第36回東洋大学「現代学生百人一首」入選作品発表
第36回 東洋大学「現代学生百人一首」入選作品100首および小学生の部入選作品10首を発表(2023年1月16日)
入選おめでとうございます!!
第36回目となる今回は、65,966首の作品が寄せられました。ここに紹介する入選作品100首からは、2022年の話題や世の中の出来事、そして日常生活に対する若者たちの感性をうかがい知ることができます。作品募集のテーマである「現代学生のものの見方・生活感覚」を基準に、厳正に審査された入選作品100首を発表するとともに、小学生の部 入選作品10首も併せて紹介いたします。また、学校全体で取組み、多数の優れた作品を応募いただいた学校に贈呈する「学校特別賞」も5校選出いたしました。
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山形県 山形県立山辺高等学校
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千葉県 芝浦工業大学柏高等学校
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神奈川県 慶應義塾普通部
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京都府 京都女子中学校
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長崎県 佐世保市立日野中学校
「現代学生百人一首」へのご感想等は、東洋大学広報課(mlkoho@toyo.jp)までお寄せください。
過去の「現代学生百人一首」入選作品については過去の入選作品をご覧ください。
第36回 応募作品を振り返って
3年ぶりの「日常」
コロナ禍も3年目。マスクが必需品の生活、自身や家族の感染など、コロナ以降の生活様式が当たり前となった一方で、部活動や学校行事、地域のイベントなどが再開され、「3年ぶり」という表現が見られるなど、少しずつ元の日常を取り戻しています。
今回の応募作品には、家族や友人と過ごす“普通の”夏休みの様子がうかがえる歌、試合に向かう緊張や引退する先輩から引き継ぐ思いなど活動が再開された部活動にまつわる歌、「合唱コンクール」「文化祭」「修学旅行」など対面で開催された学校行事にまつわる歌など、オンラインとは違うリアルな体験で感じた気持ちや再び交流できる喜びを詠んだ歌が多く寄せられました。
■2022年の世相が反映された入選作品
【学校生活】
学校生活に対面での活動や行事が戻り、そこで感じた思いや情景を詠んだ歌が多く見られました。専門的な学びの場を詠んだ歌には若者ならではの感性が光る作品が見られました。
【時事・社会問題】
違いを受け入れる歌がある一方で、「多様性」という言葉で理解したつもりになって思考停止してしまうことへの危機意識を詠んだ歌もありました。ウクライナについて平和を願う気持ちを率直に詠んだ作品も多数寄せられ、実社会にむける若い世代のまなざしを感じました。
【日常生活】
若者らしい流行り言葉やSNSを使いこなす毎日。その一方でスマホからそっと離れてみる試みも。未来への選択肢に直面して、悩む若者らしい歌も寄せられました。
入選作品(作品は都道府県別に北から並んでいます)
- 冬の朝かじかみながら登校す手袋一双貸し借りしながら
- 頑張れとぽつりつぶやくその声は彼に届かず試合が終わる
- 二個上の兄と迎える成人は心の準備全然出来ない
- 三年の時経て揺れる火薬の
香 湖水にひかる花のなつかし - 十六の僕らの
翅 はひしゃげてる好きも嫌いも言えず震えて - 通学路目立たないけど地面にも毎日変わる楽しさがある
- 免許取り初心者マークの兄と行く右をむいたら父の面影
鳥海 の涼しき風にあおがれるテントの中に登山部眠る- オムレツはふわふわよりも薄皮派部活帰りの私を包む
- 流行語若者「それな」祖母「んだず」祖母が使うとめんこいばかり
- 祖父の編む葡萄の蔓で出来た籠裏地縫う祖母躍るぬい針
- 手に持った
鑷子 の冷たさ身にしみるこれから看てゆく命の尊さ - オレンジの夕日が差し込む窓際で試験に向けてにんじんを切る
- 暑い中私も食べたい芋煮会担当業務は検温だった
- じゃんがらで今亡き祖母を迎え入れ家族で囲む
新盆 の夜 - 見上げれば三段上にいるきみを「ち、よ、こ、れ、い、と」で追いぬく放課後
