Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯
さまざまなビジネス経験を経て大学教員に
大学卒業後一般企業に就職しましたが、1年間米国の経営大学院(ビジネススクール)に留学する機会に恵まれました。その時に、ビジネスでの実務経験を活かした実践的な経営学の授業や研究をされている教授に接し、自分もいつかそのような教員・研究者になってみたいと強く思ったのが最初のきっかけです。その後再び渡米し、ワシントンDCに本部のある国際機関に5年間国際公務員として勤務する機会を得たのですが、夜間週末を活用して勉強を継続し、会計学修士号、ワシントンDC公認会計士資格(現在州資格inactive, 米国公認会計士協会正会員)を取得しました。その後、国際的な監査法人に転じ、日本企業の海外子会社の内部監査、クロスボーダーM&A後の経営統合(PMI)、コーポレートガバナンス体制構築などのアドバイザリー業務を実施しつつ、専門誌への論文発表や著書出版などの研究活動を続け、若い頃の希望が叶い大学教員になることができました。
Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究しているか
国際企業のコーポレートガバナンスと企業財務分析が研究の2本柱
これまでの実務経験を活かした研究を心がけています。具体的には大きく2本の柱があります。まず1本目の柱は、日本企業がM&Aなどで取得した海外子会社をどのように経営すべきか、という研究です。現地経営者への権限委譲と本社からのガバナンスのバランス、特に本社取締役会、監査役会、監査委員会といった会社機関からの現地経営者の執行状況のモニタリングの在り方などが研究領域です。これらは日本や海外の会社法や上場規則との関係も深く、主としてコーポレートガバナンスの文脈のなかでの定性的な研究活動になっています。もう1本の研究の柱は、企業の会計不正(粉飾決算)や経営破綻(倒産)の予兆を財務諸表データから如何に早期に発見するかといった企業財務分析の分野です。財務諸表のデータは数値化されていますので、会計の知識に立脚しつつも、今注目されているデータ・アナリティクスといった文脈のなかでの定量的な研究活動になっています。これまでは、どちらかというと前者の定性的な研究が中心でしたが、大学院においては後者の定量的な研究の比重をぐっと高めていきたいと考えています。
Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったこと
したいこと、すべきことが多すぎて時間管理が難しいが達成感は大きい
「つらかったこと」という過去形ではなく、「つらいこと」という現在進行形なのですが、これは時間管理の難しさにつきます。研究のみならず、教育においても、したいこと、すべきことが無数にあり、時間が足りません。夜は頭脳が疲れて研究に不向きと考えています。早起きして授業前の時間帯にフレッシュな頭で研究するしかないのですが、時間管理や体力維持が課題です。研究者として嬉しかったことは、やはり研究が論文や著書の形で出版された時でしょうか。また、授業において説明の工夫がうまく行き、学生が重要な概念を良く理解し成長してくれたと感じた時は教員として達成感があります。
Q.大学院で学ぶことの魅力
自ら選んだ興味ある分野を掘り下げられることが最大の魅力
小学校、中学校、高校、大学、そして大学院へと進むにしたがい、自ら主体的に選択した興味のある分野に特化して勉強できる環境となっていきます。勉強や研究にはつらいこともありますが、大学院において自ら選択した興味のある分野の深い「知」を獲得し、応用し、成果をあげることは大きな喜びになると思います。また、その後の人生において大きなリターンをもたらすと信じています。
Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言
永く活用できる高度な「知」のベースを構築しよう
人生100年時代と言われています。永い人生をより充実したものにするためには、学び続けることが重要です。ぜひ大学院を活用し、自らの「知」の力を効率的かつ効果的に高め、その後の人生において永く活用できる高度な「知」のベースを構築していただきたいと思います。我々教員は最大限その支援をします。
プロフィール
氏名: 毛利 正人(もうり まさと)
経歴: 現在 東洋大学国際学部グローバル・イノベーション学科 教授
2020年4月 東洋大学国際学研究科グローバル・イノベーション学専攻長就任予定
1979年3月 早稲田大学 政治経済学部経済学科卒業
1991年9月 ジョージワシントン大学 修士(会計学)修了
日本企業、国際機関(在ワシントンDC)、監査法人を経て2017年4月より現職
専門: 海外子会社マネジメント、国境を越えたグループ経営、コーポレートガバナンス、企業財務分析
著書: 図解 海外子会社マネジメント入門 ~ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンスから内部監査まで~[東洋経済新報社] 等
論文: 日本企業のグローバル化と海外子会社に対するガバナンスのあり方について[「日本監査役協会設立40周年記念 懸賞論文」受賞論文] 等
掲載されている内容は2019年4月現在のものです。
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