About Toyo University 【特集】2022.7Alumni Report(大相撲東関脇 若隆景渥さん)

Alumni Report

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大相撲 東関脇(荒汐部屋)

若隆景 渥 わかたかかげ あつし

Profile

2017年、法学部企業法学科卒業。福島県出身で相撲一家に育つ。本学相撲部4年時には副主将を務め、全国学生相撲選手権大会(インカレ)で団体戦で優勝、個人戦で準優勝。卒業後は荒汐部屋へ入門。同年の平成二十九年三月場所にて三段目100枚目格付出で初土俵を踏む。東関脇へ昇進した令和四年三月場所にて、熾烈な優勝争いを制し初優勝を果たした。

相撲一家の家庭に生まれ、自然とその道 へ

物心がついた頃には、当たり前のように相撲が身近なものとしてありました。祖父も父も力士であり、地元・福島県で父が相撲教室を開いて指導を始めたことをきっかけに、私も自然と相撲を教わるようになりました。小学生対抗のわんぱく相撲全国大会に出場できる小学 4年生になると、全国大会が開かれる両国国技館へ行くことを目標にして頑張っていました。全国大会に出られると前日に相撲部屋に泊まれることになっていて、それが楽しみだったのです。しかし、当時は身体 が小さくまだまだ相撲が弱かったため結局小6までの3年間、地区予選で負けてしまい出られずじまいでした。
三兄弟の末っ子として生まれ、兄二人は高校卒業後すぐに角界入り。しかし私は、高校卒業後に角界で戦う自分の姿を想像することはできませんでした。東洋大学への進学を決めたのは、相撲部の濱野文雄監督に声をかけていただいたことがきっかけです。東洋大学の相撲部には強い選手がたくさん在籍していると聞き、一緒にやってみたいと思いました。入部したばかりの頃は、こんなにも強い人たちがいるなかで自分がレギュラーを掴めるのかという不安な気持ちにも陥りましたが、その年の11月に開催された全国学生相撲選手権大会で、東洋大学が団体戦で優勝を果たしたときの先輩方の姿がとてもかっこよくて、私も自分の力で仲間たちを優勝に導きたいという強い想いが湧いていったのです。小さい頃から食が細く体重管理が大変で、大学時代も夕食のちゃんこ鍋の時間が近づくと毎日憂鬱になるほどでした。ときには食べるノルマを自分に課すなど、とにかく身体を大きくすることに苦労しましたが、学年が上がるにつれ、徐々に身体が大きくなると技術も向上し、同時に結果を残せるようになっていきました。

大会直前の大怪我を乗り越え、角界入りを決意。

大学3年生の頃にはレギュラーになっていましたが、今度は下の世代にも実力者がたくさん入部してきます。下級生に負けないよう一層練習に励み 、結果を残す努力をし続けました。4年生になると副主将を務め、迎えた全国学生相撲選手権大会の大舞台。実はその1か月前に足首の靭帯を断裂し手術を受けました。術後 2週間でコンディションを整え、なんとか間に合わせて出場。もしかしたらこれが人生最後の試合になるかもしれない。同級生で試合に出られない仲間もいるなかで、自分が試合に出て頑張らなくては…。そうした想いを背負って戦ったこの大会、団体戦で優勝、個人戦で準優勝という結果を残すことができ、この大会の個人戦でベスト8以上の成績を残したことで、大相撲の三段目100枚目格付出※の資格を獲得しました。そして怪我を乗り越えて大きな結果を出せたことで、まだ相撲が取れるなら角界に行ってやってみようという決意が生まれました。
私は大相撲力士のなかで小柄な方ですが、身体の大きな力士に対しても正面から真っ向勝負で挑みます。下から相手を押し上げる攻めの相撲ができるのが私の強みであり、自分の相撲さえできれば勝てるという自負があります。大学時代に濱野監督から「けつを引くな。前に出ろ!」とご指導いただいた教えが今に繋がっています。一場所15日間の大相撲において、自分の相撲の形をぶれさせずに一日一日の取組をきちんと自分の相撲で取り切ることを大事にしています。「小よく大を制す」と言いますが、大相撲には体重ごとの階級はなく、小さい力士が大きい力士を負かすこともあります。そのときに浴びる拍手は格別であり、相撲の一番の魅力だと感じます。小兵と呼ばれるこの身体で相撲を取る私が、大きい力士を倒すその姿をぜひ皆さんに見ていただきたいと思います。

※学生・アマチュア時代に優秀な成績をおさめた力士の地位を優遇する制度。

「福島から大相撲の世界へ。幕内優勝を果たした若隆景関の“活躍の秘訣”に迫る」をWebメディア「LINK@TOYO」で公開しています。
https://www.toyo.ac.jp/link-toyo/sport/wakatakakage_atsushi