About Toyo University Alumni Report-柴山翔太さん(福岡女子商業高等学校 校長)

Alumni Report  Special Interview OB・OG の今

国公立大学合格者を急増させた、若き校長先生

33歳の若き校長先生が日本の高校教育に大きな変革を起こしています。柴山翔太さんは、定員割れを起こしていた福岡県私立福岡女子商業高校へと赴任し、わずか1年で国公立大学の合格者を前年の0人から20人へと増やすと、翌年には30歳で校長へと就任。熱心な小論文指導に加え、生徒がプランを考える「修学旅行プロジェクト」や、制服をリニューアルする「新制服プロジェクト」など、これまでの学校教育にとらわれない改革を次々と実行しています。「挑戦を、楽しめ。」のスローガンとともに「5年で日本一の商業高校を目指す」と目標を掲げる柴山校長にお話を伺いました。

福岡女子商業高等学校校長

柴山 翔太 しばやましょうた

Profile

2013年、文学部日本文学文化学科卒業。北海道出身。小論文指導で有名な神戸星城高校にて指導法を学ぶなど、国語科教諭として複数の私立高校を経て、福岡女子商業高等学校へ。赴任1年目で、進学指導・小論文教育により国公立大の合格者をゼロから20人に増やし、30歳で校長に抜擢される。著書『きみが校長をやればいい 1年で国公立大合格者を0人→ 20人にした定員割れ私立女子商業高校の挑戦』( 2023年6月刊行)

教師の概念が覆った瞬間。

東洋大学での学生時代は教職課程を取りながら、サークル活動を楽しんだり全国に旅行へ出かけていたりしていました。実は高校まで野球をやっていて、将来は野球部の監督になりたいと思って、教職を目指していました。

しかし、私が3校目に赴任した札幌新陽高校で荒井優※校長に出会ったことにより、私の教師の概念が覆りました。やんちゃな生徒も多い学校だったのですが、荒井校長はその子たちの“本当にやりたいこと” を聞き出し、その道の専門家やプロの方を呼んで、生徒と話す機会などを設け、やりたいことに向き合わせることで問題行動が少なくなったんです。すごくシンプルだけど、今までの学校では考えられないアプローチでした。また私たち教師にも「挑戦する学校は大人たちがその空気感を作るんだからね」と常に挑戦することを求めており、今まで「部活動の指導のために教師の仕事は平均的にできれば…」と心のどこかで思っていた自分自身を省みてとても反省しました。ただそれ以上に、子どもたちがひとつでもできることが増えたり、きっかけを掴めたりということが一番大切だと気づいた瞬間でもあります。そこからは、自分自身もさらに挑戦しなければという思いのもと、小論文指導で有名な神戸星城高校で指導法を身につけ、福岡女子商業高校へ赴任しました。

当時の本校は、入学希望者は定員の半分にも満たず、「高校はここしか行けないって言われたから」と自ら口にする自己肯定感が低い子どもたちがほとんどでした。そのため小論文で国公立を目指そうと告げた時も、ほかの教師や生徒は半信半疑だったと思います。それでも、各々の「やりたい」を胸に一生懸命に取り組んでくれた生徒の頑張りで、初年度から20名が合格する快挙。信じて行動することで私たちでも合格できた、そんな生徒たちの成功体験により学校全体の雰囲気が一変し、今の校風を作りあげるきっかけになりました。

そんな矢先に、改革に熱心だった前校長が退任することになりました。「この流れが止まるかもしれない」と思い、理事長に前校長の継続を何時間も直訴していると「君が校長をやればいい」との言葉が。まさかという思いでしたが、私を信じ果敢に挑んだ生徒の顔を思い浮かべると断る訳にはいかず校長を引き受けました。引き受けた当初は、何をすればいいか迷っていましたが、「何をやったら正解」というのはないと気づき、現在は校長として学校全体の運営や、生徒たちが挑戦しやすい環境づくりに取り組みながら、今でも教壇に立ち、小論文指導も続けています。

高校生だから、本当にやりたいことに挑戦する。

今後、学校教育は大きく変わっていくかと思います。勉強するだけならタブレットを使って自宅で学ぶ方が効率的かもしれません。そんな時代に何のために学校に通うのか。それはひとりでは勇気がいることに、仲間を見つけて挑戦することだと思っています。思いもしない出会いやきっかけが至るところに転がっていて、それに気づいて挑戦することを肯定し、応援してくれる仲間や教師が集まっている場所が学校の役割だと考えています。また、高校時代に頑張ったことを聞かれ、部活や勉強しか出てこない環境に課題感を感じているので、それを変えていきたいです。

福岡女子商業高校では、何かアイデアがあれば声を上げることで、学年問わず人が集まり、そこに担任や授業を極力持たないコミュニケーションセンターという部署の先生方がサポートします。さらに外部の企業とも連携しながら、1つのプロジェクトを成し遂げていく体制と雰囲気があります。実際に修学旅行のプラン作成や、新しい制服の制作など、生徒発案のプロジェクトが形となっていて、生徒自身も「自分にこんなことができるんだ」と新たな自分を知るきっかけになっています。こうした生徒が心からやってみたいと思ったことに本気で取り組んだ経験こそが、将来生きていくための力になるのではないでしょうか。

赴任した当初「福岡女子商業に通うことが恥ずかしい」と生徒たちはよく口にしていました。それを絶対に覆すことを原動力に「5年で日本一の商業高校にする」と目標を立て、今では全国の高校から取り組みを参考にしたいと声をかけてもらえるようになりました。さまざまな価値観が生まれる現代において、校長に対する世間の価値観を覆し、私のような校長がいてもおかしくない、当たり前のような存在になってほしい。そんな変化を起こしていきたいです。

学生の皆さんには、「何がどうなるか分からない」というのを伝えたいです。大学時代の私に、「日本最年少の校長をやるよ」と言われても信じなかったと思います。取り返しのつかない失敗はそうないと思うので、在学中にさまざまなことに挑戦してほしいです。

※荒井優:元ソフトバンク株式会社 社長室勤務。孫正義氏の側近を務めたのち、札幌新陽高校校長、佐賀県東明館学園理事長を歴任。現在は立憲民主党所属の衆議院議員。

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“日本一若い商業高校長” 柴山翔太さんが伝えたい、挑戦することの大切さと子どもがやる気になる秘訣とは?」をWebメディア「LINK@TOYO」で公開しています。


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