グローバル化の著しいビジネスの世界。ほんの数年後には会計のルールもがらりと変わっているだろう。会計学の研究者として、日本をあげた「会計の国際化」の議論にも携わっている増子敦仁准教授。数字という動かしようのないものを相手に、どんなものでも面白がる人間味は、学科生たちのモチベーションの源ともなっている。

人間臭い数字、それが会計です

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みなさんもパソコンの「会計ソフト」のCMをご覧になったことがあるでしょう。企業の会計には国ごとに定められたルールがあります。だったら、パソコンを使えば誰にでもできる?それがなかなか、そう簡単な話でもないのです。私も20年近く会計に携わっていますが、突き詰めれば突き詰めるほど「会計は人間臭いものだ」と感じています。

組織のお金の出入りを計算して、記録、管理するのが「会計」。これを記した書類を「決算書」と言います。基本的には、この決算書に正しい数字を書けば問題ありません。ところがお金というものにはどうしても、人間の思惑がからんできます。

もちろん故意に数字を操作するのは犯罪です。ニュースでもときどき「粉飾決算」などが騒がれますね。しかし、たとえ正しく書いたとしても、見る角度によって解釈がまるで変わってしまうこともあるのが、この決算書のやっかいなところなのです。

企業の決算書は一般に公開する義務がありますので、新聞やネットで誰でも見ることができます。会計の知識があれば、まずその会社の経営がうまくいっているのかどうかがわかる。さらに深く読み解けるようになると、経営者の思惑や人物像まで浮き彫りになって、なかなか興味深いものなのです。

あらゆる組織は会計で回っている

一般企業はもちろん、病院や学校などの法人、NPOなどの団体、もちろん国も、あらゆる組織は会計がきちんとしていなければ運営はできません。私は学科の専門科目だけでなく、いわゆる一般教養科目でも会計の基礎の授業を受け持っていますが、社会に出るすべての人にとって会計の知識は持っていて損はありません。もちろん専門的な知識があれば、活躍できる場はぐんと広がりますね。

「会計には国ごとに定められたルールがある」と言いましたが、今や多くの企業が海外と取引をしています。そのため、「会計も国際基準のルールに合わせるべきでは?」というトピックスが持ち上がっています。

ところが国や企業によって慣習や経営の仕方も違いますから、最終的な結論はまだ出ていません。私も会計の研究者として、微力ながらこの議論のお役に立てればと思っています。

とにかく会計の世界も大きく変わるでしょう。未来を生きるみなさんともぜひ、「これからの会計のあり方」について一緒に考えてもらいたいですね。

ゼミで培う社会人の必携スキル

すべての学生ではありませんが、学科には「公認会計士」や「税理士」といった国家資格をめざしている人もいます。社会に出てからチャレンジする人も多く、合格率7%の難関ですが、現役合格者も出ていますよ。

また、ほとんどの学生は簿記検定をめざしています。「全国大学対抗簿記大会」にも、ゼミナールをあげて出場しています。個人戦では優勝者もたくさん出していて、毎年いいところまで行くのですが、まだ団体戦では全国優勝には行き着いていません。次こそは東洋大学の駅伝部や水泳部のように「全国で名を馳せるぞ!」とゼミ生一同、燃えているところです。

ちなみに、会計ファイナンス学科でゼミナールは必修ではありません。難関資格に挑むなら、図書館で勉強していたほうが効率は良いかもしれません。

しかし、ゼミという少人数の場でこそ培われるチームワークやコミュニケーションスキルは、ときに社会では知識を上回る力を発揮します。社会で高みをめざす人にこそ、参加することをおすすめしたいですね。

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増子敦仁准教授経営学部 会計ファイナンス学科

  • 専門:会計学(財務会計)

  • 掲載内容は、取材当時のものです