About Toyo University ありがとう板倉キャンパス

ありがとう板倉キャンパス

自然環境の豊かな板倉の地で地域と共に歩んだ27年間の歴史に幕を閉じます。
1990年、群馬県板倉町が緑・学・住・遊の調和をテーマに「板倉ニュータウン計画」を発足。ニュータウン計画による大学招致と当時の本学キャンパス狭小化解消、新学部の校地などを目的に、1997年に開学したのが板倉キャンパスです。
開学以降も新校舎建設、新学部設置など発展を遂げてきましたが、2024年4月、生命科学部、食環境科学部と関連大学院を再編のうえ朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)に移転し、板倉キャンパスは27年間の歴史に幕を閉じます。朝霞キャンパスは再整備され、「命と食が輝くスマートキャンパス」として生まれ変わります。

空からみる板倉キャンパス

上:2023年 下左:1997年 下中央:2004年 下右:2010年

板倉キャンパスのあゆみ

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ありがとう板倉キャンパス イベントレポート

11月4日、キャンパスの歴史を振り返りながら地元地域住民の皆様に感謝の意をお伝えするとともに、卒業生と教員の旧交を温めるイベント「ありがとう板倉キャンパス」を開催しました。

サイエンスカフェ
地元地域住民の皆様に、お茶や軽食と一緒に最新のサイエンスを楽しく聞いていただくビギナー向け講演会「サイエンスカフェ」を開催。食環境科学部の下島優香子准教授による「食中毒を引き起こす様々な細菌とその予防」というテーマで、普段目にすることのない食中毒細菌の世界とその予防法について、日常生活での例を交えて分かりやすく講演を行い100名を超える参加者で賑わいました。

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シニア向け運動教室
食環境科学部の高橋珠実准教授の指導のもと、地域のシニア層を対象にさまざまな運動を通して「運動のおもしろさ」を体験する運動教室を実施。約20名の参加者とウォーキングやラダーを使った運動、筋力トレーニングなどをおこない、運動継続につながるヒントを頭と体で楽しく考える時間となりました。

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ちびっこサッカー

昨年度に全日本大学女子サッカー選手権(インカレ)で日本一に輝いた体育会サッカー部(女子部)の協力で、地元の小学生を対象としたサッカー教室を開催しました。当日は過ごしやすい気候の中、サッカーボールに触れ合うことを目的にドリブルやパスを中心に行い、サッカーの魅力を体験する貴重な機会となりました。

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ホームカミングデー

ホームカミングデーでは卒業生や退職教員をお招きし、教員と卒業生が旧交を温めるグリーティングの時間を設け、約250名の卒業生やそのご家族にご参加いただきました。同日に実施されていた哲学堂祭の会場である哲学堂公園とオンラインでつなぎ、矢口悦子学長の挨拶から始まり、設立当初を知る先生方からのご挨拶、当時のキャンパスの様子や学生との感慨深いエピソードが披露されると会場は温かな笑い声に包まれました。
また同日には、健康栄養学科の同窓会として「健栄会」を発足することを記念しイベントを開催。「板倉の想い出から今後の健康栄養学科のあり方」をテーマに井上広子教授がファシリテーターを務め、4名の卒業生・修了生がパネリストとして参加し、ディスカッションを行いました。

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左:哲学堂祭会場からオンラインで挨拶する矢口悦子学長 右上:福森文康食環境科学部長 右下:懐かしの写真や卒業論文集

板倉キャンパスを振りかえる 特別座談会

1997年の開設当初から教壇に立ってきた4名の先生方に、27年にわたる板倉キャンパスの歴史・想い出を振り返っていただきました。

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左から、 伊藤政博 生命科学部教授、 藤村真 生命科学部教授、 一石昭彦 生命科学部教授、 高品知典 生命科学部准教授

新しい何かが始まるという期待感。

―1997年に赴任された当初の板倉キャンパスの印象はいかがでしたか?

伊東:当時はキャンパスのまわりには何もなかったんです。駅から板倉キャンパスの校舎が直接見えてしまうほどでした。
一石:正門から入った石畳も最初は飛び石のようにぽつぽつとあるだけで、桜の木もなかったですね。
高品:それが今は春になれば桜の木を愛でることができ、近隣の住居や施設も増え、街全体も大きくなったのだから時間の流れを感じますね。
藤村:当時「生命科学部」を設置している大学は国内にほとんどありませんでしたし、開設にあたり着任される先生の半数以上が企業出身者というのも先進的でした。化学や製薬、食品、化粧品など多岐にわたるジャンルから、教育経験がほとんどない人を含めて立ち上げた学部だったんです。教授としての経験がある方々を中心にカリキュラムを作るなか、新しいことが始まるんだという期待感を持っていましたね。

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全員で一丸になって、学び舎を作り上げていった。

―学生や教職員の方々はどのような雰囲気だったのでしょうか?
藤村:当時は解析技術の進歩もあり、ヒトゲノムが解明されるなど、生命科学の分野が日に日に進歩している時期でした。そんな時代背景のなか、何の情報もない新設された学部をわざわざ選んで受験する学生たちだったので、みんな学ぶことに積極的だったと思います。
高品:そもそも他の大学では、生命科学部というコンセプトの学部が無く、薬学や医学、農学、水産学など、それぞれが独立した学部はありますが、それらを少しずつ取り込んで学際的に何でも学べる環境を作ろう、とできたのが東洋大学の生命科学部。そこにチャレンジするんだという学生の熱量は感じました。また、1期生には先輩という存在がいませんでした。頼れる人は先生と職員しかいない環境だったからこそ、何かあれば研究室に何人もが押し寄せて質問する、という距離感の近さがありましたね。
伊藤:私は大学を卒業して初めて着任し、右も左もわからない状態でした。ただ少人数だったからこそ自由度も高く、試行錯誤しながら一つひとつ積み重ねでしたね。

