SDGS TOYO-MeWプロジェクトインタビュー(中村 香子教授編)
月経の諸問題について研究するMeWプロジェクト。東洋大学においては2022年10月に白山キャンパスにおいてTOYO-MeWプロジェクトとして始まりました。それからわずか1年半、参加する学生が自ら企画し積極的な活動を行ってきたことが実を結び、この春よりプロジェクトは東洋大学全キャンパスへ広がることとなりました。
ここではプロジェクトと関わりの深い中村 香子教授へのインタビューをご紹介いたします。
※当記事は「東洋(東洋大学甫水会会報) Vol.163」よりTOYO‐MeWプロジェクトの歩み(7~10ページ)を転載したものです。
マイノリティーの視点から社会の「普通」を問いなおすことで
「『文化』は変えられる」
TOYO‐MeWプロジェクトは学生たちが踏み出した、その一歩。
所 属:国際学部国際地域学科 国際学研究科国際地域学専攻
専門分野:アフリカ地域研究/文化人類学
中村 香子教授
─まずは、中村ゼミとMeWプロジェクトの関係性について、ご紹介をお願いいたします。
中村ゼミは、「マイノリティ研究」というテーマを打ち立て、マイノリティの視点から世界を見直すことを重要視しているゼミです。その上で昨今は、ジェンダーに関する問題に興味・関心を抱いている学生がとても多いことも特徴と言えます。そんな中で、今の MeWプロジェクトへ関わるきっかけともなった出来事が、ゼミに所属していたある1人の学生から、「自身の生理に関する悩みをテーマに卒論を書きたい」という声があがったことでした。私自身はアフリカなどをフィールドに人類学や地域研究を専門にしてきましたので、日本における生理の問題というのは完全に専門外でした。しかし、その学生とともに国際共生社会研究センターの協力も得て、無償配布の実証実験と意識調査を実施することにしました。そしてその結果から、生理に関してどれほど多くの方が苦しんでいるのか、そして多くの場合、誰にも相談せずにただ耐えているという事実を目の当たりにしたのです。「この問題に、私たちにできる形でしっかりと光を当てなければならない」。その思いこそが、現在に至るまで、当ゼミが MeWプロジェクトに関わらせていただいている背景でもあります。
─MeWプロジェクトの具体的な活動内容について、改めてご紹介をお願いいたします。
生理用品の無償配布と実証実験からスタートしたこのプロジェクトですが、より多くのアイデアや新しい取り組みも生まれています。中でも興味深いと思っているのは、「月経×お笑い」のプロジェクト。生理に関するタブーや無理解、不満、もやもやなどをお笑いで解決したいという学生のアイデアから始まったものですが、プロの芸人さんをゼミにお招きして漫才のネタ作りを学び、P M S(月経前症候群)や生理休暇の取得率の低さや理由などを盛り込んだ漫才を実際に作ったり、それを豊島区で開催されているD-1グランプリに参加して披露したりと、精力的に活動しています。その他にも、SNSを活用した活動の広報・宣伝活動に力を入れているメンバーがいたり、「吸水ショーツプロジェクト」として、様々な会社から販売されている吸水ショーツを実際に使ってみて、新たな選択肢としての評価、使い捨てのナプキンと比較しながらゴミの削減への貢献度の検討をしているメンバーがいたりと、その活動内容は実に様々です。ちなみに、現在では当ゼミへの所属の有無を問わず、多くのプロジェクトメンバーたちが研究室に出入りするようになりました。学生たちとの日々のコミュニケーションを通じて、私自身も多くの学びをいただいています。きっとこれからも、学生たちからはいろいろなアイデアが湧いてくると思いますので、ぜひMeWプロジェクトのこれからを皆様にも楽しみにしていただけたらと思います。
─日頃のゼミ活動やMeWプロジェクトを通じて感じている、東洋大生の特徴や魅力について、お考えをお聞かせください。
プロジェクトメンバーに限らない話ですが、社会課題に対する「なぜ」「どうして」を、すぐに声にして発信できること、そして行動できることは、東洋大生たちに共通するとても素晴らしい素養だと改めて感じています。言い換えるなら、それは「当たり前」や「普通」と言われている事象や状況などに対して疑問を持てる“素直さ”とも言えるのではないでしょうか。この素直さこそが、難しいと思われる課題にもためらわずに向き合い行動する力であり、これからの社会を変えていく原動力になっていくはずです。この東洋大生ならではの圧倒的な魅力をもって、学生たちにはぜひ自信を持って巣立っていってほしいと願っています。
関連リンク
・「東洋(東洋大学甫水会会報) Vol.163」
・TOYO-MeWプロジェクトインタビュー(学生メンバー編)
・国際共生社会研究センター
掲載されている内容は2024年5月現在のものです。