“いのちと暮らし”のために奮闘する

次世代創薬モダリティ開拓のためのジペプチドバイオイソスター製造技術の構築

渕辺 耕平 理工学部 応用化学科 教授

フッ素原子を含む有機分子の多くは天然にはほとんど存在しない人工分子であり、医薬品開発を支える重要な化学材料になっている。しかし含フッ素有機化合物の合成には多くの工程を要し、エネルギー消費やコストの増大、廃棄物の増加といった課題が指摘されてきた。理工学部応用化学科の渕辺耕平教授は、フッ素を付加する(加える)従来法とは逆に、フッ素を多く含む分子から不要なフッ素原子を取り除くという発想で新しい合成法の開発に取り組んでいる。逆転の発想から生まれたフッ素化学が、医薬品や材料分野の可能性を広げていく。

取材:2026年1月

フッ素原子を含む有機分子は、医薬品をはじめ多くの化学材料に利用され、人々の健康や暮らしを支える重要な物質となっています。従来の合成では、フッ素を含まない原料にフッ素原子を付加する反応を重ねることで含フッ素有機化合物を作り出してきました。そのため多くの工程を必要とし、エネルギー消費やコストの増大、廃棄物の増加といった課題が生じやすい状況にありました。

そこで進められているのが、フッ素を多く含む原料から不要なフッ素原子を選択的に取り除きながら目的の分子を作り出す、新しい合成法です。工業的に大量生産が可能なフッ素多置換化合物を出発物質とすることで工程を短縮し、効率的で環境負荷の少ない含フッ素有機化合物の合成が可能になります。

この技術により、ペプチド医薬の構造を模倣した「ペプチドバイオイソスター」などの新しい化合物を効率よく合成する道も開かれます。医薬品開発をはじめ、電子材料やエネルギー分野への応用も期待されており、フッ素化学における新しい合成戦略として持続可能な材料づくりに貢献することが期待されています。

渕辺 耕平 Kohei Fuchibe

東洋大学 理工学部 応用化学科 教授。東京大学理学部化学科を卒業後、同大学大学院理学系研究科化学専攻博士課程を修了し、2002年3月に博士(理学)を取得。学習院大学理学部化学科助手、同助教、筑波大学大学院数理物質科学研究科化学専攻講師、同大学数理物質系化学域准教授を経て、2025年より現職。専門分野は構造有機化学、物理有機化学、生物有機化学。