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すべての子どもが公平な機会を得るために 改めて考えたいマイノリティや不平等の本質

日本には公的支援を必要としながら、十分に支援の手が届いていない人たちがいます。とりわけ外国にルーツを持つ子どもにその傾向が強く、ライフデザイン学部生活支援学科の南野奈津子教授はこの不平等が将来にわたる格差となり得るとして問題提起しています。

日本には公的支援を必要としながら、十分に支援の手が届いていない人たちがいます。とりわけ外国にルーツを持つ子どもにその傾向が強く、ライフデザイン学部生活支援学科の南野奈津子教授はこの不平等が将来にわたる格差となり得るとして問題提起しています。

01

外国にルーツを持つ家族ならではの難しさ

日本には外国にルーツを持つ人々が多く暮らしています。出身国や年齢などに傾向はありますか。

2019年の法務省のデータによれば、日本の在留外国人数は293万人で、これは総人口の約2.3%に相当します。年齢では18~64歳が84%と最も多く、18歳未満は10%、65歳以上は6%という内訳です。出身国は中国、韓国が多く、最近はベトナムからの来日が急増しており、特に外国人労働者として来日するベトナム人が急増しています。

共通する問題とはどういったことでしょうか。

みなさんも海外旅行先で、言葉や制度、文化の壁を感じたことがあると思います。日本で暮らす外国にルーツを持つ家族や子どもには、言葉・制度・文化・心・アイデンティティの「5つの壁」があるのです。これらの壁による問題は生活の不自由さに留まらず、たとえば、日本に住む義務教育相当年齢の外国籍児のうち、およそ18%に当たる約2万人が不就学となっている可能性があります。また、外国にルーツを持つ子育て家庭は、生活保護受給世帯やドメスティック・バイオレンス被害が多いなどの実態もあります。こうした不就学や貧困などの環境が子どもの将来にわたる健康や教育・就労等に悪影響を及ぼすことが懸念されています。

近年、とくに不就学児童の問題が注目されていますが、子どもの教育に関する公的支援は、親の在留資格が必ずしも要件ではありません。しかしながら、超過滞在者は出生届や就学に必要な手続きを行わない・できないこともあり、そうなると公的支援の手が届きません。超過滞在者に対しては是非がありますが、外国人労働者を搾取する日本社会の構造的な問題や外国人の就労特性に合わない支援制度などが原因として挙げられることも多く、福祉の視点から考えると社会的なハンディがある人には支援が必要であると思います。

02

マイノリティや不平等とは何かを真剣に考えてほしい

一連の問題の背景には、外国人に対する偏見もあるのではないでしょうか。

偏見とは一体何なのでしょう。
ある小学校で授業を行ったとき、私が子どもたちに伝えたのは「日本では当たり前のことでも、外国人から見ると奇異なことがたくさんある」という内容です。たとえば、日本では蕎麦は音を立ててすするのが粋だとされることもありますが、外国人の多くは音を立ててすする食べ方を不快に感じたりすることもあります。また、例えばミャンマーでは女性が生理のときは身体が冷えないように洗髪を控えるそうです。しかし、日本で思春期の子どもが何日も髪を洗わないでいると、虐待のサインに受け取られかねません。
根本先生
日本でも、「マイノリティ(少数派)はマジョリティ(多数派)に従うべき」という風潮もありますが、自分の文化が世界基準ではないことに気づいてほしいですね。その認識がないと、無理解からくる心ない言葉や行為を生み出しかねません。

無理解ゆえに相手を傷つけることもあるのですね。

外国にルーツを持つ子どもは言葉が分からないために遊びの輪に入っていけないとか、日本の笑いのツボが分からずにコミュニケーションがうまくいかないといったこともあります。自分は差別するつもりでなくても、結果的にそうなることがあると知ってほしいと思います。

03

実態を示すデータが集まりつつあるからこそできること

課題解決のために、私たち一人ひとりの意識を変えていくことと同時に、公的支援の拡充を期待したいところです。

公的支援が拡充されるためには、どこに、どんな人たちが、どのくらいいるのかといった現状把握が必要ですが、本格的な調査はまだまだこれからです。不就学児童について文部科学省が取り組みを開始したことも契機となり、他の省庁でも外国にルーツを持つ子どもの福祉課題に関する調査が始まりました。まだ調査すべきテーマは山積していますし、自治体によって支援に格差があることも課題ですが、ようやく公的支援に向けて動き出したわけですから、これを契機にさまざまな支援制度が整っていくことを期待しています。

SDGsが掲げる「不平等をなくそう」というゴールは、理屈としては誰でも理解できます。しかし、その不平等はなぜ生まれているのかを考えてほしいですね。なぜ特定の出身や人種の人だけが寿命が短かったり、経済的に困窮してしまったりするのか。生物学的な差でもなく、働いている量の差でもありません。こうした事実を、社会の構造から生じる身近な問題だと捉えてほしいと思います。

南野 奈津子

ライフデザイン学部生活支援学科生活支援学専攻 教授
専門分野:児童福祉、多文化ソーシャルワーク
研究キーワード:児童家庭福祉、多文化ソーシャルワーク、社会的養護