近年、自然界から出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を発見することに力を入れています。S. cerevisiaeは、出芽酵母の代表であり、大きさが5 μmほどの小さな真核生物です(写真1)。
アルコール発酵によってグルコースからエタノールと二酸化炭素を生成します。このアルコール発酵を利用して、酒やパンなどの発酵食品やバイオ燃料であるバイオエタノールが製造されています。市販されているドライイーストもSaccharomyces cerevisiaeです。
Saccharomyces cerevisiaeの名前ですが、Saccharomycesはギリシャ語の「sacharon(砂糖)+mykes(菌)」、cerevisiaeはラテン語の「cervisia(ビール)」が由来しています(1)。
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写真1 S. cerevisiaeの電子顕微鏡写真(2021年度 三浦研) |
現在、我々の研究室では、果実や花などからS. cerevisiaeの発見に成功しています。今回は、ベリーから発見したS. cerevisiae BBS株を用いて、パン作りにチャレンジした報告です。
まず、S. cerevisiae BBS株と市販ドライイースト(比較として)をそれぞれ培養し、全粒粉を用いて元種を作りました。それを用いて一次発酵、二次発酵を行ったところ、ドライイーストと同様の膨らみが見られました。素人がパン作りにチャレンジしたので形は歪(写真2)ですが、ドライイーストを用いたものと比較しても香りと味は評判が良かったです。さらに、条件検討を重ねることで商品化を目指します。
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写真2 異なる出芽酵母を用いたパン作り |
今回、紹介した酵母以外にも、ヨーグルトやチーズ製造に用いられる乳酸菌や酢製造に用いられる酢酸菌などの発酵食品に限らず、多数の微生物が我々の生活に昔から関わってきています。
どの様な種類の微生物が発酵食品や環境浄化などに関わっているか検索してみてください。
参考文献
(1)高島昌子、真菌の命名法、Jpn. J. Med. Mycol.、2009、Vol. 50、p.263-267