About Toyo University 【特集】旅する哲学者「井上円了」とは-教育と普及-
井上円了は1858年、現在の新潟県長岡市にある慈光寺で生まれました。
近代日本の夜明けである明治維新を体験し激変する時代の中、10歳から漢学、16歳からは新しい学問である洋学を熱心に学び、23歳の時には東京大学で哲学を専攻しました。そこで洋の東西を問わず心理は哲学にあることを確信します。その後、大学を卒業した円了は、29歳の若さで東洋大学の前身となる私立哲学館を創立。哲学者の養成だけではなく、一般の人が哲学を通じて合理的な思考の基礎を身に付けるべく、哲学教育に取り組みました。
また教育活動と並行して、哲学の普及にも精力的に活動するようになります。まだ海外への渡航がままならない明治時代に3度の海外を巡り、各国の実情を学びながら日本がどうあるべきかを考え続けました。
井上円了略年譜
1858(安政5)年3月 | 越後国(新潟県)、真宗大谷派慈光寺の長男として誕生 |
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1874(明治7)年5月 | 新潟学校第一分校(旧長岡洋学校)に入学 |
1881(明治14)年9月 | 東京大学文学部哲学科に入学 |
1885(明治18)年7月 | 東京大学文学部哲学科を卒業 |
1887(明治20)年9月 | 哲学館(東洋大学の前身)を創立(麟祥院境内の建物一棟を借りて開校) |
1888(明治21)年6月 | 第1回海外視察に出発(1889年6月帰国) |
1889(明治22)年11月 | 哲学館を本郷区駒込蓬莱町(現在の文京区向丘)に移転 |
1890(明治23)年11月 | 哲学館専門科設立の基金募集のため第1回全国巡回講演を開始 |
1893(明治26)年11月 | 「妖怪研究会」を創立 |
1896(明治29)年3月 | 第2回全国巡回講演を開始 |
1897(明治30)年7月 | 哲学館を原町(現在の白山キャンパス)に移転 |
1899(明治32)年2月 | 京北中学校を創立、開校式を挙行 |
1902(明治35)年11月 | 第2回海外視察に出発(1903年7月帰国) |
1902(明治35)年12月 | 哲学館事件発生(文部省から中等教員無試験検定の特権を剥奪される) |
1904(明治37)年1月 | 第3回全国巡回講演を開始 |
1904(明治37)年4月 | 「専門学校令」による哲学館大学の学長に就任 |
1904(明治37)年4月 | 哲学堂(現在の東京都中野区哲学堂公園)開堂式を挙行 |
1905(明治38)年5月 | 京北幼稚園の開園式を挙行 |
1906(明治39)年1月 | 哲学館大学長・京北中学校長を辞任 |
1906(明治39)年4月 | 修身教会運動のため全国巡回講演を開始 |
1911(明治44)年4月 | 第3回海外視察に出発(1912年1月帰国) |
1919(大正8)年6月 | 中国大連で講演中に倒れ逝去(訃報はAP通信で配信され、7月18日付の ニューヨークタイムズ紙に掲載) |
書籍で紹介!
表紙 | タイトル | 内容 |
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チャレンジャー 井上円了 ‐自分の運命は 自分で拓け |
出生から哲学館・東洋大学の設立、全国巡講の足跡まで井上円了の一生を通じ、円了の仕様や東洋大学の原点を呼び起こす内容になっています。 |
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井上円了 その哲学・思想 竹村牧男 著 春秋社 |
円了の教育理念が現在の東洋大学にどのように継承されているのかも考察されています。 |
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井上円了 「哲学する心」の 軌跡とこれから 講談社 編 講談社 |
哲学、教育、宗教など幅広い分野に影響を与え、日本の近代化に取り組んだ井上円了の入門書の決定版。 |
日本全国に哲学の普及を!
円了は民衆に教育の機会を設けるために、日本全国を訪れ、哲学の普及や自身が得た知見を民衆に伝えるため、亡くなるその日まで講演を行いました。その活動は、13年間5000回。この数字でいかに円了が民衆教育に精力的に取り組んでいたかがわかります。東洋大学ではこの志を継承し、社会教育への取り組みとして、全国の学校や自治体、企業や団体の希望に応じ、専任の教員等を派遣、講演を行うプログラム「講師派遣」を実施しています。
動画で紹介!
井上円了の軌跡をたどりましょう。
【東洋大学創立者】旅する哲学者 井上円了
妖怪学の第一人者
円了は「妖怪学」のパイオニアでもあり、漫画家水木しげるの著書にも紹介されるほどです。各地に残る迷信・俗信、超常現象などを「妖怪」と呼び、科学的に解明するため、調査研究を実施。収集した資料の分析と実地検証によって俗世間にはびこる「妖怪」を退治しようとしたのです。それらの研究結果は「妖怪学講義」にまとめられ、明治天皇にも奉呈されました。
井上円了記念博物館
「博物館」があることをご存じですか? 東洋大学井上円了記念博物館は、哲学館に始まる本学の歴史・伝統とともに本学が所蔵する貴重な歴史的資料を学内外に公開するため、白山キャンパス5号館に設置されています。博物館相当施設の指定を受けており、井上円了・東洋大学関係資料を中心に、さまざまな資料の収集・保存および公開を行っています。皆さまのご来館をお待ちしています!
動画で紹介!
常設展「井上円了その生涯と教育活動」展示ガイド
東洋大学井上円了博物館展示ガイド
Topic1 井上円了考案のボードゲーム「哲学飛将碁」
円了は、明治23年に将棋・囲碁・チェスなどをもとにしたボードゲーム「哲学飛将碁( てつがくとびしょうご)」を考案しました。ゲームを通じて難解な哲学やその用語が理解できるように工夫されています。
ゲーム内容
このゲームでは「唯物」と「唯心」と名付けられた駒が存在し、これらは哲学の考え方を表しています。盤面(論壇)で互いにぶつけて取り合い、相手の駒「理想」を取ったら勝ちになります。
動画で見る「哲学飛将碁」
「哲学飛将碁」を多くの方に楽しんでいただけるようにルールを解説した動画を制作しました。後編では本学将棋研究会の学生が実際にプレイしている様子を紹介。
前編:哲学飛将碁 ルール解説
後編:哲学飛将碁 面白さの検証
Topic2 創立者・井上円了と生涯を漫画化(第1話公開中)
哲学者、教育者、仏教者、妖怪博士、世界旅行者などの幅広い顔を持ち、激動の幕末から明治の時代を生きた円了のチャレンジ精神に満ちた生涯を漫画化しました。円了がどのように成長し、何を思い哲学館を開設したのか、その生き様を全7話で描きます。
漫画は、『B(ベー)~ ブラームス二十歳の旅路』等を描いた、留守key の舩渡正展氏(本学OB)、青山敬典氏に依頼。教材のみならず、子供から大人までに井上円了を伝えることを目的として、制作しましたので、ぜひ一度ご覧ください。
『マンガ円了』
『マンガ円了』は東洋大学公式Webサイトで閲覧可能です。
井上円了に関する記念日
6月 学祖祭
井上円了の命日である6月6日に東京都中野区にある蓮華寺にて、創立の原点を振り返るための学祖祭を毎年行っています。
11月 哲学堂祭
哲学の普及を願った井上円了の遺言にもとづき、11月の第1土曜日に東京都中野区の哲学堂公園で行われる一般公開されている講演会です。参加者には遺言により、甘酒、珈琲、紅茶が用意されています。