- インスタのQRコードでよろしくね女子高生の名刺交換
- これなあに?聞く弟の指の先ウソでしょ!それは公衆電話
- あたらしい個性が見えるコロナ禍で身につける服あわせるマスク
- 憂鬱な梅雨の激しい雨の日も前髪死守するJK強し
- 数々の「違い」に悩む私たちそれでもいつか分かり合えたら
- 幼き日百円握って通ってた駄菓子屋の戸に「閉店します」
- 弟の「ねえね、あそぼ」の一言に最後にいいよと言えたのはいつ
- 電車内マスクしてない人がいる責める気持ちを消せない自分
- わがままでめんどうくさいぼくだけど感謝を込めて風呂を洗うよ
- せりなずなごぎょうはこべら七草の一番最初は私の名前
- テレワーク会議をしている母親にご飯まだかと訴え続ける
- 角折れた古いノートを見返せば小さな自分よく頑張ったね
- 武道場かけ声響く頭脳戦一本取るぞ右足を出す
- 電車内席を譲るが断られ下車駅同じ長いふみきり
- 地区大会敗れた夜のカレーライス甘口なのに目の奥ピリリ
- 休み時間一人群れずに本を読む君の姿に目を奪われた
- 二学期の始めの頃に現れるシャワーヘッドのような向日葵
- 緊張し勝手にかかるビブラートお願い声帯落ちついていこ
- 消されゆく運命にあると知りながら往復はがきに書いた「
行 」の字 - ビニールの仕切りに波打つ面会に祖母の手のシワ幾重にも増え
- 自信作そう昨晩は思ったが今日の私が消しゴムで消す
- 言い方で伝わることは変わるから最大限の私で話す
- 「ママ」と呼び「お母さん」と言いなおすなお照れくさい十三の夏
- 母入院男4人の夏休み小言はないが明るさもなし
- ふと思う私の夢はなんだろうソーダの泡がはじけて消える
- マスク越し飽きるほど見た君の顔弁当開けばまた別の君
- 文化祭初の対面ミュージカル拍手はこんなに嬉しかったか
- 子は学科親は学校選ぼうと言い争うは三者面談
- おはようと笑って挨拶するために二段落とした変速装置
- 最近の子どもの名前読めないよ母と推測クラスの名薄
- ウクライナコロナ未来の教科書の数行分の激動の年
- 引っ越しですっからかんのあたしんちまた思い出を育んでいく
- 炎天下サッカーをして汗をかく俺らの臭いまさにカメムシ
- 分からないものを分からぬものとして楽しむ心スマホで消えた
- 「もう一回!」三〇分後はい王手父に勝てずにそっぽ向く夏
- 堂々とアイス頬張る家一人こそこそ片付け証拠隠滅
- 五時間も黙って座る日帰りの座禅もどきの修学旅行
- 気づいたらいつもスマホを触ってる催眠術に僕はかかった
- もう少し違う関係あの夜のラインに早く気付いていたら
- まじやばいガチでえぐいわそれは草スパイのような僕らの会話
- 「行ってきます」「行ってらっしゃい」それだけで私は今日もがんばれるんだ
- 塾帰り空のスクリーン茜色そっとスマホをリュックに入れる
- マスクして少し曇った声だっていいさ想いを告げられるのなら
- 十一年経っても私は帰りたい私の故郷いわきの町へ
- コロナ禍で誰かが居ない教室に慣れてく自分が何か悲しい
- 朝起きて布団投げ出し洗面所女家族の戦が始まる
- マスク時代目で感情を表現し私も一歩女優に近づく
- カマキリの卵が地上10センチ今年の冬は雪が少ない
- なぜだろうみんなと違うだけなのに間違いなんかじゃないはずなのに
- 大掃除ほこりかぶった本棚に知らない本と父の歴史と
- 淡々とありをりはべりいまそがり迫る睡魔に抗いながら
- 未来への地図がないまま歩き出す自由の苦しさ知ったこの夏
- 卒業式名前呼ばれてマイクオン自室に響く寂しげな「はい」
- シャープペン落として気づく午後十時麦茶の氷はあとかたもなく
- 背が伸びて届かなかった吊り革をやっと掴めた高一の春
- 青い空
金色 の野のウクライナ描くためには赤はいらない - 嫌なこと「多様性」だとまるめられ少し不安な私の未来
- 内定の通知書そっと見せてみた親の笑顔が忘れられない
- あなたへの敬語をだんだん外したい「はい」を「うん」へと変えてみる今日
- お父さん口きかなくてごめんなさい思春期とやらがきてしまったの
- 板隔てバーガー頬張り笑い合う今ある幸せ一口味わう
- 澄んだ空山から見える宇治川も頼通がみたあの日と同じ
- 甲子園活躍するのは男子だけ私は河原でキャッチボール
- まだ寝てる君を起こすか迷う手をまた引っこめる放課後のバス
- 隔離され一人寂しい十日間学校行きたい初めて思う
