先輩からのメッセージ2024

TOYO PERSON

Q.大学院に進学しようと思ったきっかけは?
A.私は子供の頃、よく作文で居残りをさせられていました。自分の書いたものが気に入らなくて、意地でも提出したくなかったからです。時は流れ、就職活動中に自分の提出してしまった卒業論文を読み直したとき、とてつもなく読みにくい上に、内容もいまいちで、大学という場所に、やり残したことがあるように感じられました。そのことが、大学院進学を決めた最も大きな動機です。卒業論文はもう、調べが不徹底で、日本語も不自由な有様でした。こんなはずではない。もっとやれるはずだと思い、一般入試に申し込みました。なにより研究に集中できる環境が欲しかったのです。ちなみに、博士後期過程に進学した理由は、自分の修士論文の出来に納得できなかったからです。いつか納得する日がくるはずと思っております。 

Q.大学院進学について誰かに相談しましたか。また、周囲の反応はどのようでしたか。
A.両親には相談しました。好きなようにしたら良いと言われました。友人の友人から、えッ、大学出たのにまだ勉強すんの?と言われました。学部3年のころからよく入り浸っていた共同研究室の先輩たちからは、とても歓迎してもらえました。友人からのあだ名が「先生」になったのはわりと嫌でした。 

Q.東洋大学を選んだ理由や選ぶにあたって重視した点があれば教えてください。
A.楽しく幅広く中国哲学を学びたい。その想いに応えられる環境が、東洋大学大学院にあったからです。そしてその選択は間違ってはいませんでした。授業の多くがさまざまな分野の翻訳トレーニングだったのですが、たとえば、ごく短い数文字しかない漢文を翻訳するにも、広く調べ、深く考え、自分の言葉で答えを出すことが求められます。知識を蓄積するだけにとどまらない大学院の学びは、想像していたよりも遥かに奥深く、とても多様で、視野を広げるものでした。
また、私の場合は、東洋大学内での進学でしたので、入学金が免除になりました。これは非常に助かりました。 

Q.入学してから感じた本学大学院の魅力や研究室の仲間とのエピソードなどがあれば教えてください。
A.学部のころは、6号館地下の学生食堂によく足を運んだものでした。大学院に入ると、演習が8号館で行われていたこともあり、8号館の地下にある学生食堂に他の院生たちと行く機会が増えました。どちらの学食も値段以上の質があるのかと驚きました。しかも、この他にも多くの食事する場所があります。以前、道行く名も知らぬ学生が「白山キャンパスの敷地の7割は学食だろ」などと冗談を言っているのを耳にしたことがあります。さすがにそれはあまりに言い過ぎでしょうけれど、腹が減っては自分との戦いに向かえませんし、学食の充実は大きな魅力と言わざるを得ません。 

Q.研究が煮詰まったときは気分転換にどんなことをしていますか?
A.歩きます。本を読むにも、論文を書くにも、たいてい机と椅子に包まれていますので、運動不足になります。漢字は一文字が複数の意味をもつことが多く、様々な解釈が可能なことがあります。哲学の文脈だったらどうか、詩の文脈ではどうか、この時代の他の用例はないのか……。考えることは多岐に渡ります。詳しく知ろうとすれば、きりがないものです。一日中それだけをしていたら頭も心も疲れてしまいます。だから歩くのです。しかし皮肉なことに、何も考えず歩いているときに限って、いい翻訳案とか、論文のアイデアなどを思いつくので、これは気分転換になっているのですか? 

Q.執筆している論文の内容や受けている授業について教えてください。
A.私の研究テーマは、中国近世儒学思想(特に朱子学・陽明学)における「赤子の心」の研究です。

『孟子』離婁下篇に、「大人とは、その『赤子の心』を失わないものである。」という一文があります。この一文は、宋代や明代に、多くの思想家の著作や講学活動のなかで盛んに議論されました。とりわけ明代には、この「赤子の心」を人間に普遍的な孝・弟・慈の概念と非常に強く結びつけ、思想の中心に据える羅汝芳という人物もあらわれました。今の私が研究対象としている思想家です。

明という時代は、印刷技術の進歩によって読者層が庶民にも広がったことや、交通手段の発展も手伝い、儒学のなかでも多様な思想があらわれます。そうした様々な考え方を哲学資源として読みなおすことを通して、現代的な問いかけを行える余地が大いにあります。 

Q.大学院での学びを通して今後目指したい姿や将来進みたい道などがあれば教えてください。
A.今後もできる限り研究を続けていきたいと考えています。私は今もアルバイト(東洋思想文化学科T.A)として週に4日は共同研究室に足を運びますし、この大学に長いこと通っております。そうした中で、この目でみてきている先生方、先輩方のように、妥協せず己の研究と向き合いながら、自分自身で納得のできる過程と成果を求めていきたいと思っています。そういった気持ちで、博士論文提出にむけて研究を続けております。 

Q.本学大学院を目指している受験生へメッセージをお願いします。
A.大学院での学びは、ひとりきりではありません。先生や先輩と共に、また仲間と共に学ぶことで、新たな発見が何度もあるものです。留学生も多く在籍していて、互いに他文化との交流ができます。『論語』冒頭に「朋有り、遠方より来る、亦た楽しからずや。」(学而篇)とあります。遠近に限らず、ともに学問を楽しみ、切磋琢磨できることを楽しみにしております! 

 

掲載されている内容は2024年6月現在のものです。

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