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学長メッセージ

矢口悦子

学長メッセージ 

東洋大学 学長 矢口悦子

2020(令和2)年度より学長に就任した矢口悦子です。東洋大学で最も長く学長をお務めになり、本学における飛躍的な発展を導かれた竹村牧男学長より、極めて重いバトンを受け取りました。1887(明治20)年に井上円了先生が「私立哲学館」を創立されて以来133年、今では13学部46学科、大学院15研究科を有する日本国内でも有数の総合大学となりました。先日発表された「THE世界大学ランキング日本版」では私立大学第20位との評価を得ており、とりわけ「教育充実度」においては国立大学も含めた全体で第14位との評価をいただいております。ここまで前進を続けてきた本学の発展を継承し、一層の充実を目指すというミッションが私に課せられており、その責任の大きさを感じております。

さて、いよいよ新年度に向けて準備を始めようという矢先、新型コロナウイルス感染症の流行が始まりました。それはかつてないスピードで世界すべての大陸に拡がり、ついには世界保健機関(WHO)による「パンデミック」宣言が発せられる事態に至りました。

東洋大学においても、2020年度入学式を中止するという苦渋の決断を致しました。希望に満ちた新入生を迎え、春の喜びにあふれている筈だったキャンパスの新学期は、誰も経験したことのない先の読めない不安の中でスタートすることになりました。何よりも学生たちと教職員の安全を確保し、同時に感染を社会に広げてはいけない、と細心の注意を払いながら過ごしておりますが、同時に高等教育機関として使命を全うしなければなりません。

どんな困難な状況にあっても、本学の建学の精神である「諸学の基礎は哲学にあり」の言葉をしっかりと胸に刻み、「独立自活」「知徳兼全」を大切な教育目標として掲げ続けたいと思います。そのために、物事を深く考え抜き、自文化を踏まえた自らの生き方を確立し、高い倫理性を持って堂々と誠実に生きていくことのできる学生の育成を目指して、真摯に取り組みたいと考えております。

今回の感染症は、国際化事業の展開により急増してきた留学生の受け入れや、本学からの送り出しをはじめとしたグローバル化構想の進展に、大きな影響を及ぼしています。世界全体がこれまでの自由な交流を一定期間制限しなければならないという事態は、学生たちの学習計画にも大きな影響を与えます。困難な条件下ではありますが、優れた研究成果を国内外に発信することはもちろん、ITや最先端の技術を駆使し、あるいは柔軟な発想を用いて、少しでも学習機会を補填し、多様な文化的な交流を独創的な手段で提供することが教員の大きな役割となります。

その成果は、必ず複雑な課題を克服するための知見として社会に還元されると思います。

学祖井上円了博士は、人々のために何ができるかを真摯に追求し、社会教育に生涯を捧げた実践家です。今後は、哲学館以来の伝統を保持し、学問の蓄積を世界に提供し、さらに夜間部教育(全国の夜間学生の約25%が在籍)を維持しながら、新しい社会人教育を追求する必要があります。新たなリカレント教育としては、企業や役所、法人、団体、学校などを対象としたプログラミング等IT技術の集団的な提供や、高度専門職を志向する人々を対象とした研修システムの構築などが既に着手されています。こうした方向への大学拡張(エクステンション)は、本学の理念に沿うものです。

また、生涯学習に関する講座なども多様な展開が期待できます。「人生100年」時代を生きる人々が、知の受け手から創造主体へと変貌することを支える新たな大学像の創造であり、本学にはその基盤があります。具体的な課題として、2015年より世界中で取り組まれている国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)が手掛かりになります。そこで語られている17のゴールをよく見てみると、「自他が共に認めあって当たり前に生きるための目標」ばかりであり、総合大学としての東洋大学には、多様な領域に関する研究者が揃っています。この度の新型コロナウイルス感染症の克服もそうした目標に重なります。

教職員一丸となって、東洋大学の底力を発揮し、眼の前の困難を乗り越え、日本はもちろんのこと世界の人々のために、つまり「他者のために自己を磨き」、大いに貢献する大学であり続けたいと思っています。 

2020年 4月 1日
東洋大学長 矢口 悦子