藤村:教員だけでなく、事務職員の方々も非常に熱心にサポートしてくれました。今考えると無茶なお願いも「何とかします」と。授業が終わると事務の方が研究室に遊びに来ることもありました。そこから始まる交流もあったり。
一石:大学周辺に飲食店もありませんでしたから。学生も授業後は毎日のように研究室に集まり、一緒にご飯を食べる日もありました。まだサークルなどもなかったので職員の人たちも気を配ってくれて。大学内にコミュニケーションを生み出そうと色々と企画してくれましたね。
藤村:今は研究室も事務も整った組織としてシステマチックに機能していますが、当時は手探りのなか、「どうにかして板倉キャンパスを良い方向に導く」という想いで、学び舎を作り上げている感覚はありましたね。その甲斐あってか、今でも1期生をはじめ多くの卒業生が連絡をくれたり会いに来てくれたりします。

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板倉から朝霞へ良い文化を継承したい。

―27年の歴史のなかで印象深く残っていることはありますか?
伊藤:大学側が高額な最新の研究設備を毎年のように導入してくれたことが、板倉キャンパスでの研究を支えてくれたと感じています。
藤村:レーザー顕微鏡やタンパク質の分析装置、分子の解析機器… 精度の高い研究装置がいくつも発表され、それらのおかげで研究が飛躍的に進んでいく様子をまざまざと見ていましたから。
伊藤:オープンキャンパスで受験生に研究施設を紹介することもありましたが、どこの大学にも引けをとらない研究施設でしたね。
高品:県内では板倉キャンパスにしかない機器もありました。設備面が充実しているからこそ、優秀な先生方が集まってくれましたし、学生にとってもレベルの高い研究テーマに触れることができた。学会・研究発表の機会創出や、研究奨励金の拡充など経済的な支援も含めて、「研究」というものをサポートしてくれた大学には感謝しなければいけないですね。
藤村:イベントでは2014年に行ったサマーキャンプはみなさん印象に残っているんじゃないでしょうか。夏休みの時期を利用して、海外の第一線で活躍されている生命科学分野の教授を招いて、河口湖の保養所で合宿を行ったんです。参加した学生たちには自ら合宿のプログラムを作成してもらいました。色々な先生方と協力して、事務の方々も多くの手続きでバックアップしてくれました。
一石:学生たちはまだまだ拙い英語で海外の先生へ説明しようと頑張っていましたね。私たちも時折フォローしながらも、達成感に満ちた学生の表情が印象に残っています。
高品:ちょうど大学全体でも「TOYO GLOBAL DIAMONDS」構想によってグローバルリーダーの育成に注力しようとするタイミングでした。
藤村:学生たちにとって、学びはもちろん、この時の経験やご縁が就職活動でも活かされたそうです。私たち研究者にとっても海外の研究者と交流し、繋がりを作ることができる有意義なイベントでした。今はこうした企画を礎にフォーマット化して、継続的に開催しています。
伊藤:そういえば運動会を開催しているキャンパスは他にはないんじゃないでしょうか(笑)
藤村:2009年度に国際地域学部が白山キャンパスへ移転した際に、やはりキャンパス内に寂しい雰囲気が流れたんです。とにかく何か全体で盛り上げるために、新入生が入ってくる春にみんなでスポーツ大会を開きましょうと。学生だけでなく私たち教職員も参加するのはなかなか珍しいかもしれません(笑)
一石:板倉キャンパスは学園祭も学生たちが主体で運営しますし、入りたいサークルがなければ先生に頼んで新設してもらうこともありました。キャンパス設立から今に至るまで「手作りで盛り上げる」文化が根付いていると感じます。大学の都心回帰は時代の潮流になりつつありますが、「人の距離感の近さ」や「主体的な行動力」といった、板倉だからこそ培うことができた文化は朝霞キャンパスに移転した後も残していきたいですね。

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新時代に適応する生命科学分野の総合拠点へ。

―朝霞キャンパスへの移転に際し、期待されていることはありますか?
伊東:情報社会における価値観の変化やChatGPTといったAI技術の登場など、教育のあり方自体も大きく変わってきました。DX やSociety5.0といったキーワードを中心に、大学生が社会から求められる知識や思考もアップデートする必要があります。そのなかで、生命科学系の学部を朝霞キャンパスに集約し、現代に対応したカリキュラムを再編することで、新しい時代に適応できる学生を育てることができるのではと期待しています。
一石:命科学分野を一箇所に集約することで、これまでにはなかった繋がりやアイデアの創造が生まれると思います。さらにキャンパスの場所が変わることで、集まる学生のキャラクターにも変化が出ることでしょう。
藤村:球温暖化やエネルギー問題など、地球規模の社会問題において生命科学の役割はこれからますます大切になっていきます。東洋大学における生命科学発展の第一期が板倉だとすれば、第二期を朝霞から発信していく未来に、全員が大きな期待をしていますね。

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副学長と2学部の学部長の鼎談は卒業生向けコンテンツ「Alumni(アルムナイ)」で公開中!
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