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公共インフラを持続可能にする 鍵を握るのは“省インフラ”と“地域の合意形成”

現在、日本では高度経済成長期に建設した学校や病院、道路などのインフラが更新時期を迎えていますが、少子高齢化や人口減少が進み投資や維持管理のための財源が不足しています。大学院経済学研究科公民連携専攻の根本祐二教授はインフラを持続可能にするための新しい概念である「省インフラ」を提唱しています。

現在、日本では高度経済成長期に建設した学校や病院、道路などのインフラが更新時期を迎えていますが、少子高齢化や人口減少が進み投資や維持管理のための財源が不足しています。大学院経済学研究科公民連携専攻の根本祐二教授はインフラを持続可能にするための新しい概念である「省インフラ」を提唱しています。

01

高度経済成長期のインフラが一斉老朽化

学校や病院、道路、上下水道など社会を支えるインフラの老朽化が進んでいるそうですね。

日本のインフラの多くは高度経済成長期に造られたもので、2020~2030年代をピークに、一斉に更新時期を迎えています。しかし、財源不足から工事が滞り、老朽化が進むことで大きな崩落事故などが起きています。どのくらい財源が不足しているかというと、1970年代には年間1万本の橋が架けられていましたが、現在は年間300本程度。つまり、更新が必要な橋が1万本あるのに、予算は300本分しかないのです。

かつてインフラに投じられていた予算は、いま社会保障に振り向けられています。少子高齢化や人口減少が進むなかで、もはや70年代のような投資はできません。これからはインフラの絶対量を削減しても成り立つ地域社会を作っていく必要があります。

02

持続可能なインフラのために必要なこと

インフラの絶対量が減っても大丈夫なのでしょうか。

多少の不便は発生しますが、公共サービスは維持します。大切なことは地域のインフラを持続可能にすることで、私は「省インフラ」という概念を提唱しています。

もとになった「省エネ」という言葉はオイルショックのときに生まれました。初めはお風呂のお湯張りを2日に1回にするなど不便さをただ我慢していましたが、やがて企業は省エネ製品の技術開発に取り組み、人々も無理や我慢ではない省エネに取り組むようになりました。これと同様に、技術開発と人々の意識の転換で、省インフラを実現できると思っています。

省インフラの具体的な内容について教えてください。

道路や橋梁といった土木インフラは公共性が高いので、できるだけ量を減らさずに、維持管理の工夫でライフサイクルコストを下げる技術やサービスの開発を推進します。

一方、公共施設は現在より1/3程度に減らします。例えば、これまで地域には青年館や婦人会館などが造られてきましたが、そのほとんどは専門施設である必要はありません。会合ならば学校の教室でもできますよね。公共施設の多くは、そこで行われる活動に公共性があるのですから、機能を維持しながらも集約化、共用化、多機能化などによって建物の量を減らすことができます。

03

人口減少社会だからできる手法を海外へ

そうなると都市の姿が大きく変わりそうですね。

いま全国各地で中核拠点に集中投資するコンパクトシティという政策が検討されています。私が提唱している拠点型の省インフラは、現在約3万校ある公立小中学校を1万校にまで統廃合し、その学校を中核として役所や病院なども集約させ、1万人が利用する拠点となるよう集中投資することです。学校を中核にすると、遠くても車で1時間以内に拠点があるという状況をつくることができます。そして、学校と公民館とで共通する施設を共用化したり、域内交通を整備したり、遠隔医療や電子自治体などテクノロジーの力で地域間格差を埋めたり、さまざまな省インフラ手法を組み合わせてコンパクトな街づくりを目指します。拠点に住民が集まれば民間投資が入りやすくなり、ガソリンスタンドや、飲食店・クリーニング店などの商業施設も維持できると期待されます。

根本先生
ただし、持続可能なインフラのために必要な政策だとしても、必ず反対意見は出ます。「学校が統合されて遠くなるのは困る」「近所に変な施設を造らないでほしい」などの声が上がり、何度話し合っても解決できないことは珍しくありません。そこで重要になるのが、地域住民との合意形成です。

どのようにして合意形成するのでしょうか。

ごみ処理場の建設計画のような議論が分かれるテーマには、ワークショップの活用が有効です。たとえば「デリバレイティブ・ポリング(討論型世論調査)」では、参加住民は初めに匿名で投票します。そのあと必要な資料や専門家から十分な情報提供を受けて、小グループと全体会議でじっくりと討論し、その後に再度、匿名投票を行うのです。

従来は住民集会や住民説明会などの場が設けられましたが、往々にして声が大きい人の意見に引っ張られる傾向にあります。しかし、匿名投票だと周囲の影響を受けずに自身の意志表明がしやすいですし、十分な情報提供と討論で理解が深まると、感情的な意見は減ります。マイナス面も含めて、しっかりと情報開示することが大切ですね。結果、住民の合意形成が進んでいくのです。

インフラの老朽化や財源不足といった課題は日本のみならず、アジア、アフリカなど海外の新興国に共通しています。日本が先駆的に省インフラに取り組み、合意形成の手法を含めて新しい地域社会の在り方を示すことができれば、これから急速なインフラ老朽化を迎える新興国の課題解決に貢献できると考えています。

根本 祐二

大学院経済学研究科公民連携専攻 教授
専門分野:公民連携、地方創生
研究キーワード:地方再生、インフラ、PPP