2024年4月に生命科学部、食環境科学部および大学院生命科学研究科、食環境科学研究科の学び舎となる朝霞キャンパスが開学しました。最先端の教育研究設備が揃った新生朝霞キャンパスは、それぞれの学科が連携を図り、学びを深め、「生命( いのち)と食」に関する総合的な教育研究拠点として生まれ変わりました。
2024年5月31日、新朝霞キャンパスの開設を記念し、朝霞キャンパス2号館2101教室にて記念式典を挙行しました。矢口悦子学長は「自然災害といった世界的な脅威にさらされる中でも、命と食に関わる営みが途絶えることはありません。未来を左右する鍵となる研究と、その成果をもとにした教育の展開を掲げ、地域のみなさまに支えられながら歩みを重ねてまいりたいと思います」と挨拶しました。また、福川伸次総長、安齋隆理事長による挨拶ののち、来賓として大野元裕埼玉県知事、富岡勝則朝霞市長からもそれぞれ祝辞をいただきました。そして、鳴海一成生命科学部長、佐々木和生食環境科学部長の学部紹介があり、さらに新設の食環境科学部フードデータサイエンス学科からは竹田麻里准教授が「フードデータサイエンスの魅力と可能性」をテーマに講演。比較的新しい学問領域であるフードシステム学とデータサイエンス学の2 分野を融合させた学問の魅力の一端に触れる貴重な機会となりました。
矢口悦子学長
鳴海一成生命科学部長
佐々木和生食環境科学部長
式典の様子
朝霞キャンパスは本学の学生数の増加に伴い、1977年に白山キャンパス・川越キャンパスに続いて開設しました。
都内からのアクセスも良い埼玉県朝霞の地で、2005年3月までは文・経済・経営・法・社会学部の1・2年生、同年4月からはライフデザイン学部の学生が学びました。2021年に再開発がスタートし、2024年、板倉・川越キャンパスから学部、研究科が移転。新体制となった2 学部6学科、2 研究科3専攻の学生の教育研究拠点として再始動します。
エントランスホール
正門を過ぎると大きなスロープがあり、その下のトンネルを抜けると学生食堂や大教室へつながるエントランスホールがあります。人が行き交い、活発な情報発信・交流が生まれる集いの場となっています。
3406教室(教員実験室)
ガラス張りになった数々の実験室には最新の研究設備が揃っています。開放的な環境で教員から指導を受けられる教員実験室は、授業外の時間でも実験・研究活動に取り組めるようになっています。
パブリックレーン
研究フロアの教室を一歩出たオープンスペースに設けた多機能空間。グループワーク、ディスカッション、自習、休憩など、仲間と多くの時間を過ごすことができる憩いの場です。壁面のアルファベットと数字はエリア・階を示しており、集合場所のサインとして利用できます。
2101教室
講義に適した階段式で扇状に座席が配置された大教室。後方は中庭に面しており、開閉自在の大きな窓を活用し、講義以外にもイベント・ステージなど幅広いシーンで利用可能です。
図書館
約9万冊の蔵書を有する図書館には、ハイチェアカウンターやソファー席、自習スペース、さらにオンラインミーティングにも利用できるワークスペースを設置。入口前にはカフェも併設。
学生食堂
約600人が一斉に利用できる学生食堂は、企業と協働し学生が主体となって運営。学生だけでなく一般の方の利用も可能です。学食プロジェクトチームの詳細・インタビュー記事はこちら
■生命科学科■生体医工学科 New■生物資源学科 New
「いのち」の在り方を思索する哲学と倫理を基盤に俯瞰的な視野を養い、生命科学の各領域についての深い専門知識を身につける生命科学部。さまざまな生命現象について、その原理と仕組みの解明に挑む生命科学科に加え、2 つの新学科を開設しました。
生体医工学科では、生物学・医学と工学を融合し、医療、福祉、生活の質の向上を支えるモノづくりの発展へ。医工学の融合領域での幅広い学びに、医療データサイエンス、I CT など先端技術も扱い、新たな社会の構築に取り組みます。生物資源学科では、安全で豊かな生活に欠かせない植物と微生物について学び、植物を形作る遺伝子やホルモン、極限環境微生物をはじめとした多様な環境で生育する微生物から健康医療問題や人類の持続的発展の解決策を探していきます。「いのち」と健康の分野に関わる学内連携が可能なこの朝霞キャンパスから、社会・地球規模の課題解決に貢献する人材の育成を目指します。
PICK UP 教員
生命科学部生体医工学科甲斐 洋行 准教授専門分野 材料化学、センサ工学
