Q. 現在のお仕事について聞かせてください。
練馬区社会福祉協議会の権利擁護センターに勤務しています。主に担当しているのは、成年後見制度の申し立て相談への対応、また、地域福祉権利擁護事業の専門員として、認知症や障害のある方の福祉サービス利用援助や日常的金銭管理等の業務です。大変なことも多い仕事ですが、利用者からの信頼を得られたときは、心が充実感で満たされるのを感じます。
Q. 大学院での研究テーマとそのテーマを選んだ理由を教えてください。
大学院では、学齢期の自閉症児を持つ母親への支援課題に関する研究をしました。学部時代に障害者福祉を学び、「アジア知的障害会議」などで多くの方と接する中で、自分の研究すべきテーマが明確になり、大学院進学を決意しました。大学院で自閉症児に関する研究を深めたいと思ったのは、身近に当事者がいたことも大きな理由です。自閉症児に幼いころから接してきた当事者的視点と、研究者としての視点の両方から見ることができたことは、私の研究に大きな影響を与えてくれたと思っています。
Q.研究において苦労したことや思い出に残っていることはありますか?
研究に際して、自閉症児を持つ母親を対象にアンケートとインタビューを行いました。対象者の数が限られることに加え、心の敏感な部分に触れなければならないことで、研究は難航しました。私は、学齢期の自閉症児を持つ母親は、年を経て療育が進むほどに悩みが軽減していくという仮説を立てて調査に入りましたが、結果は違ったものでした。母親たちの悩みは、目前の生活の悩みから、子どもの将来という中長期的な悩みへと変化していくことがわかったのです。
いろいろな段階で研究につまずき、私自身が悩んでしまった時、先生からのアドバイスはいつもそれを乗り越えるきっかけとなりました。ある時期、論文が進まず意欲も薄れかけていた私に先生がくださった言葉を、今も忘れることができません。「自分の論文など見てくれる人は少ないと思っているかもしれないが、誰かがこの論文を待っている。この論文が、今後の自閉症の分野で生かされるときが必ずくるんだという使命感を持って取り組みなさい」。普段は穏やかな先生にびしりと言われたこの言葉は、その後の研究の大きな支えとなりました。
Q. 研究以外で、大学院時代に得たものは?
大学院でのたくさんの出会いは、私の掛け替えのない財産です。先生も先輩も皆あたたかく、いつでも親身に相談に乗ってくださいました。本研究科の院生は、年齢層も経験も幅広く、その考え方やものの見方はとても勉強になりました。さらに、研究を進める中で、さまざまな機関やそこで働く方たちと関わり、多くのつながりを得ることができました。現在の仕事でも、利用者の意向や生活状況に合った支援体制を考えていくためには、関係機関との連携が重要です。大学院時代に得た多くの出会いは、現在の仕事においても生きています。今後も業務の中で経験を積み、大学院での研究成果も生かして、いつかは障害のある方も健常の方も自然と接することができる「繋がり」を生む施設を運営したいと、夢が膨らんでいます。
Q.進学で迷っている学生へメッセージをお願いします。
私は大学院へ進学して、ものの見方や考え方が大きく変わったと思います。先生や院生、また出会った多くの方々と接する中で、自分の見方は一つの方向からに過ぎないことを実感しました。世の中にはいろいろな見方や考え方があることを知ることができ、自分でも多面的な見方をする姿勢が身についたと思います。大学院で研究をすることは、決して楽なことではありません。しかし、それに挑戦する価値はとても大きいと自信を持って言えます。
掲載されている内容は2014年7月現在のものです。
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