最先端の半導体「トランジスタ」は、根本原理は中学や高校で学ぶ簡単な物理の組み合わせによって説明することができます。トランジスタは、プラスとマイナスの足2本と、オンオフの切り替え1本の3本足のスイッチと考えると話は簡単です。スイッチによって電圧を加えると、+(プラスの電荷)から、電気力線(電界)を通り、-(マイナスの電荷)へ電流が流れるのが基本です。また、トランジスタの小型化で機械の性能を上げようとするとき、小さくすることで余計な微力電流が流れてしまう、などの問題が出てきていました。しかし、シリコン基板を使い、埋め込み酸化膜をシリコン層で挟むことで余計な電流が漏れてしまうのを防ぐことができるというアイデアが生まれました。これは特別な知識から生まれたものではありません。シリコン基板を薄くして電子を引き寄せることで、電子が漏れるのを防ぐことができるのではないか、挟むより、全部を埋め込み酸化膜にしてしまえばいいのではないか、埋め込み酸化膜自体も薄くしてしまうのはどうだろうか…など、単純な知識を組み合わせることで、新たな考えが生まれるのです。ゼロからは何も生まれません。多くの知識を意味なく丸暗記するのではなく、基本的な原理・原則を完全に理解し、自分が何をしたいのかをもとに、徹底的に考え抜くことで、意外性や将来性、可能性を感じてみましょう。

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花尻 達郎教授理工学部 電気電子情報工学科 量子デバイス工学研究室

  • 専門:半導体デバイス工学、次世代電子デバイスの設計および試作
  • 掲載内容は、取材当時のものです