ラグビー部

対談ラグビー部監督 福永昇三×ラグビー部主将 ヴェア・タニエラ

「凡事徹底」の精神で、
日本一の高みへ。

2021年度、29年ぶりに関東大学リーグ戦1部復帰を決めたラグビー部。昨年度は、1部リーグ3位と大健闘。創部以来初となる全国大学選手権出場も果たしました。真価の問われる今季にかける想いを、福永昇三監督とヴェア・タニエラ主将に聞きました。

写真:インタビューに応じる福永監督とタニエラ選手
SHOZO FUKUNAGA X VEA TANIELA

ラグビー界を驚かせた
東洋大学の大躍進

── 昨シーズンは、大学ラグビー界の話題をさらう大活躍でしたね。

福永

まずは、素晴らしいグラウンドやジム、合宿所をはじめ、恵まれた環境でラグビーをやらせてもらっていること、そして、創部以来64年間、バトンを繋いできてくれた先輩方に、心から感謝したいと思います。
昨シーズン、大きかったのはやはり関東大学リーグ戦の開幕戦です。リーグ4連覇中の強豪・東海大学に27対24で競り勝てたことで「我々はこの舞台でやれるんだ」と確信が持てましたから。結果、5勝2敗という成績で全国大学選手権への出場も叶いました。ただ、喜びの反面、あの先へ行きたかったという悔しさも大きいです。もっともっと成長しなければと感じました。

── 監督を務めて6季目、チームがここまで強くなった要因は何でしょう。

福永

就任以来、一貫して大事にしているのが、ベーシックスキルを高めることです。複雑な練習はほぼせず「基本の動作を完璧に行う」ことを目指してトレーニングしています。例えば、タックル時の足の運び方や腰の入れ方、味方が取りやすいパスの投げ方などといった一つ一つの基本動作を反復し、身体に染み込ませます。実は、大一番になるほど単純なプレーのミスが原因で負けるもの。意識せずとも精度の高い動作ができるよう、徹底して訓練しています。

タニエラ

正確性を意識して練習することで、反則が減って良いプレーに繋がります。逆に、練習でできないことは試合で絶対にできません。楽な練習ではないですが、選手同士でも助言し合って頑張っています。

── ところで、東洋大学ラグビー部は、雰囲気がすごく明るいですよね。

福永

「知好楽遊」(物事を知っているだけの人より好む人、それより楽しむ人、それより遊んでいる人が上回る)という言葉がありますが、ラグビーは、僕らにとってまさに遊びの境地なんです。時にはオーバーワークを心配して僕が練習を止めるほどです。あとは、誰かが良いプレーをしたら「ナイス!」と声をかけるなど、互いを称えることも意識しています。前向きな言葉や笑顔、身体から発するエネルギーは大事にしていますね。

── 監督は、日頃の生活における規律を重んじていると聞きました。

福永

掃除や整理整頓などの「凡事」をやり抜く大切さを説いた『凡事徹底』(著・鍵山秀三郎)という本を毎年、新入部員に手渡しています。読後、寮の周りの掃除を自主的に始めた学生もいました。ちなみにその彼は今、日本代表でプレーしています。

タニエラ

ゴミを拾う、ボールをきれいに並べる、スリッパを揃えるなどは、一見ラグビーに関係ないようですが、行動すれば気持ちがいいし、周りにも良い影響を与えると分かってきました。監督の下でプレーするようになって自分自身がより良く変われたと思うし、ラグビーがさらに楽しくなりました。

写真:スタンドから声援を送る
写真:立正大学とのリーグ戦風景
2022年11月関東大学ラグビーリーグ戦(VS立正大学)にて
写真:早稲田大学との試合風景(ラインアウト)
写真:早稲田大学との試合風景(突破を図る)
2022年12月全国大学ラグビー選手権大会(VS早稲田大学)にて

スローガン「Mother」に
込めた熱い想いとは

── 東洋大学のラグビー部は、海外にルーツを持つ選手が多いですよね。

福永

今は、ニュージーランド、南アフリカ、フィジー、サモアなど9カ国から選手が集まっています。ルーツが多様だと、文化や価値観、楽しさも苦しさも、共有できることの幅が広がります。例えば、タニエラが持ち込んでくれた「文化」の一つが、豚の丸焼きです。

── 豚の丸焼き、ですか?

タニエラ

私の出身地のトンガで、お祝い事がある時に食べる料理です。ラグビー部の新入生歓迎会の時、豚を3匹買ってきて、炭で丸焼きにしてみんなに食べてもらいました。

福永

香ばしくて皮はパリパリ、本当においしいですよ!

── 多様な選手の力を活かすには?

