Q.大学院に進学しようと思ったきっかけは?
A.きっかけは、ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」という本です。心理学に馴染みがなかった私にとって、この本の内容は非常に引き込まれるものでした。ある日の会社の飲み会で、この本の内容を同僚に熱心に語ったところ、「小難しい話」と少し引かれてしまいました。そのとき、自分の心理学への熱量と周囲の関心に大きなギャップがあることを感じ、その日に心理学の世界に進むことを決心しました。
いざ学問の世界に進もうと勉強を始めると、社会の問題と自分の生活の間に大きなギャップがあることを痛感しました。私は両親の支援を受けて大学まで通わせてもらい、経済的な不自由さをあまり感じていませんでした。大学時代の友人も同じような生活環境だったと思います。一方で、経済的に困窮している人々は経済面だけでなく心理面でも追い詰められています。その深い溝を実感するにつれ、胸が締め付けられる思いに駆られました。経済格差を中心とした研究を行うことで、このような社会問題の解決に貢献したいと強く思い、大学院で研究することを決意しました。
Q.大学院進学について誰かに相談しましたか。また、周囲の反応はどのようでしたか。
A.新入社員から7年間勤めていた会社を辞めて、一から学問の世界に飛び込もうとしていたため、両親には早い段階からその意向を伝えていました。家族の理解と支えがあったことは、決断を下す際に大きな安心感となりました。会社の同僚には退職の直前まで進学のことを伝えていませんでしたが、同じ部署の仲の良い先輩だけには早い段階から相談していました。その先輩は私の決断を理解し背中を押して応援してくれ、それは私にとって大きな心の支えとなりました。また、退職日には部署の上司や同僚が送別会を開いてくれ、心地よく送り出してくれたことも大変励みになりました。何かにチャレンジする際には、周囲の人々はとても温かく応援してくれ、その励ましが挑戦への大きな力となることを実感しました。
Q.東洋大学を選んだ理由や選ぶにあたって重視した点があれば教えてください。
A.大学院を選ぶ際には、大学を選択したときよりも指導教員とのマッチングが非常に重要になります。私は貧困・経済格差・偏見に関心があり、これらのテーマに関連する研究を行っている先生方に絞って検討しました。その際、先生方の論文や著作を読み、研究内容を深く理解するよう努めました。ただし、研究関心のマッチングだけでなく、人間としての相性も非常に重要だと考えています。研究室訪問を行うことで、ミスマッチを防げると思います。私も博士前期課程からの指導教員である北村英哉先生の研究室を訪問しました。それまで社会心理学とは全く別のフィールドにおり社会心理学の知識が乏しい私に対して、予定時間を超えてまで丁寧に面談をしてくださった北村先生の人柄に惹かれ、東洋大学への進学を決めました。
Q.執筆している論文の内容や受けている授業について教えてください。
A.博士後期課程では、生活保護受給者への人々の態度に与える要因について研究しています。既存の研究では、生活保護受給者はさまざまなカテゴリーの中でも特に蔑まれており、生活保護制度といった福祉政策には人々の態度が強い影響を与えていることが示されています。日本社会では、2013年から2015年にかけて生活保護基準額が引き下げられ、受給者の生存権が危ぶまれている現状があります。この状況を踏まえると、生活保護受給者に対する人々の態度を改善することが求められています。私の研究では、進化論のパースペクティブも用いながら、態度形成に与える要因について探っています。
Q.大学院での学びを通して今後目指したい姿や将来進みたい道などがあれば教えてください。
A.社会心理学の研究者になって、社会心理学の観点から経済格差・貧困問題の研究を行い、少しでも社会貢献したいと考えています。研究・論文を通して社会に発信していくことはもちろんですが、将来的には大学教員として後世に伝えていくことにも従事したいと思っています。
Q.研究活動をしている日の1日のスケジュールは?
A. 7時 起床
8時 大学の共同研究室に到着、新聞・メールチェック
9時 研究活動
12時 昼食
13時 研究活動・勉強
15時 ゼミの受講
18時 夕食
19時 自宅で研究活動・読書
24時 就寝
Q.大学院生としての1週間のスケジュールは?
A.月曜日 共同研究室で研究/薬剤師のアルバイト
火曜日 共同研究室で研究/自宅で研究
水曜日 共同研究室で研究/ゼミの受講
木曜日 薬剤師のアルバイト/自宅で研究
金曜日 共同研究室で研究/ゼミの受講
土曜日 薬剤師のアルバイト/自宅で研究
日曜日 自宅で研究/妻とお出かけ
Q.本学大学院を目指している受験生へメッセージをお願いします。
A.大きなチャレンジには、家族からの理解といったさまざまなサポートが必要であり、決して自分一人の力だけでは挑戦できないことがほとんどだと思います。しかし、もし周りの人の支援によって挑戦するチャンスがあるのなら、あなたの学問に対する胸の高鳴りに従って行動することはとても素敵なことだと思います。
プロフィール
2015年 慶應義塾大学薬学部薬学科卒業
2015年―2022年 製薬会社にて北米・ASEANの商品企画やマーケティングに従事
2022年―2024年 東洋大学大学院社会学研究科社会心理学専攻 博士前期課程
2024年― 東洋大学大学院社会学研究科社会心理学専攻 博士後期課程
掲載されている内容は2024年6月現在のものです。
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