世界の人口は2050年には90億人になると言われており、このままで深刻な食糧不足が予測されます。穀物生産量を増やすためには耕地面積か収量を増やす必要がありますが、耕地に適した土地がこれ以上増えることは望めません。そこで、イネの収量を上げる研究が行われた結果、見つかった遺伝子がTGW6、お米の粒を重くする遺伝子です。
イネは長い時間をかけて改良され、野生のものから現在のものになりました。これを「栽培化」と言います。栽培化によって望ましいイネを手に入れた反面、イネが本来持っていた多様性は失われました。
栽培化の過程で捨てられた遺伝子の中から見つけ出した有能な遺伝子、それがTGW6です。そして、TGW6細胞が壊れると胚乳細胞の数が増え、お米が長くなり、結果的に収量が増えるということがわかりました。
人間は体温が5度上がっただけでも生死に関わります。しかし、一度根づくと自ら移動できない植物は、周囲の環境に合わせて生命を維持する大きな機能を持っています。私たちは植物を利用しつつ、植物に対する理解をより深めていくことが必要です。

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廣津 直樹教授生命科学部 生物資源学科 植物ゲノム科学研究室

  • 専門:植物生理学、植物栄養学、作物学、植物遺伝育種学

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