福永

多様性を尊重することと自由気ままにやることは違います。ですから、各々の価値観や考えを「チームのために」活かしていこうよ、という目線合わせは大切にしています。

タニエラ

そのために、グラウンドの内外でよくミーティングをして、何でも話し合うようにしていますね。

福永

これはルーツの多様性に限った話ではなく、自分のポジションの役割を理解し「チームのために」仕事を全うする。スタメンから外れても「チームのために」貢献する。そういう意識の浸透がチームの成熟に繋がっていると思っています。

── チームを率いる主将に、タニエラ選手を任命しましたね。

福永

彼は14歳で単身来日し、並々ならぬ覚悟と努力でここまで来ました。高校時代から彼を見てきましたが、試合の準備は率先してやるし、帰る前にはチームの忘れ物を確認し掃除まで済ませる、そういう男なんです。大学生になってからは、2年連続で2部リーグのベスト15、3年次は1部リーグでもベスト15に選出されました。いずれ日本代表として活躍するでしょう。実に頼もしい主将です。

タニエラ

自分は、言葉より行動で示すタイプ。総勢70名の部員は大切な “Big Family” ですから、責任をもって引っ張っていきたいと思います。

── 2023年のチームスローガンは「Mother」。個性的で驚きました。

福永

選手の親御さんと話していると、母から子に注ぐ愛情に勝るものはないと実感します。約10カ月間、お腹の中で大切に育み、その後も大変な時間とエネルギーをかけて育ててくれたわけですから。ラグビー部の年間活動日数も、休日を除くと約10カ月と10日。我々も一日も手を抜くことなくチームに愛情を注ぎ、進化していこう。そんな想いを込めています。

タニエラ

目標はもちろん「日本一」です。チーム全員で高い意識をもち、コツコツと練習を重ねていきます。

写真:練習風景

ラグビーの醍醐味を競技場で感じてほしい

── 9月にはワールドカップも開幕します。ラグビー観戦のアドバイスを。

福永

華やかなトライのシーンに目がいきがちですが、ラグビーの本質は、ディフェンスに表れるものだと思います。タックルって、恐怖心もあるし痛い。手を抜くこともできる。「自己犠牲」の精神が全員に浸透していなければ、ディフェンスシステムは機能しないわけです。特に後半ラスト10分の最もしんどい時間帯は、各チームの姿が露(あら)わになりますから、ぜひ注目して見てください。

タニエラ

ボールの行方だけでなく、周辺の選手の動きを見るようにすると、次の展開を予想できるようになってさらに面白いと思います。

── 最後に卒業生にメッセージを。

福永

昨シーズン、観客席に「秩父宮に連れてきてくれてありがとう」というボードを掲げてくださった方がいらして、心が震えました。選手の想いが観客と響き合う、ラグビーはまさに“心のスポーツ”です。「皆さんに恩返しを」という我々の想いをプレーから感じていただけたらと思います。

タニエラ

ラグビーの迫力と感動は、競技場でこそ感じていただけるものです。ぜひ応援をお願いします!

応援の前に…これだけは押さえたい!

ラグビーの超基本

ラグビーは初心者という方も、ルールを知ることで試合観戦の楽しみはぐっと広がります。まずは基本を知って応援しましょう。

  • 15人 vs 15人 でプレー
  • 試合時間は 前半40分+後半40分
  • パスは後ろだけOK
  • ボールの前進は持って進むかキックで
  • 相手の前進はタックルで阻止
  • 主な得点方法
    トライは5点 ゴールキックは2点

公益財団法人日本ラグビーフットボール協会(JRFU)
公式サイト↓

ラグビーを知る・楽しむ ビギナーズガイド
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2022年度のチーム戦績

全国大学ラグビーフットボール選手権大会

VS 早稲田大学
19-34 ●

関東大学ラグビーリーグ戦

VS 東海大学
27-24 ○
VS 関東学院大学
38-31 ○
VS 大東文化大学
26-27 ●
VS 日本大学
33-32 ○
VS 流通経済大学
29-31 ●
VS 法政大学
26-22 ○
VS 立正大学
34-21 ○

関東大学ジュニア選手権大会

VS 立正大学
29-31 ●
VS 関東学院大学
61-33 ○
VS 中央大学
33-22 ○
VS 大東文化大学
35-28 ○

関東大学春季交流大会

VS 立正大学
29-22 ○
VS 青山学院大学
45-24 ○
VS 成蹊大学
73-10 ○
VS 立教大学
66-28 ○
VS 中央大学
38-13 ○
写真:グランドで微笑む福永監督とタニエラ選手
福永昇三
法学部経営法学科 1999年卒業
総合情報学研究科総合情報学専攻
博士前期課程 2022年修了
1999年から2009年まで三洋電機ワイルドナイツ(現・埼玉パナソニックワイルドナイツ)所属。2008年と2009年に日本一を達成。2018年度から現職。
ヴェア・タニエラ
総合情報学部総合情報学科4年
トンガ出身。14歳で来日し、目黒学院中学校・高等学校を経て、東洋大学へ進学。ポジションはフランカー(FL)、No.8。184cm、125kg。