生命科学部生体医工学科・小河繁彦教授の共同論文がThe American Physiological Societyの厳選論文コレクション「APSselect」に選ばれました

生命科学部生体医工学科・小河繁彦教授をはじめとして、共同で執筆した論文が、The American Physiological Societyの厳選論文コレクション「APSselect」に選ばれました。

論文

Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2025 Feb 1;328(2):R145-R153. doi: 10.1152/ajpregu.00073.2024. Epub 2024 Dec 19. The validity of carotid-femoral pulse wave velocity in the seated posture as an index of central arterial stiffness Marino Karaki 1, Narumi Kunimatsu 1, Kohei Watanabe 2, Tsubasa Tomoto 3, Marina Fukuie 3, Jun Sugawara 3, Shigehiko Ogoh 1 4 PMID: 39701592 DOI: 10.1152/ajpregu.00073.2024

小河教授のコメント

私たちの論文が American Journal of Physiology に採択され、さらに American Physiological Society (APS) の厳選論文コレクション APSselect(https://apsselect.physiology.org/)に選出されました。125年の歴史を持つ権威ある学会誌の中で選ばれたことを大変光栄に思います。

【研究内容の概要】

 現在取り組んでいるアメリカ・テキサス大学との国際共同研究のプレ実験において、動脈硬化度の測定を実施しました。その過程で、姿勢によって動脈硬化度が大きく変化することを観察しました。この知見は、臨床的に 「座り過ぎが疾患リスクに与える影響」 などの重要なメカニズムに関連する可能性がある一方、脈波伝播速度(PWV)による測定方法に起因する影響の可能性も考えられました。国際共同研究を遂行する上で、この疑問点を明確にする必要がありましたが、主要研究のテーマではなかったため、本学運動生理学研究室所属の学生であった学部4年生の唐木さん(現在 中京大学大学院 M1)とM1の國松さん(現在 博士課程進学予定)を中心に検証実験を進めてもらいました。
 結果として、姿勢による動脈硬化度の変化は 生理学的要因の影響は最小限であり、主にPWVの測定方法による影響であることが明らかになりました。この妥当性を示すために複数の動脈硬化度パラメータを比較し、American Journal of Physiologyに論文を投稿しました。しかし、最初の査読では、Major Revisionを求められました。そこで、さらなる生理パラメータの詳細な測定が必要と判断し、産業技術総合研究所の菅原先生のグループの協力を得て追加実験を行いました。その結果、測定方法の影響を明確に示すことができ、最終的に論文が受理されました。
 本研究の意義は、動脈硬化度の測定方法の限界を明らかにし、測定手法の改良に貢献する点にあります。また、臨床医学の分野においても重要な知見と認められ、今回の APSselectに選出されたと考えています。

【研究を振り返って】

 本研究は、当初単に測定の妥当性を確認することが目的でしたが、結果として重要な知見へと発展しました。この経験から、「見落としがちな疑問点でも、真剣に向き合うことで重要な研究になり得る」ことを改めて実感しました。学生の皆さんには、どんな疑問でも見落とさないで真剣に探究することが、新たな発見につながる可能性がある ことをぜひ意識して研究に取り組んでほしいと思います。

本論文は AJPのEditorial(Focus on: “The validity of Carotid-Femoral Pulse Wave Velocity in the Seated Posture as An Index of Central Arterial Stiffness”) でも紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。

Focus on: “The validity of Carotid-Femoral Pulse Wave Velocity in the Seated Posture as An Index of Central Arterial Stiffness” | American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology | American Physiological Society

関連サイト

・小河研究室ホームページ https://sites.google.com/toyo.jp/ogoh09

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