社会福祉学科では、ソーシャルワーカーの養成に力を入れています。今回はソーシャルワーカーとして働く際に大切なソーシャルワークの価値について考えます。ソーシャルワークの価値とは人間観、社会観を指します。人間観とは、人間の尊厳、命が一番大切であり、障がいなどのさまざまな違いに関わらず、かけがえのない存在として尊重することです。国際連合は1981年を「国際障害者年」に制定し、障がい者は「特別」なのではなく、「通常の人間的ニーズを満たすのに特別な困難をもつ普通の市民」と定義し、人権を守る取り組みを行っています。そして、障がい者問題の解決には「全ての人々の社会づくり(A society for all)」にあり、障がい者や高齢者がアクセスできるように創っていくことは、全ての人にとって過ごしやすい環境・社会になるのだ、という思想の転換を図りました。そういう社会を創り出すことこそが、ソーシャルワークです。しかし歴史を振り返ると、障がいを「害」、あるいは、「特別」なことと捉える価値観が存在しており、例えば旧優生保護法による不良な子孫の出生予防のための強制的な不妊手術や、2016年の津久井やまゆり園事件など、日本あるいは世界で障がい者に対するショッキングな事件が起きています。弱者とされてきた障がいのある人は、本来は、強者の論理で築かれた社会を変えることのできる最強の市民です。その人がその人らしく生きられる社会を創り出していく、その推進役として、ソーシャルワーカーは重要な役割を担っているのです。

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高山 直樹教授福祉社会デザイン学部 社会福祉学科

  • 専門:ソーシャルワーク・障害者福祉
  • 掲載内容は、取材当時のものです