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持続可能な社会の担い手を育てるために教育現場の自発的な活動をサポート

次世代を担う人材を育てる教育は、持続可能性を謳うSDGsにおいて特別な意味を持つテーマだと言えます。
人間開発に関する公共政策の評価を専門とする社会学部社会学科の米原あき教授に、神奈川県の小学校で行った調査研究プロジェクトについてお話を伺いました。

次世代を担う人材を育てる教育は、持続可能性を謳うSDGsにおいて特別な意味を持つテーマだと言えます。
人間開発に関する公共政策の評価を専門とする社会学部社会学科の米原あき教授に、神奈川県の小学校で行った調査研究プロジェクトについてお話を伺いました。

01

現場が感じる価値を尊重した評価を

人間開発や公共政策に関心を持つようになったきっかけを教えてください。
学部時代に、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者アマルティア・センの書籍に出合って衝撃を受けました。一般的に、開発は経済的な豊かさのためだと受け止められていますが、センは「人間を経済発展の手段にしてはならない」と説きます。これを哲学や社会学ではなく、経済学の専門家が主張したことにも感動し、人間開発論に関心を持ちました。現在は教育政策や福祉政策なども含めた人間開発における公共政策の評価に取り組んでいます。
公共政策の評価とは、どういったことを行うのでしょうか。
政府の事業仕分けで行っているような、実施実績や目標達成度の検証も評価の1つです。しかし、英単語の評価「Evaluation」は「Extract value(価値を引き出すこと)」が原義。つまり、評価をしなければ見出せなかった価値を引き出し、可視化・意識化してひとと共有することも目的としているのです。
税金を投じる公共政策の評価には管理としての厳しさも必要ですが、達成度が低いものを切り捨てるだけだと、最初から無難な施策を選んだり、都合が悪い結果を隠したりして現場が良くなりません。大切なことは評価を未来に生かすことですから、現場で感じる価値を尊重し、それが評価の仕組みに反映されるようにする必要があります。そういった観点から、最近では過程も含めて評価する「プログラム評価」の導入事例が増えています。

02

持続可能な社会の担い手を育むために

横浜市立みなとみらい本町小学校ではプログラム評価を導入し、「SDGs 達成の担い手育成(ESD)活動」に取り組んでいるそうですね。
この学校は開校宣言に「持続可能な社会の担い手を育む」と盛り込んでいるようにESD(Education for Sustainable Development)活動に熱心です。ESDはいわゆる教科ではなく、教育に対する考え方を示す概念で、単純な数値で評価できるものではないことから、校長先生の意向でプログラム評価を導入し、その際にアドバイザーとしてお手伝いをしました。

初めに、全教職員が参加してワークショップを行い、ESDについての議論を交わして実現したい目標を設定しました。一般に学校の教育目標は管理職の教員が決めるものですが、この学校ではESD活動の一環として教職員全員参加で決めています。導入から2年が過ぎた現在もワークショップ型での話し合いをベースに、ESDに関する教育カリキュラムが創造されています。

そして、目標を達成するための具体策として、日々の授業や学校行事、保護者との関わり、地域リソースの活用などを考えると共に、先生方自らが活動の評価指標を策定しました。一連の議論はロジックモデルとしてまとめられ、プログラムの進捗確認などのマネジメントに活用されています。先生方による「手作りの学校経営」が実現しています。
現場の先生方の反応はいかがでしたか。

普段は日常業務で忙しく、同僚と教育のビジョンについて意見交換する機会はなかなかないそうで、とても良い機会になったようです。学校経営の中には、こういった自由な議論をするための「公共圏」が必要なのに、多忙な現実の中にはそれがありません。プログラム評価を導入する目的のひとつは、そういった公共圏を創出することにもあります。

また、従来型の評価は、評価する人と評価される人が別ですが、プログラム評価では評価される人が評価の仕組みを作るので、たとえネガティブなフィードバックでも納得感があり、次のアクションにつなげやすいのです。実際、先生方はうまくいかなかった施策の改善策を進んで考えたり、自分たちで勉強会を立ち上げたりしていますし、コロナ禍でも驚くほど柔軟に対応されていました。学校内に大きな目標が共有され、その達成のためには自分たちで様々な工夫を凝らして良いのだ、と理解されていれば、現場は動きやすくなるのです。

03

協働で価値を共創するSDGsの世界に必須の考え方

評価が次のアクションにつながれば、ESD活動そのものが持続可能になりますね。

評価は1つの「文化」です。例えば、現代社会では子どもが学校に通うことが当たり前です。しかし、かつてはそうではない時代もありましたよね。それと同様に、評価に対する人々の概念も根本から変わり得るのです。いまはまだ従来型の評価に慣れているので、プログラム評価のような考え方が受け入れられるには時間がかかりますが、ひとたび浸透すれば誰もが当たり前に行えるようになるでしょう。事実、SDGsが社会に広まるのと呼応するようにして、近年、プログラム評価に対するニーズが急増していますし、この分野の研究も急速に進んでいます。

廣津先生

このような評価に対する考え方は、協働して価値を共創するSDGsの世界に必要なもの。SDGsの17番は「パートナーシップで目標を達成しよう」です。この記事を読んで何かを感じて頂けたら、それだけでパートナーです。共に歩んでいきましょう。
米原 あき

社会学部社会学科 教授
専門分野:比較教育政策学、国際社会学、国際協力論、人間開発論、SDG評価、政策評価、社会統計、社会調査
研究キーワード: SDGs・人間開発、公共政策評価(プログラム評価)、社会統計・調査