私は大学入学前の2021年にウェブブラウザ「Floorp」を立ち上げ、開発期間を含め5年以上開発・メンテナンスを継続しています。この「Floorp」のプロジェクトをさらに進化させるために、未踏ITプロジェクトに挑戦し続けてきました。
大学1年生の時には、「ウェブブラウザを活用した検索AI応用」というテーマで、この「Floorp」で未踏ITプロジェクトに2度目の挑戦をしました。この時「ローカルLLMを活用すべき」というフィードバックをいただいたことから、単に検索機能を強化するだけでなく、より根本的な課題に目を向ける必要性を感じました。
この課題を解く鍵を、INIADの講義の中で見つけました。特に「情報連携学概論」の講義には多くの気づきがありました。情報連携学部の創設者である坂村先生によるTRON OSの講義を聞き、オペレーティングシステムには無限の可能性があることを知りました。また他の講義では、 Chrome OS が教育現場で活用されている事例を目にし、ウェブブラウザが単なる閲覧ツールではなく、オペレーティングシステムのように機能する可能性を強く意識するようになりました。こういった学びの中で、ウェブブラウザが情報を統合し、すべてを操作可能なプラットフォームになれば、LLM の活用を最大限に引き出せ、現在のデジタル環境が抱える分断の問題を解決できるのではないか、と考えるに至りました。
このアイデアをもとに3年目の挑戦の今年度、「Floorp OS」がIPA/2025年度未踏IT人材発掘・育成事業 採択プロジェクトに採択されました。このプロジェクトでは、ウェブブラウザ「Floorp」を中核に据え、ローカルファイルや周辺機器へのアクセスを統合し、ローカルLLMをオペレーティングシステムの機能として提供することで、情報漏洩リスクを削減し、プライバシーを保護しながらAIの恩恵を受けられるようにすることに挑戦しています。
講義から発展した、日常への疑問を投げかけること、解のない回答を求めることこそ、哲学の本義だと感じました。この経験は、技術開発だけでなく、あらゆる問題解決において、多角的な視点から深く思考し、既成概念にとらわれない発想を持つことの重要性を教えてくれました。これからもこの「哲学する」姿勢を忘れずに、ウェブブラウザ開発で培った経験と、未踏ITという挑戦的な環境で、この「未踏」の領域を切り拓き、社会に新たな価値を提供できるクリエイターを目指していきたいと考えています。
IPA/2025年度未踏IT人材発掘・育成事業 採択プロジェクト
https://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/it/2025/gaiyou-tk-1.html
Floorp 開発者
https://floorp.app/ja-JP
掲載されている内容は2025年9月現在のものです。
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