食環境科学部の露久保美夏准教授を中心とする同学部学生と、経営学部マーケティング学科の堀口哲生講師のゼミ生が、日本酒の製造過程で生じる、食べられるにもかかわらず破棄されることが多い酒粕を学生食堂のメニューに取り入れる開発を行うことを目的とした、酒粕プロジェクト「U-go!~酵母の贈り物~」を発足させ、2025年2月19日に朝霞キャンパスでメニューお披露目の発表会を実施しました。
酒粕プロジェクト「U-go!~酵母の贈り物~」で考案した学食メニューで活用する酒粕は、理工学部応用化学科の峯岸宏明准教授の生命工学研究室と、本学卒業生の佐藤徳哉さんが代表取締役を務める有限会社佐藤酒造店が産学連携の研究で開発した花の酵母を使った東洋大学オリジナル日本酒「エスティ」の製造過程で生じたものを使用します。
【関連リンク】 (ToyoLab) for “New fermented products” −STY酵母菌でブランド食品作りに挑む−
オリジナル日本酒を造るだけではなく、そこで生じた酒粕を食材として学食で活用しているプロジェクトは国内初※です。
※大学において、オリジナル日本酒造りから、その製造の過程で生じた酒粕を自学で消費するという取り組みでは国内初。(2025年2月・東洋大学調べ)
本学と有限会社佐藤酒造店の産学連携で開発した、日本酒の製造過程で生じた酒粕の有効活用を考えるプロジェクトとして発足しました。酒粕は食べることができるにも関わらず、酒粕の取引価格は年々低下しています。さらに、酒粕を廃棄をする場合には酒蔵が全面的に負担するという現状があり、酒粕の活用や廃棄は課題になっています。そこで、「生命(いのち)と食」の総合的な教育拠点である朝霞キャンパスにある食環境科学部と、マーケティング視点でプロジェクトを遂行するために経営学部の学生でこのプロジェクトに取り組むことになりました。理系学部と文系学部が連携することで各々の専門性を発揮しながら社会課題の解決に取り組む文理融合型の教育プロジェクトとしてスタートしました。
なお、本プロジェクトに参画した食環境科学部の学生は、2024年4月の朝霞キャンパスリニューアルを機に本学と学生食堂の運営を手掛ける株式会社オリエンタルフーズの産学連携により学生が中心となって企画・運営する学食プロジェクト「Umart!(ユーマート)」のメンバーも含まれます。
【関連リンク】 (東洋大学報) 朝霞キャンパス学生食堂「Umart ! 」プロジェクトチーム
酒粕を活用した学食メニューについて
本プロジェクトに参画した学生総勢92名は、それぞれ3つのチームに分かれ、食環境科学部での「食」に関する学びや研究をベースに、経営学部の教員からマーケティングを学び、「市場調査」や「学内での試食会」を積み重ねて、メニューを開発いたしました。
発表したメニューは、2025年5月中旬頃から、朝霞キャンパス学食のメニューに加える予定です。
「酒粕仕込み!やわらか鶏(どり)の照り焼き風 ~茶碗蒸しを添えて~」
学食の定番メニューに少ない日本食に着目し、「甘じょっぱい味付けの日本食メニュー」を考えました。メインの鶏の照り焼き風は、鶏を酒粕に漬け込むことでやわらかさを追求、副菜の茶碗蒸しにも酒粕を活用しています。酒粕になじみがない人でも酒粕の風味を感じつつ、食べやすいメニューです。
「酒粕香る 豚しゃぶサラダうどん」
「野菜を多くとりたい、ヘルシーなメニューが欲しい、酒粕にはお肉料理が合うのではないか」という調査結果から、うどんに野菜と肉を多く取りいれることができるサラダうどんを考案しました。サラダうどんにかけるタレに酒粕を加え、酒粕入りバンバンジーダレにしました。5月以降メニュー展開を考え、暑い日にぴったりのメニューです。
「選べるソースの粕から定食」
調査結果から導いた「珍しさ・ボリューム感・ジューシーさ」を考慮したメニュー開発を行いました。肉を酒粕に漬け込むとやわらかくジューシーになることに着目し、メイン料理を学食メニューで人気の鶏のから揚げにアレンジを加えました。ソースを4種類用意することで珍しさ、楽しさを加え、そのうち2種類のソースに酒粕を活用しています。
担当教員のコメント
峯岸宏明准教授(理工学部・応用化学科)
学生は、酒粕の生成過程、有用性、抱えている課題を知り、このプロジェクトで「自分たちができること」を真剣に考えることができました。このことを多くの人に伝えてほしいと思います。
露久保美夏准教授(食環境科学部・食環境科学科)
学生は日々の学習で得た知識に加え、このプロジェクトを通じて実践的なスキルが身につきました。文系と理系の学生の協業は、個々が学問の専門性に気づく場となり、「いま、自分が最大限できること」を形にしたことが素晴らしいと思いました。
堀口哲生講師(経営学部・マーケティング学科)
このプロジェクトでは、経営学部の学生にとって、市場調査、マーケティング戦略の立案、原価計算など、大学で学んだことを実践する機会が多くありました。これらの経験を通じて、学生は学んだ知識やスキルが実際に役立つことを実感し、今後の学びへの意欲が大きく高まったようです。