろん、金銭的な豊かさではありません。「心」の豊かさ=生きる力・未来を拓く力です。

子どもたちに伝えたい文学の功績

心の豊かさは、さまざまな経験をもとに積み重ねられていくものですが、文学作品もまた、みなさん自身の豊かさを支える一部となってくれます。小説の一節のみならず、暗記した短歌や俳句、好きなキャラクターのあのセリフ、幼いころに読んでもらった絵本の挿し絵などを思い浮かべることができるあなたは、今、とても豊かな心を育んでいるのです。

長い人生において、つまずいたり、立ち止まったりしたときに、新たな道を示し、勇気づけてくれる。それが文学の功績です。子どもたちにも、そんな文学の素晴らしさを伝えていってほしいと思います。

文学作品とは時代も国境も人種も越えて感動を与えるものです。一度読んだ作品を何年、何十年と時間をおいて、あらためて読み返してみてください。その時にはきっと、自分の人生をもとに違った読み方ができるはずです。なぜならば、文学の楽しさはその時その時の状況により心に触れるものが変わることだからです。子どもでも、大人でも、いつでもどんな時にでも新しい発見と学びと喜びがある。それが文学の魅力なのです。

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髙橋直美教授ライフデザイン学部 生活支援学科 子ども支援学専攻

  • 専門:日本近代文学

  • 掲載内容は、取材当時のものです