大地震や水害、火山の噴火などの自然災害によって、私たちは誰もが住まいを失う可能性があります。その場合、特に高齢者の住環境については配慮が必要で、地域によっては高齢者や障害者向けの福祉型仮設住宅なども用意されています。災害発生後の、仮設住宅への入居までのプロセスについて調査した結果、自宅から避難所、避難所から仮設住宅という移動だけではなく、車内・屋外、職場、知人の家、親類の家、宿泊施設、公営住宅といった避難先を転々としているケースが多いことがわかりました。被災者は、避難所にいるものだという私たちの認識とは違い、避難所での生活は短く、親類の家などに長く滞在していることもわかりました。また、職場や学校から離れづらい若い世代と違い、高齢世帯は、被災地から遠い場所での避難生活が多いこともわかりました。行政は、こうした避難所以外の場所で仮設住宅の完成を待っている多くの人たちにも情報を伝え、意向を集めなければなりません。人によって、住まいの復興に対する考え方やスピードは違います。その選択肢を都度、被災者に提示することが大切です。次にまたいつ災害が起こるかはわかりません。建築やまちづくりを学ぶみなさんに、災害時の住まいの復興のプロセスについて考えてもらいたいものです。

pf_tomiyasu.jpg

冨安 亮輔准教授福祉社会デザイン学部 人間環境デザイン学科

  • 専門:建築計画、建築設計、高齢者の居住環境、災害時の住まい
  • 掲載内容は、取材当時のものです