第1回 東洋大学文学部書道展

2021年度 東洋大学文学部書道展(第1回)

 東洋大学では、かねてから書道教員免許取得を目指す学生たちによる作品を展示する「東洋大学書道展」を文京シビックセンターにて開催してきました。そして、今年度より、新たに、本学井上円了記念博物館において、文学部書道展を開催することとなりました。
新型コロナウィルス感染症の流行により、ざまざまな制限を受けている状況ではありますが、学生たちは研鑽を積み作品制作を続けてきました。この機会に、本学における教育研究の成果として、ぜひ学生と教員による作品をご覧いただければ幸いです。
*当館では、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、当面の間、利用者を学内関係者に限定します。 

開催期間

2021年6月15日(火)~9月30日(木)
*新型コロナウィルスの感染状況によって、開催期間を変更する場合があります。

主催

東洋大学文学部

協力

東洋大学井上円了記念博物館

会場

東洋大学井上円了記念博物館 展示室
〒112-8606 東京都文京区白山五丁目28番20号
東洋大学白山キャンパス5号館1階
TEL.03-3945-8764(博物館直通)
*電話は担当者不在等により、つながらない場合もあります。

開館時間

月曜日~金曜日 10時30分~16時00分
土曜日 臨時休館
*当面の間、平日については開館時間を短縮し、土曜日は臨時休館とします。

休館日

日曜、祝日、その他大学の定める休業日
*当面の間、土曜日は臨時休館となります。
*夏季休暇期間中、館内で工事のため、休館日を追加する場合もあります。
*詳しくは、Webページの開館カレンダーをご覧下さい。

入館料

無料


≪2021年度東洋大学文学部書道展 作品展示風景≫

展示作品をご紹介いたします。
*釈文につきましては、こちら(PDF/415KB)よりダウンロードしてご覧ください。


作品1 臨高野切第三種 / 田中 陽菜

紀貫之の書として伝わる「高野切第三種」(861年)の臨書。字形が整っており、連綿が伸びやかで美しい。墨継ぎを少なくし、
ゆるやかに書くことでしっとりとした静けさを感じられる表現を意識した。線の強弱をしっかりと付け、淡々とした印象にならないよう気をつけた。


作品2 臨十七帖 / 田中 陽菜

王羲之「十七帖」の臨書。草書の古典作品の中でも最も優れた作品である。その字には力強さと威厳があり、変化の妙や趣を感じ取れる。字間と行間を意識し、それぞれの字が生き生きとした印象になるよう意識をした。転折を特に意識して臨書を行った。


作品3 臨風信帖 / 橋場 大和

空海は遣唐使の一員として中国に渡り当時、書の最高峰と言われた王羲之をはじめ、多くの書を学んだ。この「風信帖」にも王羲之の「蘭亭序」に影響を受けた文字がみられる。今回の臨書において「唐様」の力強さを表現しながらも、「和様」の軽やかで曲線的な表現できるように意識した。特に初めの四文字「風信雲書」と終わりの二文字「雲霧」に注目していただきたい。


作品4 臨寸松庵色紙 / 橋場 大和

「三色紙」の一つに挙げられる伝紀貫之「寸松庵色紙」の成立は平安後期(11世紀後半)とされる。運筆が自在で抑揚に富み、優雅で格調が高い作品である。特に二行目で抑揚を強く表現しつつ、仮名文字のもつ線の細さ、美しさを四行目で表現した。また運筆の抑揚だけでなく、墨の濃淡にも注目し、臨書するときの呼吸について感じてもらいたい。


作品5 唐詩五言絶句 / 森田 千智

唐の詩人、李商隠の「楽遊原」より。心に苛立ちを感じ、車を走らせて高台に行くと今にも暮れようとする夕陽が美しく輝いていた。
黄昏時が好きなのでこの情景を詠んだこの詩に共感し創作した。墨の潤滑、運筆の流れなどに変化をつけることを工夫した。


作品6 臨継色紙 / 森田 千智

小野道風書「継色紙」(平安時代中期)、『古今和歌集』巻十七に収める僧正遍照の和歌一首を散らし書きにした古筆切の臨書である。かなの美しい柔らかさを出すために連綿や線の太細、文字の間隔に注意を払いながら臨書した。また、墨の濃淡や潤滑など変化をつけるようにした。


作品7 臨美人董氏墓誌銘 / 宮内 美里

「美人董氏墓誌銘」(隋・開皇17年、597)の臨書。美人という女官を務め、19歳の若さで没した董氏の墓誌銘。隋時代を代表する楷書作品の一つとして知られる逸品である。清時代の嘉慶年間末~道光年間初に陝西省より出土したが、のちに所在が不明となった。今回の臨書において、線の強弱や収筆のはらい、均一な文字のバランスを意識した。


作品8 堅忍果決 / 宮内 美里

隷書の四文字創作。「堅忍果決」とは、「強い意志で耐え忍び、いったん決めると思い切って断行すること。また、そのような性質」。強い意志が伝わるよう、力強い筆致による表現を意識した。また、かすれや隷書独特の波磔にも注目していただきたい。


作品9 臨建中告身帖 / 蓑輪 亮太

「建中告身長帖」は、唐代屈指の書人、顔真卿が72歳の時に書いた書である。72歳の書とは思えないほど、この書には強い気迫があり、顔真卿の書法である蚕頭燕尾が存分に発揮されているため、年齢による衰えを全く感じさせない。私は、この書を臨書するにあたり、顔真卿の書の迫力を最大限書き表すことに注力した。また、字の大小も現物の通りに書き表した。


作品10 臨伊予切 / 舘崎 遥

伝藤原行成『伊予切』七夕の臨書。『伊予切』とは、平安時代中期に藤原公任によって制作された和漢朗詠集を書写した粘葉装冊子本。穏やかな線で書かれているが、芯があり点画の流れもすっきりとしていて洗練された芸術性を感じる。重い印象にならない様に紙面への配置に気を付け、線の太さにメリハリをつけた。また、漢字と仮名の異なる印象を表現できる様に、漢字では一つの文字に対して、仮名は全体の流れに対して運筆の速さを意識した。


作品11 臨米芾書離騒経 / 内藤 千夏

北宋の書画家、米芾の書いた「離騒経」の臨書。字形の特徴としては左右が締まっていることと縦画が伸びやかであることで、流れるような印象がある。運筆は太さの変化が非常に特徴的であり、流れるような字形にメリハリを与えている。内容には月の車の御者である「望舒」や風神である「飛簾」、そして「鸞」や「鳳凰」といった幻想的で神秘的なものが登場する。こういった幻想的な雰囲気や壮大さを表現できるように筆遣いの軽やかさを工夫した。

 
作品12 新型コロナウイルス抗撃篆刻三顆 / 川内 佑毅(文学部日本文学文化学科講師)

猛威を振るう新型コロナウイルスの攻撃に抵抗せんと刻した篆刻三顆。「衆心成城」は、金文体を用い、強弱のアクセントを意識した朱文印。「山川異域風月同天」は、長屋王の偈頌「繍袈裟衣縁」の一節を、甲骨文を用いて刻した白文印。かつて鑑真和尚に日本に赴く決心をさせた句として知られる。日本から武漢への支援物資にこの句が併記され、日中で話題となった。「転禍為福」は、同じく甲骨文字のユニークな造形を活かした白文印。

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