2024年9月30日(月)、白山キャンパス井上円了ホールにて、「シンポジウム〈推し活〉を学問する」を開催しました。本講演会は、2024年度より東洋大学重点研究推進プログラムとして開始した「責任ある研究・技術開発に向けた多文化的ELSIの組織化」(研究代表者:松浦和也文学部教授)の発足を記念して企画されました。
ゲスト講師にはインフルエンサーでYouTubeチャンネル「緑川ゆうch」を運営するビジュアル系バンド「0.1gの誤算」ボーカルの緑川裕宇氏にご登壇いただき、推される側から見た推し活の実態や、ご自身の経験に基づくSNSでバズる秘訣について講演いただきました。学内外から300名以上の方々が興味深く聴講されました。
前半の趣旨説明では「哲学」、「宗教学」、「社会学」の観点からどのように推し活へアプローチを試みているか紹介がありました。
〇なぜ〈推し活〉を研究対象とするのか〈津田栞里/東洋大学文学部・講師〉
〇〈推し活〉における儀礼的側面と人間性〈山口しのぶ/東洋大学文学部・教授〉
〇〈推し活〉とエスノメソドロジー〈河村裕樹/松山大学人文学部・講師〉
・今回は〈推し活〉に焦点を当て、〈推し活〉の現場がどのようなコミュニティであるのか、そしてそこに潜在する価値とは何であるのかを、〈推し〉とともに考えていく。"推しのいる生活"と評される現代社会に特徴的な共同体のあり方、そこでの価値や価値形成の仕組みを解明するための一事例として〈推し活〉を扱う。
・哲学的観点としての「遊び」、宗教学的観点としての「儀礼」、社会学的観点としての「エスノメソドロジー研究」、推し活に対する3者共通のテーマとしては、What:どんな活動で、How:どのように参加して、Why:どんな価値を得たいのか、である。
〇ゲスト 緑川裕宇氏(0.1gの誤算) ご講演
「現代的なアイコンであり、SNSを活用し、ファンを巻き込んでコンテンツ化していることからゲストに相応しい」という理由でお招きした緑川さんの講演は、自己紹介動画から始まり、Youtubeチャンネルを開設した経緯や、ファンの意見を尊重して企画を決めている点など包み隠さずお話しくださいました。質疑応答では、多数寄せられた質問の中からできる限り答えていただきました。「推されるのがつらいと思うことは?」という質問については、「ON・OFFはあるものの、どっちもインフルエンサーとして過ごしているので私生活はないけれど、つらいと思うことはない」、ファンについて尋ねると「無理をして現場に来てくれている人もいる。あんまり無理すんなよと思うことはあるし、声をかける時もある」と回答がありました。
東洋大生へ向けたメッセージでは、「就活が思うようにうまくいかなくても(ご自身の転機が30代半ばだったので)あせらなくて大丈夫だよ!」と優しい人柄が伺えるコメントが寄せられました。
終盤ではミニライブが行われ、先生方もファンと一緒にヘッドバンギング(リズムに合わせて、頭を激しく上下に振る動作)に挑戦するなど、大盛況のうちに幕を閉じました。
推し活の実情が垣間見えたところで、今後各領域での研究分析がどのように展開していくのかご期待ください。