【著作紹介】リーマン教授にインタビューする ―ゼータの起源から深リーマン予想まで
[2018年6月更新]
教員メッセージ
数学で最大の謎は「リーマン予想」と呼ばれる素数に関する命題です.それは,1859年にリーマン教授によって提唱されて以来,150年以上にわたり世界中の数学者たちの挑戦を退けてきました(私もその一人です).西暦2000年にアメリカの財団によって,リーマン予想の解決に100万ドル(約1億円)の懸賞金が掛けられた後も一切進展がなく,リーマン予想は数学最大の未解決問題として君臨しています.世界中の数学者や数学愛好家たちが「リーマン教授に会ってみたい」「リーマン教授から直接話を聞いてみたい」と思っていることでしょう.
本書は,そんな人たちのために執筆しました.これは私が1859年当時にタイムスリップし,リーマン教授に面会したインタビュー録です.
本書は三部構成です.第一部では,リーマン教授が予想を提唱された当時の状況を確認するため,19世紀以前に証明されていた定理を振り返り,教授がリーマン予想をどのように発想したのか,その経緯を聞き出しました.
第二部では,私が教授に,リーマン予想の提起後150年間における数学研究の進展を説明し,リーマン予想が数学界で最大の未解決問題とされている現状を報告しました.教授自身もご存じなかったと思われる,予想の深さと影響力を,改めて整理して解説しました.
そして第三部で,私は,現在私たちが取り組んでいる方法について,リーマン教授に意見を求めました.
結果論ですが,第一部と第二部は,過去の数学の歴史を対話形式で手短にまとめた内容となりました.本書は,単なるインタビュー録でありながら,数学の初心者にとって最適な入門書になっています.
なお,本書をフィクションと思われる方が多いかもしれませんが,対談の内容は数学的には正しいことのみからなり,本書は本格的な数学書となっています.
リーマン予想は素数に関する命題であり,数学の分野としては整数論に属します.素数や整数という研究対象は,プロの数学者ばかりでなく,一般の数学愛好家にとっても人気が高く,本書も,出版前から多くの方々から注目して頂きました.刊行から約一か月後となる2018年5月には,書店と出版社からの依頼で「トークショー&サイン会」をさせて頂きました(写真).
共演者は,数学者の黒川信重先生と,先生のお嬢さんで脚本家の黒川陽子さんです.黒川信重先生は,私よりも先にリーマン教授に会いに行った想定で,先駆者の役柄です.先生の前著に「ある日の夢」と題してそのような短い記述がありましたので,本書はそれを動機として執筆しました.
そして黒川陽子さんは受賞歴もある若手の著名な脚本家であり,私は,脚本形式の執筆をするにあたりアドバイスをお願いし,終章を書いてもらいました.
トークショーのタイトル「バックステージ・オブ・リーマン」は,編集者のアイディアです.「バックステージ」には執筆の裏話の意味と,本書が脚本形式であることから想起される演劇の舞台の意味の,二つが掛けられているそうです.
トークショーは笑いの絶えない楽しい雰囲気で,盛況のうちに幕を閉じ,終了後はサイン会を行いました.私自身は,サイン会は人生で二回目の体験でしたが,今回は握手を求めるコアなファンが多かったせいか,かなり疲れました.再び,アイドルの気持ちが少しはわかった気がしました.(笑)
なお,私のサインにリーマン予想で主要な役割を果たす「ゼータ」をもじって入れることにしました(動画参照).
小山先生のサイン
【目次】
はじめに
第一部 リーマン予想とは
序章 出逢い
第一章 ゼータの起源
第二章 リーマン教授と複素数
第三章 リーマン予想と量子化
第二部 どれくらい未解決なのか
第四章 ヒルベルトからミレニアム問題へ
第五章 苦闘の歴史
第三部 解決に向けた道
第六章 セルバーグ・ゼータ関数
第七章 絶対数学
第八章 深リーマン予想
終章 数学の地平
[著者] 小山 信也(コヤマ シンヤ)
1962年新潟県生まれ。数学者。東京大学理学部卒業。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。専門は整数論、ゼータ関数論、量子カオス。現在、東洋大学理工学部教授。著書に『素数からゼータへ、そしてカオスへ』(日本評論社)、『ABC予想入門』(共著、PHP研究所)、『ゼータへの招待』(共著、日本評論社)などがある。