超高層建築物の発祥地は、アメリカです。なかでもニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングは、地上からアンテナ頂部まで443m、地上から屋上まで381mあり、約40年間、世界一の高さを誇ってきました。近年、海外では400m以上の超高層建築物の高さや規模が続々と更新されています。特に、中国や中東ではその更新速度は速く、中国上海市には上海中心(632m)、上海ワールド・フィナンシャル・センター(492m)、ジンマオタワー(420m )が建っています。
超高層建築物の構造形式を選択する際に重要なのは、使用目的、安全性、建築材料の生産能力、建設スキルと人件費などの要因を考慮することや構造物全体の剛性を高めることです。現在、400m以上の超高層建築物の構造形式は、メガストラクチャーと呼ばれるものが主流になっています。その構造部材の一つであるメガ柱の役割は、軸力を負担することです。軸力には、鉛直荷重によるものと、地震荷重や風荷重などの転倒モーメントにより生じた付加軸力があります。特に最下階の柱に巨大な軸力が作用する場合があるため、この巨大な軸力の処理が設計・施工上の重要な課題となります。解決策としては、材料の強度を上げるほかに、大断面の柱(メガ柱)を建物周辺に設置することが挙げられます。通常の柱には、鉄筋コンクリート造のRC柱、鉄骨造のS柱、鉄骨鉄筋コンクリート造のSRC柱、コンクリート充填鋼管造のCFT柱などがあります。しかし、これら小断面の柱では超高層建築物の構造性能を満たすことができません。そこで、李研究室では、将来の超高層建築物に適用できるようなシンプルなメガ柱を提案しています。例えば、比較的構造性能面の良いCFT柱の中に、さらにコンクリート充填円形鋼管要素(内蔵CFT式主筋)を設置した「内臓 CFT式要素を有するCFT柱」などです。そのほかにも、「複数のボックスを有する二重円形CFT柱」は、円形鋼管を二重にすることにより相互拘束効果が期待でき、優れた耐震性能を発揮する提案の一つといえるでしょう。

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李 文聰准教授理工学部 建築学科 李研究室

  • 専門:建築構造、メガ部材、RC部材の挙動シミュレーション、新構造・新工法の開発
  • 掲載内容は、取材当時のものです