「ポライトネス」とは、人との交流の中で立場・礼節・状況に応じた配慮ある言動行動をとることを指します。元々はPolitenessという英語で、1978年にブラウンとレビンソンにより「言語ポライトネス理論」として提唱されました。この理論では「ポライトネス」は多くの言語で普遍的に存在していることや、人は相手からどう思われたいかという公の場での自己イメージ(フェイス)を持っており、それは「他人から好かれたい」という受容欲求(積極的フェイス)と「個人として独立していたい」という自由欲求(消極的フェイス)の2種類があると説いています。そして、どんな言語行為も相手のフェイスを脅かす可能性があり、だからこそ人はそれを回避して人間関係を良好にするためのストラテジーとして「ポライトネス」を活用しているとしています。ストラテジーには「消極的フェイスに配慮しながら伝える」「積極的フェイスに配慮しながら伝える」など5つあり、なかでも親しさを強調する積極的フェイスのストラテジーには、礼儀正しさだけではないポライトネスのもう一つの側面があることが分かります。また「ポライトネス」は、外国語を学ぶ際の人間関係の構築にも重要な役割を果たしています。文法や発音のミスは、学習者として許されやすいものの、「ポライトネス」のミスは人格の問題と捉えられてしまい、母語ではない学習者とはいえ、人間関係を壊してしまう恐れがあります。グローバル時代を迎えている今、「ポライトネス」の多様な性格を知り、多様な文化を背景とした人々と良い関係を築くことができるようにすることが大切なのです。

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竹野谷 みゆき教授文学部 国際文化コミュニケーション学科

  • 専門:社会言語学、語用論
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