「視察したロンドンにおける社会教育の場は、どんな人でも入りやすく使いやすいように、さまざまな工夫が凝らされていた」と語るイブニングコース教育学科の関直規准教授。日本では身体的なバリアフリー化は達成されていても、心のバリアフリー化には遠い施設が、ロンドンと比較するとまだまだ多い。高齢化社会を迎え、生涯学習に注目が集まる中、社会教育学がめざすものとは何だろうか。

社会教育にまつわる課題を解決する

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教育は、その行われる場所に応じて「家庭教育」「学校教育」「社会教育」の3つに分けて考えることができます。「社会教育学」とは、家庭と学校以外で広く行われる教育について、どんな支援が必要か、どんな環境を整備すればよいかなどを考える学問です。地域の子ども会を例に見てみましょう。

子どもの教育環境が学校と家庭だけでは、いつも決まった顔ぶれになりがちです。しかし子ども会に参加すれば、地域の大人たちや、同学年以外の子どもたちとも積極的に触れ合えます。いろいろな人と出会い、さまざまな価値観に触れることで、自然とコミュニケーション能力が備わっていきます。

しかし現在、子ども会を支えるボランティアスタッフには高齢化の波が押し寄せ、さらに慢性的な人手不足に悩まされています。スタッフ1人に掛かる負担が増え、子どもたちに対する満足な支援ができていないのです。

どうすれば地域の人々が興味を持ち、子どもたちにとって魅力のある子ども会になるのか。そうした課題を解決していくのが「社会教育学」の役割です。

理論を携え、現場を見て、考える

高齢化社会と声高に言われるまでもなく、ちょっと外を歩けば、お年寄りが多いことに気づくはずです。しかし彼らはとてもパワフルで、いきいきと毎日を過ごしています。

地域の公民館やカルチャーセンターに出掛けてみてください。年齢に関係なく、彼らが自分のやりたいことを追求している姿に出会えます。社会教育は、間違いなくこれから注目される分野であると言えます。

私は学生に、そうした現場をできるだけ見るようにと促しています。授業で理論を身につけ、現場で利用者や支援者の声を聞きながら実態を把握し、見つけた課題を教室に持ち帰って議論し、解決の道を探る。それを現場に提案し……という循環によって、学びが深まっていきます。

昼間は働いて夜間に学ぶイブニングコースの学生たちは、月曜から土曜まで毎日2時限ずつ授業が入っており、とても忙しい毎日を送っています。その上で現場を見ることは大変なことですが、学生たちは何とか時間をやりくりして現場とかかわっています。私たち教員も、精一杯フォローできるように体制を整えています。

イブニングコースならではの視点

授業の中では現場報告会を設定し、ディスカッションを取り入れるようにしていますが、昼間の学生たちは理論上の問題点を整理することが多いのに比べて、夜間の学生たちは「自分たちのこれからはどうなるのか」「今までこうだったのはなぜだろう」など、より生活に近いレベルでの議論が進みます。学校と家庭だけでなく、すでに社会の中で学んでいる彼らは、ものの見方がよりリアルなんですね。

昔は社会人が多かったものの、今は高校から進路の1つとしてイブニングコースを選ぶ学生が多く、カリキュラムも、教員も、教育の質も同等で、自分を磨くという意味では昼も夜も変わりません。

志を持って、強い気持ちを抱いて、しっかりと4年間学んでほしいと思います。努力する人の未来は明るいのですから。

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関直規教授イブニングコース 文学部 教育学科

  • 専門:社会教育学、地域文化論

  • 掲載内容は、取材当時のものです