第6回:ねこ・ネコ・猫! ~東洋大学附属図書館の人気猫~
第6回のテーマは「ねこ・ネコ・猫! ~東洋大学附属図書館の人気猫~」です。
12月は陰暦の異称で「師走」と言います。
日本大百科全書(※1)によると以下のように記載されています。
「陰暦12月の異称。語源については、この月になると、家々で師(僧)を迎えて読経などの仏事を行うため、師が東西に忙しく走り回るため、「師馳 (しは) せ月」といったのを誤ったものだとか、四時の果てる月だから「しはつ(四極)月」といったのが、「つ」と「す」の音通 (おんつう) によって「しはす」となったのだとかの説が伝わる。このことばのもつ語感が、年の暮れの人事往来の慌ただしさと一致するためか、陽暦12月の異称としても親しまれ、習慣的に用いられている。」
年末は大掃除に年賀状作成にクリスマスにお正月の準備など…多くのイベントが盛り沢山です。「師走」はそんな非常に忙しい様を表すのにピッタリとハマったのでしょうね。
そんな年末のような「非常に忙しく手不足な様子」をたとえた慣用句として「猫の手も借りたい」があります。
もちろんこれは比喩表現であり、猫は手を貸してくれない…なんて思っていましたが、調べてみると和歌山電鐵 の「たま駅長」をはじめ、「猫の図書館長」「猫の書店長」など、世間には働いている猫が沢山いるようです!
そんな立派かつ気ままに働く猫に関する図書館資料を集めてみました。どうやら猫の手は十分な戦力になりそうですし、共に働く「人」の取り組みにも注目です!
働く猫についての図書館資料
●和歌山電鐵貴志川線の終点・貴志駅(紀の川市)の三毛猫駅長「たま」
・小嶋光信著『日本一のローカル線をつくる : たま駅長に学ぶ公共交通再生』学芸出版社 , 2012年
●椋鳩十記念館・記念図書館のネコ館長「ムクニャン」(長野県下伊那郡喬木村)
・『ネコ館長ムクニャン就任5周年を迎えて』(カレントアウェアネス-E No.424 2021.11.11)
●猫ノ図書館 館長「むぎ」(岩手県奥州市立胆沢図書館)
・『小さな図書館の挑戦-「猫ノ図書館」開設とねこ館長-』(カレントアウェアネス-E No.333 2017.9.20)
※以下の新聞データベースでテーマに関する記事が閲覧できます。キーワードで検索してみてください。
ヨミダス歴史館(読売新聞):キーワード:猫ノ図書館
●猫本専門店
※以下の新聞データベースでテーマに関する記事が閲覧できます。キーワードで検索してみてください。
産経新聞データベース(産経新聞):キーワード:神保町にゃんこ堂
■海外の図書館ネコ
- ヴィッキー・マイロン著, 羽田詩津子訳『図書館ねこデューイ : 町を幸せにしたトラねこの物語』, 早川書房 , 2008年
- ジャン・ラウチ, ライザ・ロガック著, 羽田詩津子訳『図書館ねこベイカー&テイラー : 小さな町に奇跡を起こした2匹の物語』, 早川書房 , 2016年
そして調べてみると「猫」にまつわる慣用句は沢山あります。
「猫の手も借りたい」「猫にかつお節」「猫に小判」「猫の額 」「猫も杓子も」「猫をかぶる」・・・このように並べてみると、生活にいかに猫が入り込み、私たちが猫をどのように捉えていたのかがよく分かります。
それだけ生活に猫が溶け込んだのは、その「可愛さ」故なのは疑いようもない事実でしょう。
そこで「猫の可愛さ」が満載の本を集めてみました!日頃の疲れを少しでも“猫の可愛さ”で癒してください!!
可愛い猫の本
- 岩合光昭著『ネコへの恋文』日経BPマーケティング , 2016年
- 岩合光昭著『猫にまた旅 : 岩合光昭写真集』朝日新聞出版 , 2016年
- 岩合光昭著『ブルース・キャット : ネコと歌えば』筑摩書房 , 2015年
- 岩合光昭著『吾輩はねこである : 名前はベーコン』クレヴィス , 2019年
- 板東寛司写真『猫の手』ネスコ, 1998年
- 桑原奈津子文・写真『いっぴきとにひき』大福書林 , 2018年
- 土肥美帆著『北に生きる猫』河出書房新社 , 2018年
- レイチェル・ヘイル・マッケナ写真 ; 大浜千尋訳『世界の美しい猫101 = 101 of the world's cutest cats』パイインターナショナル , 2015年
- 橘蓮二著『東京ねこ景色』筑摩書房 , 2010年
- 荒木経惟著『東京猫町』平凡社, 1993年
- 武田花著『猫 : Tokyo wild cats』中央公論社 , 1996年
- 武田花著『猫・陽のあたる場所 : 武田花写真集』現代書館 , 1987年
- 『素晴らしい猫の世界』朝日出版社, 1989年
- 飯窪敏彦著『吾々は猫である』日本経済新聞出版社 , 2008年
- 酒巻洋子著『猫とフランス語』三修社 , 2016年
- 青月社編集部編集『アートになった猫たち : 今も昔もねこが好き』青月社 , 2017年
- 『キャット・ギャラリー : 猫の贈りもの』小学館 , 2003年
- ロドニー・デイル著,山内玲子訳, ミュージアム図書『ネコ・猫・ねこin Books : 大英図書館の本の中からいろいろな猫が登場します』 , 2012年
- 関まさひろ著『会えなくなっても、ずっといっしょ : 家族とペットの10の奇跡の物語』ワニ・プラス , 2019年
また東洋大学図書館には人気の「猫」がいます。それは貴重書「朧月猫の草紙(おぼろづき ねこのそうし)」です。
「朧月猫の草紙」は猫好きで有名な、小説家の「山東京山(さんとうきょうざん)」と浮世絵師「歌川国芳(うたがわくによし)」がタッグを組んで創作した物語です。
主人公は鰹節問屋の飼い猫「おこま」。
・・・とある事件から恋猫の「とら」と駆け落ちをしますが、その後運命が二転三転。波乱万丈な、人生ならぬ「猫生」を送る…という内容です。
「朧月猫の草紙」は東洋大学の貴重書の中でも人気が高く、美術館での企画展や書籍など、貸し出し依頼が多くある作品です。
この作品で猫達は、ストーリに応じて、時に擬人化、時に猫本来の姿…と分けて描かれています。それでは「朧月猫の草紙」の一部をご紹介します。
■「おこま」怒りながらの授乳
お産を終えて子猫にお乳をあげている「おこま」。そこに今まで全然顔を見せなかった恋猫の「とら」が現れ、腹を立てている場面です。
「この子に乳を飲ませてなかったら、引っ掻いてやりたいわ」…と「おこま」は思わず恨み言。
別の場面で他の猫がお乳をあげる場面と比較すると、「おこま」は目が見開いた表情で描かれており、お怒り気味に描かれていることが伺えます。
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■「おこま」、生き別れていた娘と再会
訳あって離れ離れになっていた、前の絵で「おこま」が産んだ娘猫「ふく」と「おこま」が久しぶりに再会した場面です。
この場面で「ふく」は「お母さん!懐かしいな」と言っているのですが…緊張しているのか、少し憮然とした表情で描かれているのが印象的です。
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■「おこま」の夢の中に、恋猫「とら」が出てきた!