- この音に過去と未来を詰めこんで息を合わせる私とホルン
- 登下校稲を見ながら歩いたら友と感じる春夏秋冬
- つかめない深くて青い成層圏君のようだと常々思う
- はいどうぞこころひろすぎかわいすぎなんでもくれるにさいのいとこ
- ゆうこ、まほ会うたび変わる私の名孫の名前は間違えないで
- 他人には弱みを見せぬと笑う君水があふれたコップを見つめて
- 溶接をやってくうちに見えてくる理屈を超えた感覚の世界
- 初めての実習実施リモートで一人孤独に我が身を拭いた
- 蛍火をつつみこんだ手宝箱そっと開けば夏の思い出
- スタートの飛び込み台に立ったとき静まりかえる一瞬の水
- 好きな人素直に言えず推しという便利な言葉で本心隠す
- 教室の外から聞こえた君の声姿は見えずも背筋が伸びた
- 二人きり何を話すか分からない心臓だけが会話をしている
- 暮れなずむ橙色のいい眺め少し長めの親子の会話
- 耳澄まし今の世界の音を聞く平和を祈る原爆忌の日
- あの頃はルーズソックスミニスカで楽しかったと母はつぶやく
- 「始まるね」「緊張しないね」という君の手が震えてるの僕は知ってる
- 気づいたら君に目線が奪われる特等席を私にください
- マスクして買い物行くと
蔑視 されカルチャーショック不意に感じる
小学生の部入選作品
- ながれ星キラキラ光るほう石だみんながえがお私のねがい
- 木がゆれるまだ夏なのに七ぶそでおち葉が飛んでまるで飛行機
- 夜の世界読書をしたら引きこまれまだ見ぬ世界でかけめぐるぼく
- 幼くて覚えていない祖父祖母を写真では無く近くで見たい
- メロディーが流れて母は懐かしむ私も知ってる年下の男の子
- もみじの葉ふむとカサカサ音がなるもみじの道は音のじゅうたん
- いつもなら聞こえる母のおかえりがないなそうだよ入院なんだよ
- タブレットを開いてみるといつのまに国語の課題返ってきている
- おじいちゃん天国からの里帰りお酒もついで待ってるからね
- 夏の空ながるる雲の形見てどんどんうかぶ好きな食べ物
日本語学校・海外協定校で学ぶ学生の優秀作品
- すきというたったひとこと言えなくてとおりすぎてくかれのよこがお
- 日本来て母さんの夢叶えたいがまんできますがんばりますよ
- たくさんの人にやさしくしているが自分にもぜひ忘れないでね
都道府県別応募作品数(順不同)
都道府県 | 応募作品数 | 都道府県 | 応募作品数 | 都道府県 | 応募作品数 |
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北海道 | 972 | 山梨県 | 200 | 徳島県 | 431 |
青森県 | 295 | 長野県 | 515 | 香川県 | 90 |
岩手県 | 104 | 岐阜県 | 335 | 愛媛県 | 122 |
宮城県 | 522 | 静岡県 | 654 | 福岡県 | 357 |
秋田県 | 390 | 愛知県 | 1,668 | 佐賀県 | 37 |
山形県 | 934 | 三重県 | 1,180 | 長崎県 | 2,336 |
福島県 | 1,421 | 滋賀県 | 267 | 熊本県 | 326 |
茨城県 | 1,854 | 京都府 | 2,408 | 大分県 | 284 |
栃木県 | 17 | 大阪府 | 3,285 | 宮崎県 | 14 |
群馬県 | 217 | 兵庫県 | 1,816 | 鹿児島県 | 102 |
埼玉県 | 5,590 | 奈良県 | 274 | 沖縄県 | 320 |
千葉県 | 7,262 | 和歌山県 | 203 | アメリカ | 128 |
東京都 | 19,541 | 鳥取県 | 80 | イタリア | 16 |
神奈川県 | 4,251 | 島根県 | 26 | タイ | 41 |
新潟県 | 863 | 岡山県 | 476 | 中国 | 2 |
富山県 | 249 | 広島県 | 2,884 | ||
石川県 | 250 | 山口県 | 357 |
合計65,966首(小学生を含む)
入選作品を収録した冊子を制作し、希望の方に配布しています。(2023年/令和5年3月下旬配布開始予定)
冊子は無料ですが、送料をご負担(希望冊数に応じた切手をご送付)いただいております。
詳しくは、「入選作品収録冊子申し込み」ページをご覧ください。
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