About Toyo University Professor’s Scoop 情報連携学部 情報連携学科 准教授 古藪 麻里子

Professor’s Scoop

 学問の領域は、広く深く日々変化しています。本学の教育・研究を担う教員の世界はどのように映るのか? 設立10年目を迎えた情報連携学部(INIAD)で、応用言語学・語用論を専門分野とし、生成AIを言語教育に活用している古藪麻里子准教授に、その取り組み内容を伺いました。

古藪 麻里子 准教授

情報連携学部 情報連携学科

古藪 麻里子 准教授

Profile

博士(言語学)。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業後、社会人生活を経て、上智大学大学院外国語学研究科博士前期課程、同言語科学研究科博士後期課程修了。幼少期をアメリカ、高校時代をイギリスで過ごした帰国子女。情報連携学部設立の2017年4月に着任し、「AI時代の英語教育」「ICTを活用した言語教育」「会話の推意」などを主な研究テーマとしている。

生成AIは英語学習を深めてくれる専属パートナー

 現在は、INIADで「生成AIを活用した英語教育」に取り組んでいます。もともとの専門は言語学で、言葉の背後にある意図や文脈を読み解く「語用論」を研究していました。その知見をベースに、最先端のテクノロジーであるAIを掛け合わせ、これからの時代に通用する「実践的な英語コミュニケーション力」の育成を目指しています。
 本学部は、設立当初から全学生に対して授業へのノートPCの持参を義務付け、課題提出や試験もPC上で行うペーパーレスの学習環境でしたが、2023年春から学部全体でChatGPTをはじめとするAIを導入したことで授業のあり方は大きく変化しました。私自身、AIは専門分野ではなく、手探りのスタートでした。しかし、導入初年度のアンケートで、AIを英語学習に使用することについて学生の90%が「有効活用できたと思う」、98%が「学習に役立った」と回答しています。今はReading & Writingを中心として、Listening & Speaking、さらにグループワークの支援にも段階的にAIを導入しており、もはや言語教育に欠かせない重要なツールになっています。

教員と生成AI の両輪で、学生一人ひとりを細かくサポート

 私が担当しているのは、主に1年次向けの必修英語です。生成AIを授業に導入するにあたり、まずはどんな手順でどのように使うかを明確にしています。例えば、日常的な英文ライティングでは、①学生自身がまずドラフトを書く、② AI にレビュー(添削)を依頼する、③AI のアドバイスを基に修正稿を書く、この3段階のプロセスを徹底。学生はこちらで用意した定型プロンプト(指示文)を使いながら、AIと対話を重ねて文章をブラッシュアップしていきます。
 その過程はすべてスクリーンショットの画像も提出してもらうため、教員側も「完成物」だけでなく、学生が「どのように思考したか」を把握できます。従来は見えにくかった「どこで悩み、どう思考を深めたか」が可視化され、一人ひとりの習熟度に合わせたフィードバックが可能になりました。教員とAIがそれぞれ異なる役割で学習を支援している状態です。
 また、学生にはAI に検索キーワードそのものを提案させることも推奨しています。自分だけでは辿り着けない視点や語彙に出会うことができるからです。大切なのは「AI があるから考えなくてよい」のではなく「AI があることで、以前より何倍も深く考えられる」という感覚を持つこと。これこそが、これからの学習では極めて重要だと考えています。

語学学習やコミュニケーションの苦手意識を変える

 英語に苦手意識を持つ学生は少なくありません。しかし、生成AIの導入がその心理的ハードルを下げているようです。学生からは「初歩的な質問や相談が気兼ねなくできる」「夜中や休日も利用できる」「一人でも学習モチベーションを維持しやすい」といった声が多く聞かれるだけでなく、「英語の授業が楽しくなった」「英語の解釈に対する考え方が変わった」といった声もあり、学習意欲や主体性が高まっていると感じます。
 また、本学部は「連携」を重視しているため、ペアワークやチームでのPBL 型の授業も多く実施しています。コミュニケーションやプレゼンが苦手な学生は事前にAIとの対話を通じて考えを深め、アイデアを整理することで、ある程度自信を持って臨めるようです。近年は画像生成AI の進化も目覚ましく、画像を共有しながら議論する場面が増え、活発なディスカッションにつながりました。
 一方で、AIとの対話を発展させられる学生と、表面的な利用に留まる学生との差も見え始めていて、後者の学生をどう引き上げ、導いていくかがこれからの教育課題です。

激変する時代。最適な環境で、変化を恐れずチャレンジしよう

 学生たちには「生成AI は一緒に走ってくれるパートナー」だと伝えています。膨大な知識を持つAIを味方につけ、自分の思考をどこまで深められるか。それが、これからの時代における学びの本質だと考えています。
 現在、社会はかつてないスピードで変化し、教育DXも急速に進んでいます。特に大学生は吸収力が最も高い時期で、そこに今の社会変革のタイミングが重なっています。大勢の仲間がいる大学は、何事にも挑戦できる最適な環境。この4年間で変化を恐れずにどんどん新しい技術に触れ、人ともAIともうまく連携できるコミュニケーション能力を身につけてほしいです。
 そのために何より大事なのは、自分の頭で考えること。本学の創立者・井上円了先生の教えである「本質に迫って深く考える」姿勢を忘れないでほしいと思います。

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