現代の日本において、人々の健康への関心は非常に高まっています。国が5年おきに行っている調査でも、「一番大切なものは何ですか」という項目では「家族」に次いで「健康」と答えている人が多いという結果が出ています。このように現代では健康への関心が高く、具合が悪ければ病院に行くという行動も進み、人の誕生から死まで、多くの問題が医療の対象となっています。これまで医療の対象ではなかった身の回りの問題が、医学や治療の研究対象となることを、社会学では「医療化」と呼んでいます。例えば「落ち着きのない子ども」や「子どもの成績不振」について、以前は親のしつけや教育問題と考えられていましたが、現在では「多動症」「学習障害」とされ、治療対象と捉えられるようになりました。身の回りの問題が医療化されることによって、本当に助けが必要な人に手が差し伸べやすくなったというメリットもありますが、逆に、診断がついてしまうことで、自分も病気なのではないかと不安をあおる可能性や、病気に対して偏見を持ってしまい差別も生み出しかねない、というデメリットもあります。また、自分で病気について理解しようとせずに「困ったことがあれば医師に聞けばよい」と医療者任せになってしまう、などの問題も出てきています。だからこそ、医療化が進む現代では、まずは自分自身の目でどんな医療を受けるのかを知り、本当に受ける必要があるのかどうか、家族を含めてよく考えてから決めることが必要なのではないでしょうか。

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的場 智子准教授ライフデザイン学部 生活支援学科 生活支援学専攻

  • 専門:保健医療社会学
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