私の専門分野は、材料化学、センサ工学、およびマイクロ流体科学です。1 μ m( 1 mm の1000分の1 )という目に見えないサイズの材料を設計することにより、微量の液体を集めて分析するデバイスを開発しています。これらは人間の汗や咳の飛沫を採取して分析する装置などに応用できます。生体医工学は、生命科学や医学の発見を工学に応用し、また、工学を生命科学や医学の発展に役立てる学問です。基礎から応用までがひとつにつながっていて、今後の産業的な広がりも期待できる将来性のある分野だと考えています。生体医工学科には、生物、化学、物理、機械工学などの幅広い分野を学び、それらを多岐にわたって応用できる環境が整っています。
朝霞キャンパスには最新の設備がコンパクトにまとまっている上に、たくさんのオープンスペースが用意されています。風通しが良く、自然と他学科や他学部の学生と触れ合う機会も増えるでしょうし、ここから新しいものを作っていくんだ、という空気がキャンパスのどこにいても感じられます。学生たちと接していて、オープンマインドな考えを持った人が多いことに感銘を受けました。さまざまな物事に接しながら、柔軟な発想でぜひ自分が興味を持てることを見つけてください。
生命科学部生物資源学科道久 則之 教授専門分野 農芸化学、応用微生物学
微生物の中でも「極限環境微生物」が私の専門となります。極限環境微生物とは、高温や高濃度の塩水湖、砂漠や海底など人間には住むことのできない環境でも生きることが可能な微生物です。こうした微生物は極限環境下に適応するための特殊な能力を持っており、その働きをさまざまな産業分野に活用しようと研究に取り組んでいます。例えば、有機溶剤に耐性を持つ菌やメタンを生成する菌からカーボンニュートラルな燃料の生成を試みたり、インジゴ還元菌を用いた藍染による衣服の再利用などその範囲は広がりを見せています。現代が抱える社会問題の解決に取り組む企業との共同研究も盛んになってきており、今後も発展していく学問分野といえるでしょう。
生物資源学科では主に植物と微生物を専門に扱います。植物自体は食物として利用されたり、微生物による発酵食品など我々の生活を身近で支えるものであることから、多くの可能性を秘めた魅力的な学びに出会えると思います。特に、極限環境微生物を専門とする先生が多く在籍していて、この分野を特長としている学科は日本国内でもあまり類がありません。広い学びから深い専門性まで兼ね備えたこの学科で、ぜひ有意義に研究に打ち込んでください。
■食環境科学科■フードデータサイエンス学科 New■健康栄養学科
「食」に関わるあらゆる分野を網羅的にカバーし、総合的な学びと研究を展開する食環境科学部。食環境科学科では食をとりまく多様な分野でリーダーシップを発揮し、専門知識を持って次世代の食を創造する能力を身につけます。健康栄養学科では、管理栄養士としての能力と社会における実践力、自然科学と人文科学分野の基礎的知識を養います。
新設のフードデータサイエンス学科では、フードシステム学とデータサイエンスとの文理融合の学びを展開。データの力で食物の生産、物流、付加価値の創出、安定供給を支え、食の未来を創造するフードデータサイエンティストを育成します。そのためにも食の歴史や制度、法律、文化に関する専門知識、さらに多種多様なデータの分析・活用スキルを4年間で習得。食品の安全と安心、食や栄養に関する情報や行政の仕組み、機能と栄養の関わりを学び、実社会で役立つ実践力を獲得し、食や栄養についての多様な世界的課題の解決に取り組んでいきます。
食環境科学部フードデータサイエンス学科竹田 麻里 准教授専門分野 農業・資源経済学
私は農業・資源経済学を専門としています。食料や農業、そしてそれらに関わる資源を経済学の視点から扱う中で、特に水資源を対象に、人々が公平かつ持続的に水を利用するために必要な社会の仕組みの特徴をデータ分析で明らかにしてきました。データサイエンスというさまざまな分野で汎用性の高い学問と、生産から流通、消費まで食に関わるすべてのシステムを学べることがこの学科の魅力です。食材が私たちの目の前に届くまでにはどのような人やモノが関わり、どういった社会問題を抱えているのか。食材がどんな栄養を持っているかを学ぶだけではなく、時に農地や水路といった資源やインフラ管理の未来を考えることや、数百年前の人々が資源を活用するためにどのように自然を観察し、組織やルールを作ってきたかなど歴史を遡ることにもつながります。人類が存在する限り、「食」の問題は存在するでしょう。だからこそ、多岐にわたる知識や広い視野を身につけてほしいと思います。
将来的にはAR技術を活用した模擬店舗での食品選択行動の分析やフィールドワークなど実践的な学びを深めるプログラムも充実していく予定です。データという数値と生身の人間社会との相互作用にある魅力をぜひ知ってください。