教員からのメッセージ

TOYO PERSON
Q.教員としてご自身の専門分野を踏まえ、「研究者として研究」することの意味とは?

もともとの専門分野は、「精神保健福祉論」です。いわば「こころの病」(精神障害)をかかえながらも、地域で暮らしている方々にとって、どのような制度やサービスがあれば、より生活の質(QOL)を高めることができるのかといったことを研究領域にしています。「研究者」という立場は、サービスの提供者でもなければ利用者でもない第三者的な立場です。とはいえ、精神保健分野では、利用者の立場が圧倒的に弱いので、当事者の権利擁護を第一に考えなければならないと思います。

Q.教員としてご自身が、研究者になった経緯をご紹介ください。

最初は、普通に「福祉=高齢者介護」のイメージだったのですが、最初の実習先として、なぜかアルコール依存症の男性50名が入所する施設に配属されました。はじめは心底戸惑いましたが、そこから初めて統合失調症などの精神障害を抱える人たち、あるいは精神科病院や地域の作業所などのことを知るようになり、卒業後は精神科のクリニックや家族会の相談室などに勤めていました。研究者になったのは、家族会の顧問をされていた先生のもとで博士号の学位を取らせていただいたことが決定的だったと思います。

Q.教員としてご自身のご専門分野について、現在までにどんなテーマを研究されているのかご紹介ください。

学問領域としての社会福祉学は、大きく政策(制度)系と実践(援助)系に分けられるかと思いますが、私の研究テーマは、一貫して援助論です。「援助」というと、目の前で転んだ人に手を差し出すように、何か困った問題や課題に対して、何らかの手立てを施すことというイメージがありますが、その背後にある援助する人と援助される人との間に生まれる関係のあり方の分類やそれぞれの特徴を整理する「援助関係論」が中心テーマです。

Q.研究者として、つらかったことや、嬉しかったことは?

「つらかったこと」として、特に思い当たるようなことはありません。ただ、研究者としては、直接サービスを提供したりしないので、もどかしいと感じたことはあります。「嬉しかったこと」としては、調査やそのデータについての考察などから、「そういうことだったのか!」というこれまでにない気づきが得られることです。もちろん、調査をすれば毎回そうした気づきが得られるわけではありませんが、これまでの考え方の枠組みが広がるような経験は、まさに研究の醍醐味だと思っています。

Q.大学院で学ぶことの魅力とは?

上の「嬉しかったこと」であげましたが、これまで知らなかったこと、考えたこともなかったようなことが「分かる」という経験は、大学院でしか味わうことのできない最大の魅力だと思います。もちろん、そこまでには、文献の読み込みをはじめとして、分析方法の習得や調査の実施、考察を深めるといった作業が求められますが、そうした作業を一人で行うことはほぼ不可能です。大学院では、教員や先輩たち、同期の院生仲間とともに研究を進めていくための体制が整っています。

Q.大学院で学びを考えている受験生にメッセージを一言。

研究の醍醐味を味わうために欠かすことができないのは、あなた自身の「問い」です。「どうなっているんだろう」「どうすればいいんだろう」といった「問い」が大学院の学びには求められています。とはいえ、決して明確で焦点の定まった「問い」でなくでも大丈夫です。漠然としていても、曖昧であっても、みんなと言葉を交わす中で少しずつ彫琢されていきます。「…って何なんだ?」といった素朴な疑問が未知の世界への入り口になっています。

プロフィール

氏名:稲沢 公一(いなざわ こういち)
経歴:
東洋大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程修了
現在、東洋大学大学院ライフデザイン学研究科生活支援学専攻 教授
専門:精神保健福祉論、理論福祉学
著書:

  • 援助関係論入門-「人と人との」関係性 (単著:有斐閣2017)
  • 援助者が臨床に踏みとどまるとき-福祉の場での論理思考(単著:誠信書房2015)
  • 社会福祉をつかむ 改訂版(共著:有斐閣2014)

HP:https://gomukh85.jimdo.com/

掲載されている内容は2018年10月時点のものです。