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余田 真也

〈新入生へのメッセージ〉

1)自主学習を心がけてみよう

英語に限らず外国語の習得には時間がかかります。しかし、かける時間だけ習熟度は高まります。ただし母語ではない言語の運用力は、読解力のレベルまでしか伸びませんから、読解力の強化を意識して、英語の自主学習をこつこつ続けてみましょう。さらに英語だけで考え、表現する習慣を身につければ、アウトプットの技量も向上します。留学はもっとも刺激的で効果的な英語習得の機会ですが、インターネット経由で手軽に英語学習を進め、英語話者と交流することも可能です。目的にあわせて大学の授業を活用し、試行を重ねながら学習を継続できればしめたものです。ひとたび英語に習熟すれば、他の外国語にも関心が広がり、母語への関心も深まるはずです。世界の言語と文化はつながっています。

 

2)母語の外に出てみよう

英語は世界の多くの国や地域で通用する言語です。英語ほど広範囲に使用されている国際語は他にありませんし、それは英語学習の誘因のひとつでもあるでしょう。ですから、なるべく若いうちに母語の通じない場所に出かけて、自分の英語力だけを頼りに渡り歩いてみることをお勧めします。母語の世界を離れている間は不安かもしれませんが、能動的に旅を完遂する喜びの方がはるかに勝ります。一人きりの心細さと解放感を味わいながら、なじみのない習慣や光景に驚かされたり、逆に意外な共通点を発見したり。そんな非日常の体験こそ、母語を離れる旅の醍醐味です。その体験は自信になりますし、言語習得への意欲も増大するはずです。

 

3)文学で旅をしてみよう

文学はしばしば旅に喩えられます。起伏に富んだ物語、入り組んだ構造、味わい深い文体といった文芸作品の特徴は、移動の多い盛り沢山の旅程や、旅の途上で頻発する想定外の事態や、旅先で五感を刺激する気候や食物や人情といった旅の特徴に置き換えることができます。特に外国文学を読むことは、上記の「母語の外に出る旅」の感覚とよく似ています。異文化に生きる著者の言葉で紡がれた世界は、なじみのない外国のような世界です。予期せぬ事件に巻き込まれたり、時空を越える冒険をしたり、印象的な人物と出会ったり、魅力的な思考に遭遇したりするでしょう。じわじわと感情を揺さぶられて自分を見つめ直す機会にもなるでしょう。未知の場所へと分け入る趣に満ちた外国文学を通じて、ぜひ異文化の片鱗に触れてほしい。そうした経験の蓄積は、心豊かに生きる糧にもなるはずです。

 

〈自己紹介コラム〉

専門分野:アメリカ文学、先住民文学

研究業績:単著『アメリカ・インディアン・文学地図─赤と白と黒の遠近法』(彩流社、2012年)、共著(分担執筆)『英語圏文学─国家、文化、記憶をめぐるフォーラム』(人文書院、2002年)共著(項目執筆)『アメリカ先住民を知るための62章』(明石書店、2016年)、共著(分担執筆)『衣装が語るアメリカ文学』(金星堂、2017年)、共著(分担執筆)『〈法〉と〈生〉から見るアメリカ文学』(悠書館、2017年)他。

研究テーマ:北米の文学や映画における先住民表象、先住民文学の部族性と普遍性の関係

 

〈関連サイト〉

研究者総覧(researchmap):https://researchmap.jp/20277750

動画で見る「Web体験授業」:https://www.toyo.ac.jp/nyushi/column/video-lecture/20181212_01.html

 

〈新入生のための推薦書〉

書名:『エクソフォニー─母語の外へでる旅』

著者:多和田葉子

出版社:岩波書店

推薦理由:日本語とドイツ語で執筆し、その両方の世界で高い評価を受けている作家によるエッセイ集です。ドイツ語圏に生活の本拠をおき、世界中を旅しながら旺盛な執筆を続けている著者の作品は、言語表現への飽くなき探求心に満ちていますが、彼女の目標はドイツ人のように流暢なドイツ語を書いたり、日本語のネイティヴとして正当な美しい日本語で書いたりすることではありません。母語の外への旅を綴った本書では、むしろ「訛りや違和感のある言葉」や「言語遊戯」こそが言語表現を刷新し、文学を面白くすると主張しています。

 

書名:『我的日本語』

著者:リービ英雄

出版社:筑摩書房

推薦理由:母語は英語ながら日本語で創作する著者が、自らの体験に照らして日本語の本質をさぐる評論集です。著者はアメリカに生まれ、幼少年期を台湾や香港で過ごし、高校卒業後に日本語を学び始め、やがて日本文学の研究者となり、アメリカの名門大学で教壇に立ち、『万葉集』の翻訳では全米図書賞の栄誉を勝ち得ました。しかし40歳を前に大学での終身職を捨てて、日本に移住して日本語で書く作家になり、以後、中国への往還を繰り返しながら、世界のなかの日本の状況を書いています。同じ著者の『英語で読む万葉集』(岩波新書)は、日本の古典を英語でも学べてお得です。