「カバラー」とは、ユダヤ神秘主義のことです。創世記には、「初めに、神は天地を創造された」と書かれていますが、それよりさらに初めの段階で、神が自分自身の内部に凝縮し、ヨッドと呼ばれる点になりました。これがヘブライ語の1文字目であり、この点がさく裂し、自己展開して、22の文字ができあがりました。この22の文字が組み合わされ、ユダヤ教の聖典である「トーラー」を構成しています。
カバリストは神の痕跡と言われるトーラーを「わからないように」読みます。通常の文字としてトーラーを読むと、解釈には限りがあり、1つの意味しか見えません。しかし、カバラーは神の痕跡を読み解くため、トーラーの文字から別の意味を発見しようとします。そのため、文字を数値に変換する、つまり、意味の文脈を一度断ち切ってまったく別の文脈を形成するという手法を取ります。そうすると、人間が想像すらできない意味が現れてきてびっくりします。その結果、自分が想定していなかった自分になることが、カバラーの深い目的でもあるのです。

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永井 晋教授文学部 哲学科

  • 専門:哲学・現象学

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