「おこま」の夢の中に、何だかんだ愛しい恋猫「とら」が出てきた時の場面です。
例え夢の中でも、久しぶりの恋猫との再会に「おこま」の表情は幸せそう。…ただし「とら」がどんな姿で出てきたかは、リンク先でご覧ください…。
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■猫本来の姿の「おこま」
「朧月猫の草紙」では場面によって、登場人物が猫本来の姿で描かれています。
猫の姿の描写では、シンプルな線で猫特有の姿勢や表情といった、特徴を捉えた表現がされています。
いくつか紹介いたします。
これは「おこま」が縁側で蝶々を捕まえている姿です。獲物を捕らえる時の猫の体つきが、よく描かれています。
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こちらは体を洗ってもらい気持ち良さそうな表情の「おこま」です。この絵を見ていると「おこま」の「にゃあ~!」という声が聞こえてきそうですね!
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「猫の草紙」には主要な登場人物以外にも沢山の可愛らしい猫が描かれています。
自分のお気に入りの猫の絵を、貴重書アーカイブから探してみるのも、楽しいかもしれません。
「朧月猫の草紙」に関連する図書館資料
■貴重書アーカイブ
戯作「猫のさうし」
https://www.i-repository.net/il/meta_pub/G0000604kichosho
■図書
- 山東京山作 ; 歌川国芳絵 ; 金子信久訳著『おこまの大冒険 : 朧月猫の草紙』 パイインターナショナル , 2013年
- 山東京山 [著] ; 高木元編『山東京山伝奇小説集』 国書刊行会 , 2003年
- 歌川国芳 [画] ; 府中市美術館編『歌川国芳 : 21世紀の絵画力』講談社 , 2017年
- 歌川国芳[画] ; 稲垣進一, 悳俊彦著『歌川国芳 : いきものとばけもの』東京書籍 , 2018年
- 中右瑛, 稲垣進一, 悳俊彦監修『歌川国芳 : 奇想天外 : 江戸の劇画家国芳の世界』 青幻舎 , 2014年
- 藤原重雄著『史料としての猫絵』山川出版社 , 2014年
- 金子信久著『江戸かわいい動物』講談社 , 2015年
また今年の夏には、猫の腎臓病の治療薬開発を行っている東京大学のチームの資金不足により、研究停滞を報じた記事がインターネットで配信されたところ、一般の方から多くの寄付が集まったことが話題になりました。
猫は高齢になると腎臓を患うことが多いのですが、現在でも有効な治療法がありません。そのため猫の苦しみを目の当たりにしていた愛猫家たちは、猫の腎臓病の治療薬を待ち望んでいました。
この研究は、当初は人間の病気の成り立ちや難病の治療法を解明する基礎研究での発見が、猫の腎臓病の治療にも有用である可能性が判明し、そこから猫の治療薬の開発へと繋がったそうです。
多くの方から研究が支援された事実からは「愛する家族である猫に、少しでも長生きしてほしい」という「思い」が、そこから伝わってきます。
猫の長寿化に関する図書館資料
■図書
- 宮崎徹著,『猫が30歳まで生きる日 : 治せなかった病気に打ち克つタンパク質「AIM」の発見』時事通信社, 2021年
■データベース
- 『東洋経済デジタルコンテンツライブラリー(DCL) 』でテーマに関する記事がWebで閲覧できます。キーワードで検索してみてください。
キーワード:猫 AIM - 『聞蔵Ⅱビジュアル(朝日新聞)』でテーマに関する記事がWebで閲覧できます。キーワードで検索してみてください。
キーワード:猫の腎臓病
色々な猫にまつわる図書館資料を紹介してきましたが、来年は2022年で2(ニャン)が重なる「猫イヤー」とも言えます。
「キャッ!」ト歓声をあげるくらい、皆様にとって素敵な年になるように、図書館から願っています。
それではお体には気をつけて、良いお年をお迎えください。
※1:"師走", 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge-com.stri.toyo.ac.jp , (参照 2021-11-05)
掲載日:2021年12月1日