根岸 良太 理工学部 電気電子情報工学科 教授

医療や食品、環境分野では、現場で物質の成分を迅速に分析する技術が求められている。しかし従来の成分分析装置は大型で、専門機関に持ち込まなければ測定できない場合が多い。理工学部電気電子情報工学科の根岸良太教授は、分子が発する微弱な光の信号から物質を識別する「ラマン分光法」に着目し、その場で成分を分析できるポータブル装置の開発に挑む。独自の高感度センサー技術によって微量物質の検出を可能にし、医療や環境、産業の現場で迅速な成分分析を実現する新しい計測基盤の確立を目指す。
取材:2026年1月
ラマン分光法は、分子が発する微弱な光の信号を捉えることで、その物質の種類や状態を識別する分析技術です。しかし分子の信号は非常に小さいため、高感度な検出には大型の分析装置や専門的な測定環境が必要とされてきました。
この課題に対し、微弱な信号を増幅する「表面増強ラマン散乱(SERS)」素子の開発が進められています。ナノメートルスケールの金属構造を精密に設計することで、分子が発する信号を効率よく増幅し、これまで検出が難しかった微量物質の分析を可能にします。さらに、ナノスケールの構造幅を精密に制御する独自技術により、高感度センシングを実現しています。
現在は、レーザー光源や分光装置、SERS素子をモジュール化し、小型で持ち運び可能なポータブル型ラマン分光装置の開発を進めています。この装置が実用化されれば、医療や環境、産業などの現場で、その場で物質の成分を迅速に分析できるようになります。専門機関に依存せず現場で成分分析が行える技術として、人々の安心・安全な暮らしを支える新しい分析基盤となることが期待されます。


東洋大学 理工学部 電気電子情報工学科 教授、理工学研究科 電気電子情報専攻 教授、工業技術研究所 研究員、バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター研究員。横浜市立大学大学院総合理学研究科修士課程・博士課程を修了し、2003年12月に博士(理学)を取得。科学技術振興機構ナノ量子導体アレープロジェクト博士研究員、理化学研究所石橋極微デバイス協力研究員、同基礎科学特別研究員、大阪大学大学院工学研究科助教を経て、2020年に東洋大学理工学部准教授として着任。2022年より現職。専門分野は薄膜・表面界面物性、複合材料、電子デバイス、半導体・光物性。