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少子化の中で増える児童虐待 子どもの心身の健康と安全を守るために

子どもの健やかな成長が危ぶまれる事案が相次いでいます。児童虐待相談対応件数は年間19万件を超え、いまなお増加傾向にあります。子ども家庭福祉・社会的養護を専門とするライフデザイン学部生活支援学科子ども支援学専攻の鈴木崇之教授にお話を伺いました。

子どもの健やかな成長が危ぶまれる事案が相次いでいます。児童虐待相談対応件数は年間19万件を超え、いまなお増加傾向にあります。子ども家庭福祉・社会的養護を専門とするライフデザイン学部生活支援学科子ども支援学専攻の鈴木崇之教授にお話を伺いました。 リード文

01

少子化が進む一方で虐待相談は増加

2019年の出生数は約86万5000人と過去最低を更新。少子化が深刻化している一方で、児童虐待の件数は増えているそうですね。

児童相談所の児童虐待相談対応件数は年々増加し、2019年度には19万件を超えました。児童虐待防止法が定義する4つの虐待、「身体的虐待・心理的虐待・性的虐待・ネグレクト」のすべてが増加しています。

児童虐待防止法は2004年に改正法が施行され、それまでも通告義務は規定されていましたが、改正後は「虐待の可能性」があるケースも通告の対象となりました。また、専用ダイヤル「189」の設置で相談のハードルが下がり、マスコミの報道も相まって、虐待の問題は広く知られるようになりました。こうしたことが相談件数の増加に寄与していると思います。

相談件数の増加は早期発見につながって良いことのように思えます。

早期発見は重要で、児童相談所は通報を受けたら48時間以内にその家庭を訪問し、子どもの安全を確認するという義務を負っています。問題を見逃さないよう、職員の方々は日々神経をとがらせながら対応に当たっています。

ただ、現場の話を聞くと空振りも多いそうです。春先になると「泣き声がひどい」という通報が増加傾向にありますが、訪問してみるとただの夜泣きだったということも珍しくない。もちろん虐待が発生していなかったのであれば結果的に良かったのですが、一方で、児童相談所の訪問を受けた親はビックリしますよね。夜泣きは発達過程で起こり得ることにもかかわらず、「近所から虐待だと思われているのではないか」「また泣いたら、また通報されて、子どもと引き離されるかもしれない」という不安を抱くことも少なくありません。

本来、児童相談所や相談の仕組みは子ども自身の育ちと親の子育ての両方を支援するためのものですが、それが保護者の安心感につながっていないことは大きな問題だと考えています。

02

より身近な場所で子どもと家族を支援できる体制づくりを

改めて児童相談所の機能について教えてください。

児童相談所には親の同意がなくても子どもを保護できる「一時保護」の権限が付与されています。何らかの理由で家族と暮らせない子どもを里親に委託したり、児童養護施設に入所させて養育したりする「措置」を実施するという子どもと家族の人生を左右する権限もありますので、専門性を持つ人材と相応の予算が必要です。都道府県と政令指定都市には児童相談所の設置義務があり、2020年7月1日時点で全国に220カ所ありますが、管轄児童相談所と家族の居住地域の位置関係によっては、1つの家族への面接のみで一日が終わってしまうケースもあります。私は他の福祉先進国のように市レベルでの児童相談所の設置を進め、より身近な場所で子どもと家族を支援できる体制を作っていく必要があると考えています。

現在、市区町村では家庭相談窓口の充実が図られており、2005年以降は要保護児童対策地域協議会(要対協)が問題を抱える子どもと家族の支援を担っています。支援が必要な家庭はさまざまな問題を抱えているので、子どもと家族に関わる関係機関が守秘義務を守り、統一した考えをもって、子どもとその家庭を支援しようと取り組んでいます。児童相談所のように「一時保護」などの権限がない分の苦労はありますが、徐々に成熟し、市区町村にも相談所を置ける基盤が整いつつあります。

03

児童福祉分野の高度な専門性を持つ人材育成が急務

子どもの心身の健康・安全を守り、SDGsのゴールを達成するためには、ほかにどのようなことが必要でしょうか。

子どもとその家族を支援するには、児童福祉司や児童心理司、児童指導員・保育士などをはじめ、非常に高度な専門性が求められるため、この分野で働く人材を育成し、増加させていくことが急務だと考えています。東洋大学の子ども支援学専攻では定員100名のうち、毎年2~4名の学生がこの分野に進んでいます。数は決して多くありませんが、私が着任してから約10年間で徐々に子ども支援学専攻出身の児童福祉専門職が増えてきています。私自身も研究を机の上で終わらせることなく、地域の児童福祉の活動に加わり、さまざまな立場から子ども家庭福祉の現場に立ってSDGsのゴール達成に向けた取り組みを続けています。

2019年度には福祉先進国のフィンランドで児童福祉制度の研究に専念する期間を得、翌2020年度からは中国人の大学院生とともに、日本と中国の児童虐待対応体制の比較研究を開始しました。今後はローカルとグローバルの両面から子ども家庭福祉・社会的養護の研究、教育、実践に携わり、何らかの理由で家族と暮らすことができない子どもとその家族、そしてこのような子どもと家族を支援する児童福祉専門職の力になっていきたいと考えています。

鈴木 崇之

ライフデザイン学部生活支援学科子ども支援学専攻 教授
専門分野:子ども家庭福祉論、社会的養護、家庭支援論
研究キーワード:児童虐待問題、児童相談所、社会的養護