【特集】環境評価システムとフィールドワークで 地域住民を巻き込んだ環境保全活動を推進

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2021.03.23発行

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環境評価システムとフィールドワークで 地域住民を巻き込んだ環境保全活動を推進

温室効果ガス、廃棄物、生物多様性など、環境問題にはさまざまなテーマがあり、対策を進めていくためにはベースとなるデータが必要です。情報連携学部情報連携学科の後藤尚弘教授は環境評価システムの開発を通して、地域の環境保全活動に貢献しています。

summary

  • 環境問題の対策に必要なシステムを開発
  • 生物多様性を守ることが暮らしの豊かさにつながる
  • 海外の医療廃棄物処理システム開発を支援

環境問題の対策に必要なシステムを開発

環境問題に関する先生のご研究や取り組みについて教えてください。

環境問題には多岐にわたる要素が影響し合っています。たとえば、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素は植物の光合成に必要なので、その増減は生態系に影響を及ぼしていると考えられます。そこで、私は大学院時代に、温度や降雨量などの変化と植物の生育状況を数式で表し、二酸化炭素とグローバルな生態系の変化を記述する数理モデルを構築しました。
ここ最近は、渥美半島に位置する愛知県田原市などさまざまな地域の環境問題に取り組んでいます。きっかけは自治体から廃棄物処理の相談を受けたことでした。廃棄物は出す側と処理する側のマッチングが重要なので、地理情報システムを用いて愛知県における廃棄物焼却施設の立地可能場所を抽出するシステムの研究を行い、効率化のための制度設計を行いました。現在は廃棄物処理だけでなく自然生態系の保全活動にも関わっています。

生態系の保全活動にはどういったシステムが活用されているのでしょうか。

愛知県渥美半島にあるサケバヒヨドリという植物の保全活動では、画像認識システムの活用を目指しています。この植物には目立った特徴がなく、似たような雑草と一緒に刈り取られてしまうことが少なくありません。また、サケバヒヨドリの蜜は遠方から飛来する渡り蝶のアサギマダラの好物。生物多様性を保全するため、サケバヒヨドリを誤って除草しないように、画像認識システムを開発しようと考えました。
画像認識システムはミシシッピアカミミガメの駆除にも応用できると考えてます。このカメは繁殖力が強く、日本固有のクサガメやイシガメを駆逐する外来種として問題になっていますが、画像認識システムを使えば容易に識別できるので、駆除に役立てることができます。

生物多様性を守ることが暮らしの豊かさにつながる

グローバル化が進むほど外来種の問題は増えそうですね。

グローバル化が進むほど外来種の問題は増えそうですね。

ペットや鑑賞用として持ち込まれた外来種が安易に放たれて問題になる例もあれば、ヒアリやセアカゴケグモのように意図せず入ってくる外来種もいます。ただ、すべての外来種に問題があるというわけではありません。植物を例に挙げると、トマトやピーマンのように人間の管理下で共存できるようになった外来種もあります。シロツメクサも外来種ですが、多くの人が日本固有種と勘違いするほど定着しています。

問題のない外来種と脅威となる外来種は何が違うのでしょうか。

固有種を駆逐して生態系を弱体化させることが一番の問題です。大切なことは生物の多様性を守ること。もし1種しかいない生物に病気が蔓延するとその種が途絶えてしまうかもしれませんが、多様な種があれば外部環境の変化に適応できます。私たちが生きる上で欠かせない大気も水も食もすべては生物の恵みです。生物多様性を守ることは暮らしの豊かさを守ることにもつながるので、まずは多くの人にこうした問題への関心を持ってもらいたいと思っています。また、その地域に住む方々が保全活動に参加することも大切です。
しかしながら、一般の方が保全活動に参加するのはハードルが高いと感じることもあるでしょう。専門家との間には知識の差がありますし、仕事や子育てに忙しい世代は時間もないかもしれません。だからこそ、専門家とのギャップを埋めて、多くの人が関心を持てるように画像認識などのシステムが必要だと思っています。環境を変えるのは人間ですから、人間が行動するための情報を数理モデルで作り、それを分かりやすく伝えていくことを心掛けています。

海外の医療廃棄物処理システム開発を支援

環境問題に貢献するシステム開発は、海外からも引き合いがあるそうですね。

愛知県の産業廃棄物会社がラオスに進出されるとのことで、そのシステム開発を支援しています。日本では法制度も含めて医療廃棄物処理のスキームが確立されていますが、ラオスでは医療廃棄物を簡易なビニール梱包で処理しており、有害物質による環境汚染が問題になっています。そこで首都ヴィエンチャンで複数の病院を訪問してリサーチし、どの程度の廃棄物が生じるのか、どういった処理施設が必要なのかを試算。将来にわたって持続可能な制度となるように、資金計画も含めてシミュレーションを行っています。現在はコロナ禍でプロジェクトが止まっている状態ですが、自由な往来が可能になったら、実現に向けて動いていく計画です。
研究活動のフィールドやテーマは多様に見えても、どれもが工学をベースにした環境評価です。SDGsのゴール達成に貢献するため、環境問題への取り組みを継続していきます。

後藤 尚弘

情報連携学部情報連携学科 教授
専門分野:持続社会工学、環境システム工学
研究キーワード:環境におけるICT活用、環境と社会、持続社会
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