About Toyo University Alumni Report 戸塚農園・代表 戸塚 優太

Special Interview OB・OG の今
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戸塚農園・代表 
戸塚 優太 とづかゆうた

Profile

2016年、法学部企業法学科卒業。学生時代は陸上競技部に所属し、第84回日本学生陸上競技対校選手権大会の三段跳びで優勝。消防士を経て、2023年4月から専業農家に。トウモロコシ、白菜、米などを栽培し、いちご「あまりんRARE」は栽培開始からわずか3年で日本野菜ソムリエ協会主催の「第4回全国いちご選手権」で金賞を受賞した。3児の父で、農業に励む傍ら家族との時間を何より大切にしている。

戸塚農園のご紹介 [Instagram] https://www.instagram.com/tz.farm/

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 私たちの食を支える農業。しかし、日本の農業は後継者や若手就労者の不足に加え、近年は地球温暖化による高温障害や豪雨、水不足などさまざまな課題に直面しています。そうした中、埼玉県上里町にある戸塚農園の戸塚優太さんは、先人たちが育んできた土壌を大切にしながら、スマート農業を積極的に導入し、新たな農業経営に挑戦しています。消防士から農家に転身という意外なキャリアを持つ戸塚さんに、その決断の背景や農業への思いを伺いました。

祖父の美しい畑を守りたい! 消防のレスキュー隊員から専業農家へ

 見渡す限りの平野が広がり、遠くには秩父の山々も望むことができるこの場所は、私にとって「一番きれいなおじいちゃんの畑」でした。近くを利根川と神流川が流れ、肥沃な土壌に恵まれているうえ、昼夜の寒暖差が大きく、農作物の栽培に非常に適した環境です。祖父が育てる野菜は「安心安全でおいしい」と評判で、私自身も子どもの頃からトウモロコシやブロッコリー、白菜の植え付けを手伝ってきました。いずれは農業を継ぎたいという思いはありましたが、それは数十年先のことだろうと漠然と考えていました。
 東洋大学卒業後は、幼い頃から憧れていた消防士になりました。オレンジ色の制服に身を包み、人の命を守る仕事に強い魅力を感じていたからです。その仕事をわずか7 年で離れ、農業を継ぐ決断をした理由は、2022年に地域を襲った「ひょう被害」でした。収穫直前だったトウモロコシは壊滅。当時、80歳を超えていた祖父は「もう続けられない」と廃業を考えましたが、私は家業を絶やしたくないという強い思いに駆られました。当時は念願だったレスキュー隊に配属されて2 年目。仕事に大きなやりがいを感じていたので葛藤はありましたが、「祖父の畑を守りたい」という気持ちが最終的に背中を押しました。
 消防士を退職して専業農家になってからは、企業法学科で学んだマーケティングや経営の知識に加え、陸上競技部で培った体力や精神力、そして目標達成に向けて試行錯誤を重ねる姿勢が大きな力になっています。祖父の代は露地作物だけでしたが、近年は猛暑や水不足など気候変動による影響も深刻で、安定して農作物を収穫するにはそれだけに頼ることはできません。そこで、天候の影響を受けにくいビニールハウス( 以下、ハウス)栽培によるいちごづくりを新たに始めました。栽培の技術は近隣のベテラン農家の方から学び、病害虫対策などは定期的に地域の農家同士で情報交換しています。こうした支えもあって、農地は祖父の代から3倍に拡大し、6 ヘクタールを管理しています。ハウスには遮光カーテンを設置し、温度や水分量、風量、二酸化炭素濃度などをコンピュータで管理。露地圃場にはGPSによる直進アシスト機能付きトラクターも導入し、作業の効率化を進めています。

土を育て、人を育て、作物を育てる 目指すは上里町を代表する農家

 農業を継ぐにあたり、私が最も大切にしてきたのは土づくりです。祖父たちが長年かけて育んできた土壌と、そこに息づく微生物の力を守り続けたいと考えています。トウモロコシの残渣や、米づくりで生じるもみ殻・米ぬかなどを土に還元し、微生物の働きを活発化させることで豊かな土壌づくりに取り組んでいます。私にとって作物を育てることは、土を育てることでもあります。
 いちご栽培を始める際も新たな土地を借りるのではなく、祖父の畑の土を活かしたいと考え、畑の一部をハウスに転換しました。栽培しているのは、濃厚な甘みとほのかな酸味が特徴の品種「あまりん」です。初年に10棟のハウスそれぞれで水や肥料、二酸化炭素濃度などを変えて栽培方法を検証しました。その中で成果のあった方法をベースにして試行錯誤を重ね、栽培3年目の今年、「全国いちご選手権」で金賞を受賞することができました。
 私のモットーは「努力に勝る天才なし」。陸上競技に打ち込んだ大学時代、なかなか結果が出せない状況が続きましたが、4年次にようやく実を結び、三段跳びで大学日本一を達成することができました。地道な努力の積み重ねが成果につながる。そう実感できたのは、4年間の貴重な経験があったからです。
 日本の農地はアメリカなどと比べて小規模かつ分散していて、国は集約化を進めています。しかし「自分の農地は自分で守りたい」と考える農家は少なくなく、その気持ちは私もよく理解できます。だからこそ、高品質な農産物という日本ならではの価値を磨き、経営を安定化していくことが重要だと考えています。そのために、最新技術を取り入れるほか、SNS での情報発信やオンライン販売に取り組むなど、新たな販路開拓を進めています。
 人材確保にも力を入れ、今年は正社員も採用。アルバイト、パートスタッフを合わせると10人体制になりました。農園を始めた当初は5年後の法人化を目指していましたが、前倒しして、この夏に法人化する予定です。従業員の多くは20代。仕事は決して楽ではありませんが、農業の面白さも感じているようで、みんな頑張ってくれています。そんな仲間たちと日々成長し、いつか上里町を代表する農家になりたい。多くの方においしい農作物を届け続けたいと思っています。