研究目的・概要

東洋大学福祉社会開発研究センターは、2019年度から東洋大学重点研究推進プログラムの採択を受け、「つながりがある社会を支える価値と支援システムに関する研究」を2年半にわたって展開して参りました。

社会福祉政策(Social Policy & Administration 以下、SPA)およびソーシャルワーク(Social Work 以下、SW)の研究を中核としながら、理工学(Science Engineering 以下、SE)の知見と技術を用いて、誰もがその人らしく「豊かな」生活がおくれる社会(=「つながりがある社会」)のために必要な価値と支援システムを探究することを目的としたものです。

具体的には、まず、引きこもりや孤独死、自殺などの原因とされる「社会的排除」を予防するためにどのような社会であるべきかについて、哲学、倫理学、歴史学の視点から研究するユニット(SPA-1)と、法律上・制度上の課題を研究するユニット(SPA-2)が、つながりがある社会に必要な価値や条件を検証してきました。それと同時に、社会的つながりが弱い人たちをAI技術によって可視化するユニット(SE)と、可視化された人たちに対する地域における支援システムを研究するユニット(SPA-3)・ソーシャルワークを研究するユニット(SW)が連携して、つながりがある社会に求められるシステムを探究してきました。

 

2022年度からの研究テーマは、「福祉社会における新たな価値の創発と支援システムの構築」で、これまでセンターが行ってきた研究の蓄積をさらに発展させて、「相互承認(mutual recognition)」の価値を理論的に探究し、ICTIoT、ロボット等の科学技術を活用する先駆的な社会福祉実践を検証し、福祉社会に求められる新たな支援システムを構築することを目指しています。

この目的を達成するために、センターでは、理論研究、実践研究、開発研究の3つのユニットを構成し、そしてそれぞれのユニットが、以下に示した側面から専門的知見に基づいて研究を推進し、同時に相互にフィードバックし合いながら、福祉社会に求められる新たなシステムを追究していきます。

◆「相互承認」の価値を理論的に探究する

ICTIoTやロボット等を積極的に社会福祉実践に適用し、支援システムを構築する

◆新たな価値を共有するIoT、ロボット等の科学技術を改造・開発する

本研究では、相互に認め合うことに「価値」があり、それによって、社会的につながりが弱い、バルネラブルな人たちが特別視されることなく、支えられる社会を創ることは可能であるという考え方に立脚しています。そのために、新たな福祉社会を成立させる新しい「価値」を理論的に探究し、その「価値」を具現化するための支援システムをSociety 5.0に見合うロボットの活用、ICT、IoTといったテクノロジーで加速させ、福祉実践のイノベーションを実現し、最終的には、社会的なつながりを創出する新たな支援システムを提起したいと思います。