3.すべての人に健康と福祉を11.住み続けられるまちづくりを

福祉社会における新たな価値の創発と支援システムの構築

  • 重点研究課題:

    (2) (3) (5) (6)

  • 研究主体:

    福祉社会開発研究センター

  • 研究代表者:

    志村 健一 教授(福祉社会デザイン学部 社会福祉学科)

  • 研究期間:

    2025年4月〜2028年3月

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for “福祉社会の構築”

−「分断された人びとのつながり」に挑む −

コロナ禍を経て人と人とのつながりが希薄化し、孤立が見えにくい形で進行している。東洋大学福祉社会開発研究センターは、誰ひとり取り残されない福祉社会の実現を掲げ、文理融合で研究と実践を重ね、人々が安心して関係を築ける仕組みの構築に取り組んでいる。被災地支援の現場を起点に、テクノロジーを活用した新たなつながりの再構築モデルを切り拓いていく。

取材:2025年9月

つながりを取り戻す福祉社会の構築を目指して

コロナ禍では人と人との距離を保つことが求められ、社会のつながりが大きく制限されました。アフターコロナとなった現在も、関係を取り戻しにくい状況や、存在が見えにくくなってしまった人々が各地にいます。こうした分断が固定化されない社会のあり方を探るため、「誰ひとり取り残されない社会づくり」を軸に、人と人との関係性を再構築する手法と仕組みを研究しています。安心してつながりを築ける福祉社会をめざし、現場での実践と仕組みづくりの両面から取り組みを進めています。

この課題は一つの領域では解決が難しいため、福祉、スポーツ、テクノロジーなど複数分野の知見を組み合わせる文理融合のアプローチを採用しています。被災地でのオンライン・ボッチャの取り組みはその一例です。能登半島では災害をきっかけに、地域のつながりの脆弱さが表面化しました。そこでオンライン環境を活用し、場所や状況に左右されず参加できる機会をつくっています。また、運搬時の機材破損に対しては、3Dプリンターによる再設計や金属軸の採用など工学的な改良を加え、より実装性の高い仕組みづくりを進めてきました。このように、支援の現場と技術開発を往復しながら、持続可能なつながりの形を具体化しています。

さらに、能登の仮設住宅ではアザラシ型ロボット「パロ」を用いたロボット・セラピーを導入し、参加者同士や支援者との新たな関係づくりにも取り組んでいます。ペットと離れた生活環境で孤立感を抱えやすい人々に対し、テクノロジーを交流の媒介として活用する試みです。これらの取り組みは被災地に限定されるものではなく、今後の日本社会におけるつながりの再構築モデルとして応用できる可能性を含んでいます。人と人とが安心してつながりを取り戻せる社会の実現に向けて、今後も研究と実践を重ねていきます。

志村 健一

東洋大学福祉社会デザイン学部教授、東洋大学福祉社会開発研究センター長。本研究プロジェクト代表者。ウィスコンシン大学ラクロス校大学院修士課程、フィールディング大学院大学博士課程修了。Doctorof Education。道都大学助手、専任講師、弘前学院大学専任講師、助教授、聖隷クリストファー大学助教授、教授を経て2011年東洋大学社会学部に教授として就任。専門は知的障がいのある人たちへのソーシャルワーク。特にソーシャルワーク・リサーチとソーシャルワーク実践を融合させたアクション・リサーチの実践、指導に取り組んでいる。

※研究代表者の所属・職位は、取材時と異なっている場合があります。